MotoGP ヤマハ タイGP
初開催のMotoGP タイGPを迎え、ブリラムのグリッドは緊張と興奮に包まれていた。Movistar Yamaha MotoGPのマーベリック・ビニャーレスとバレンティーノ・ロッシは26ラップのレースで終始トップグループでバトルし、ビニャーレスが3位表彰台、ロッシが4位を獲得した。

ビニャーレスは4番グリッドからスタート後、大勢が競り合うなかで6番手へ後退。そこからすぐさま挽回を開始し、3ラップ目にヨハン・ザルコをパスして5番手、さらにトップグループを追ってペースを上げていった。

トップ5がわずかに後続を引き離し、11ラップ目に前の3台が激しいバトルを展開する間にビニャーレスも一気に接近。しかしこれは同時に、後方グループからの追撃ももたらすこととなった。

プレッシャーと戦いながら果敢に攻め続けるビニャーレス。トップ3が再びアドバンテージを広げようというところで素早くC・クラッチロー(ホンダ)をパスし、ロッシの後方4番手へ。残り6ラップでロッシをパスして3番手に上がり、さらにトップ2を追って行った。最後の3ラップはバトルが激しさを増し、ビニャーレスはA・ドビツィオーゾ(ドゥカティ)、M・マルケス(ホンダ)の背後にぴったりとついていた。しかし最終的にはわずかに届かず、トップから0.270秒差、2位から0.155秒差で3位を獲得した。

一方のロッシは2番グリッドからポジションを維持して第1コーナーへ。序盤からアタックを開始してマルケスにプレッシャーをかけ、とくに第4セクションでは激しく攻め立てた。マルケスも懸命にロッシの追撃を振り払おうとするが成功せず、ついには5ラップ目、ここまでハイペースをキープし続けたロッシがトップに浮上した。

11ラップ目、ドビツィオーゾとマルケスに抜かれて3番手に後退。残り7ラップではビニャーレスが追いつき、その1ラップ後には先行されたが、その後もテールにぴったりとついて逆転を狙う。ところが最終ラップの最終コーナーで離されてチャンスを逸し、トップから1.564秒差の4番手でチェッカーを受けた。

この結果、シリーズポイントではロッシがトップに99ポイント差、2位に22ポイント差のランキング3位。ビニャーレスはランキング4位に浮上し、26ポイント差でロッシを追う。ヤマハはコンストラクターズ・ランキングでトップから88ポイント差の3位。Movistar Yamaha MotoGPはトップに40ポイント差、2位に6ポイント差でチーム・ランキング3位につけている。

Monster Yamaha Tech3のヨハン・ザルコは初開催となったタイGPで5位獲得と健闘した。グリッド3列目から絶好のスタートで飛び出してトップグループに加わったあと、一時順位を落としたが、最終ラップで5位を奪い返してトップ・サテライトを獲得した。

チームメイトのハフィス・シャーリンも同様に大活躍を見せた。18番グリッドからスタートして徐々にペースをつかむと、前を行くライダーたちを次々にパス。そしてゴールラインまで好調を維持してルーキー勢トップの12位でチェッカーを受け、貴重な4ポイントも手中にした。

次回、第16戦は10月19日~21日、ツインリンクもてぎで開催される。

Movistar Yamaha MotoGP
マーベリック・ビニャーレス (3位)
「思っていたより、決勝ではいい走りができました。序盤でクラッチローとバトルし、バレンティーノとも少し競り合い、その後も好調に走れました。このところ苦しい状況が続いていたので、今回はトップにここまで接近し、表彰台を獲得できたことに満足しています。今週末の私たちの仕事がよい方向へ進んだ結果なので本当にうれしく感じていますし、暑く、滑りやすい難しいコンディションのなかで、このようないい戦いができたことを評価したいと思います。マシンについては、ブレーキングでフロントを信頼できたことがよかったと思うので、次回以降もこれを維持できるよう努力を続けます。日本でもまた同じことができれば、確かに問題を克服できたことになるでしょう。安定性、精確性、集中力が大切です」

バレンティーノ・ロッシ (4位)
「私たちはこのウイークのなかで大幅に進化することができました。残念ながら表彰台には届きませんでしたが、それでも少なくとも、前の数戦よりは格段にいいレースができたと思います。すべてのセッションで常に上位をキープし、フロントローからスタートし、ハイレベルなバトルを展開することができました。大きな成果を得ることができたと思いますが、実際にはそれではまだ足りませんでした。ライバルたちのほうがもうちょっと速かったわけですから、今回のことはコースが私たちを後押ししてくれたせいなのか、あるいは本当に私たちが成長した結果なのかを、しっかり考えておく必要があるでしょう」

マッシモ・メレガリ (チーム・ディレクター)
「ビニャーレス選手とロッシ選手がそろってトップグループで戦う姿にワクワクしていました。2月のテストでも、またこのところの数戦でもかなり苦戦を強いられてきただけに、今回このような好成績を獲得できたことをとてもうれしく思います。チーム一丸となってよい仕事をし、困難を克服してきたのです。結果的にビニャーレス選手が3位、ロッシ選手が4位となったわけですが、ふたりそろって表彰台に上っていたとしたら、もっとよかったのですけれど...。いずれにしても、よい方向へと踏み出すことができたので、自信を持って次からの3連戦に臨めるでしょう。その1回目が日本GPで、ヤマハのホームレースとして非常に重要な一戦です。今回の勢いを維持できるようベストを尽くします」

Monster Yamaha Tech3
ヨハン・ザルコ (5位)
「このコースが大好きです。2月のテストのときはとても好調だったものの、このレースウイーク中はなかなかペースが上がらず苦労しましたが、決勝は自分が思っていたほど調子は悪くありませんでした。そしてレースを楽しみ、上位についていくことができました。でも加速ではどうしてもライバルたちにかなわなかったので、ブレーキングで抜こうとしましたが、ビニャーレスとのバトル中にミスをしてポジションダウン。それでもペースよく追い上げることができ、激しくプッシュしてクラッチローをパス。次にペドロサが転倒するなど少しずつ順位を取り戻していったのです。このように非常に厳しい戦いでしたし、私にとってはともても難しいレースだったのですが、彼らにとっても同様なのだと思います。そして最後にリンスに追いついてバトルになったときには、打ち勝つ自信があったけれども、同時に決してミスをしないよう集中しました。最終的には彼が第9コーナーでわずかにはらみ、そこでインに入って5位に上がりました。ウイナーとの差もそれほど離れていないし、サテライト勢トップを獲得できたので、とても満足しています」

ハフィス・シャーリン (12位)
「またポイント圏内に戻ってくることができてとてもハッピーです。ウイーク初日のフリープラクティス第1セッションから昨日の予選まで、常に18番手でした。だから自分自身に少しがっかりしていたのです。でも決してあきらめたりせずにチームとともにハードワークを続けるなかで、彼らも僕を信じてくれました。僕にとってはチームからの信頼が、とても重要なことなのです。決勝序盤でマシンがオーバーヒートし、オイルの温度が上昇して十分なパワーが出なくなってしまいました。この状況を受け止めて対処方法を考えた結果、私はスリップストリームを使わないことを決めました。マシンが熱くなり過ぎていたからです。初めに中上をパス。次にモルビデリにも届くと思ったので追いかけてパスし、そのあともリズムをキープして走り切ることができました。次回以降もまた、モルビデリとのポイント差を縮めていくためにベストを尽くします。今回は2ポイント近づくことができましたが、あと5戦残っているので、毎回、彼の前でゴールできるようがんばります。マシンがよく走ってくれて、正しいタイヤチョイスができて、すべてがよい方向へ進み始めています。今は心からハッピーです」

エルベ・ポンシャラル (チーム・マネジャー)
「何というすばらしいレースでしょう! Monster Yamaha Tech3については、どこまで期待してよいかわからない状態でした。コンディション、路面温度の高さ、タイヤチョイスなど多くの不安要素が、おそらく誰にもあったと思います。ザルコ選手は勇敢にもフロントにミディアムを履くことを決断し、最終的にはこれが報われました。ラップタイムは最後まで落ちることはありませんでした。絶好のスタートから上位グループについていきましたが、不運にも第1コーナーでビニャーレス選手と接触してトップグループから離されてしまいました。ここからはゆっくりと、ペドロサ選手、リンス選手とともに少しずつ挽回していきました。そのあとペドロサ選手が転倒してクラッチロー選手がスローダウン。最後はラストラップでリンス選手をパスできるかどうかというところでしたが、ザルコ選手はそれを成し遂げたのです。5位は本当に見事な成績です。上位との差もわずかですし、ヤマハが3位、4位、5位を獲得して私たちはファクトリーライダーのすぐ後ろ。このようなことはもう長い間、経験していません。ザルコ選手、クラッチロー選手、ペトルッチ選手によるベストサテライトの戦いも激しさを増しています。このところ非常に厳しい状況が続いていただけに、今回の好成績を非常にうれしく感じています。このようなことがライダーをポジティブにしてくれるのです。だからザルコ選手は、ポジティブな気持ちで次の日本GPまでの時間を過ごすことができるでしょう。一方、シャーリン選手はスタートで出遅れてしまいましたが、見事なリカバリーを見せてくれました。そのラップタイムの速さには驚かされました。タイヤはトップライダーと同様のハード/ハードで、それをしっかりと使いこなしていました。そして多くのライバルをパスしていったのですが、イアンノーネ選手にだけはわずかに届きませんでした。今日のレースは、シーズンのなかでも最高のものだったと思います。ミサノとアラゴンでは苦戦し、私たちも希望を失いかけましたが、彼自身が不安を取り除いてくれたのです。彼は常に多くのことを学び、体調もしっかり管理しています。マシンにまったく問題がない状態だったとしたら、イアンノーネ選手の前に出ることも可能だったかもしれません。最後に、ふたりのライダーとMonster Yamaha Tech3のクルーを祝福します。1週間のブレイクのあと日本へ向かいますが、幸せな気持ちのまま荷造りを楽しみ、次もまたエキサイティングなウイークを過ごしたいと思います」

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カテゴリー: F1 / MotoGP