MotoGP:ヤマハ 2025年 第1戦 タイGP 決勝レポート

過酷な暑さのなかで奮闘
タイのうだるような暑さのなか、全26ラップで競われた決勝は、Monster Energy Yamaha MotoGPにとって非常に厳しい戦いとなった。ファビオ・クアルタラロは序盤から苦戦したが15位でゴールしてポイントを獲得。アレックス・リンスは逆に最初の数ラップでポジションを上げてポイント圏内を走行していたが、終盤で後退して17位となった。
クアルタラロは10番グリッドから好ダッシュを決めたものの、マシンの感触がそれまでとは異なっていることに気づいて見る見るうちに18番手までポジション・ダウン。ここからは試練の戦いが続いたが、レース後半に入ってライバルたちも苦戦し始めると、少しずつ順位を挽回した。最終的には15位でチェッカーを受けて1ポイントを獲得。トップとの差は26.456秒だった。
一方のリンスは19番グリッドからスタート後、混戦をくぐり抜けて5ラップ目までに14番手へ浮上。その後ひとつ下げて15番手に落ち着いた。15ラップ目にはE・バスティアニーニ(KTM)に先行されたものの、同じラップでJ・ミル(ホンダ)の転倒があり再び15番手。このままポジションをキープしてシーズン初ポイントを手中にしたいところだったが、終盤はエンジンが熱くなって苦しい展開を強いられ、17位まで後退した。トップとの差は31.095秒だった。
この結果、クアルタラロは合計4ポイントでランキング13位、リンスは未だノーポイント。Monster Energy Yamaha MotoGPはチーム・ランキング11位、ヤマハはコンストラクターズ・ランキング5位となっている。
Prima Pramac Yamaha MotoGP
ミラー11位、オリベイラ14位でともにポイント獲得
Prima Pramac Yamaha MotoGPのジャック・ミラーとミゲル・オリベイラが2025シーズン開幕戦の決勝で、それぞれ11位と14位を獲得した。
前日のスプリントでは上位争いを展開しながら転倒してしまったミラー。決勝で目標にしていたのはグリッド2列目の優位性を生かしてポイントを獲得し、同時にYZR-M1の開発に役立てるためのデータ収集を行うことだった。
完璧なスタートから好位置につけ、小椋藍(アプリリア)やF・モルビデリ(ドゥカティ)とバトルしながら6番手を確保。その後も果敢な走りを続けて順調にポジションをキープした。ところが8ラップ目あたりでフェアリングに不具合が生じ、ペースダウンを余儀なくされてしまう。終盤は守りの走りに徹し、徐々に順位を下げて11位でゴールした。
一方のオリベイラは17番グリッドからの挽回を目指すも厳しい展開。気温36度、路面温度50度の暑さに加え、周辺のマシンから発せられる熱も過酷なものだった。オープニングラップの混戦のなかで16番手につけたあとは粘り強く走り続け、残り5ラップで15番手、残り3ラップで14番手に上げてチェッカーを受けた。

Monster Energy Yamaha MotoGP
ファビオ・クアルタラロ(15位)
「序盤からグリップに問題を抱えていました。かなり苦しい状況でした。初めはタイヤをもっと暖めればいいのだと思っていたのですが、まったくプッシュできず、マシンがスライドして、1周目で大きくポジションを下げてしまいました。そしてその後も残念ながら、思うようにペースを上げることはできませんでした。集団の後方についていると本当に暑くて、とにかくすべてにおいて非常に難しい戦いでした。次のアルゼンチンに期待します」
アレックス・リンス(17位)
「この暑さに対応しなければならず、体力的に非常に厳しいレースでした。昨日のスプリントでも少し感じていたのですが、今日は7ラップあたりから対処しきれなくなり、脚にやけどまでしてしまいました。それでもパフォーマンスの面では小さく一歩、前進できたと思っています。毎ラップ、100%の力を注ぎましたが、残り4ラップの第4コーナーでフロントを滑らせ、そのあとは苦しい状況をコントロールできませんでした。当然、結果には満足できていないので、すべてのデータを見直して改善につなげたいと思います」
マッシモ・メレガリ(チーム・ディレクター)
「今回は全体的に、非常に難しい戦いでした。結果を見れば、私たちのタイヤ・チョイスがおそらく間違っていたのでしょう。しかしここ数日の感触では、他のタイヤでは、それ以上にうまくいっていなかったのです。ファビオ(クアルタラロ)がなぜ、彼のいつもの走りができなかったのかを知るために、データをより詳細に分析しなければなりません。アレックス(リンス)のほうはリアタイヤが完全に終わってしまっていました。加えてエンジンが非常に熱くなっていたため脚をやけどしてしまったのです。今日のデータは2週間後のアルゼンチンGPに向けての非常に重要な手掛かりになると思います」
Prima Pramac Yamaha MotoGP
ジャック・ミラー(11位)
「全体的には良い一日だったと思います。決勝中も非常に好調だったのですが、8ラップ目くらいでフェアリングに問題が出たことで上位グループから離されてしまいました。留め金がひとつ外れてフェアリングが緩んできてしまったのです。皆さんもご存知の通り、最近はエアロダイナミクスが非常に重要で、フェアリングに問題が生じたあとはコーナリングやコーナースピードの維持に苦戦するようになってしまいました。それがとくに顕著だったのが、私が得意としている第4コーナーと第5コーナーでした。しかも熱い空気が全部、真っ直ぐ吹きつけてくるので、まるで料理をしているみたいな状況です。暑さが一層、増しただけでなく、ストレートではフェアリングを固定するために腕の内側にやけどもしてしまったのです。それでもなんとかゴールラインまでたどり着きました。結局、終盤で順位を下げてしまいましたが、なんとかまとめ、ポイントを持ち帰ることができました。今回は基盤固めに集中的に取り組んできました。そしてこれからもハードワークを続けます」
ミゲル・オリベイラ(14位)
「非常に長くタフな戦いになると予想していました。そしてその通りになりました。誰にとっても同じですが、まさに究極の暑さだったのです。そのためタイヤのコントロールがレースの鍵を握っていました。別のスペックを選ぶべきだったのかもしれませんが、スタート直後からとにかく、タイヤをしっかり管理することに努めました。フロントグリップにはかなり苦戦して、リアのほうがまだ残っていたときでさえ、うまくマシンの向きを変えられず、ほとんどすべてのコーナーで大きくはらんでしまいました。そのあとリアグリップも低下し始めると、最大限、努力するということしかできなくなっていたのです。それでも終盤は少し楽になり、ポジションも挽回してポイント圏内に入ることができました。スタート・ポジションを考えれば受け入れられる結果だと思いますし、貴重なデータを収集することもできました。テストの段階から、私たちの使命はトップとの差を縮めることだと理解しています。テストの日数が増え、マシンが4台になり、データを共有できるようになって、必要なものはすべて揃っています。今はそのことだけに集中しています」
G・ボルゾイ(チーム・ディレクター)
「ジャック(ミラー)のフェアリングの問題は本当に残念です。あれがなければ、もっといい成績を獲得できたに違いありません。でもすべてはスムースに運んでいて、彼は高い競争力を発揮し、ハイペースを維持してトップグループに近づいていました。これは大いに評価できることです。ミゲール(オリベイラ)もいいレースをしました。もっとも低いグリッド・ポジションの影響は否めませんし、この過酷な暑さのなかで集団に囲まれてしまうと、そこからポイント圏内まで上がってくるのは簡単なことではありません。しかし彼はそれをやってのけたのです。タイヤ・チョイスはジャックとは違ったのですが、その影響が少しあったかもしれません。でも確かなことはわかりません。全体的には依然としてポジティブな状態です。いい仕事ができましたし、最初のレースで両ライダーがポイントを獲得したのですから十分に評価できると思います」
カテゴリー: F1 / MotoGP