F1モナコGP:新ルール導入 2回のピットストップ義務化を解説

例年、戦略の幅が限られ、プロセッショナルな展開になりやすいF1モナコGP。今年はその状況に一石を投じる試みがなされる。2025年のレースでは、全ドライバーに最低2回のピットストップが義務付けられ、これまでの「1ストップ定番戦略」に変化が求められる。
狭く曲がりくねったモンテカルロ市街地でのレースは、オーバーテイクの難しさから予選順位がほぼ結果を左右してきた。そんな中、F1はタイヤ戦略に制約を加えることで、セーフティカーや路面状況の変化を活かした“戦術的な波乱”を誘い、より予測不能な展開を生み出そうとしている。
モナコで何が変わるのか?
これまでのF1の通常ルールでは、ドライコンディション下のレースにおいて「異なるスリックタイヤを2種類以上使うこと」だけが義務だった。このため1回のピットストップ(=1ストップ戦略)でもルールを満たすことができた。ウェットコンディションの場合はこの規定は適用されず、必要に応じてフルウェットやインターミディエイトタイヤが使われる。
しかし今年のモナコGPでは、ドライバーは「3つ以上の異なるタイヤセット」を使用しなければならず、少なくとも2回のピットインが必要になる。
モナコの市街地コースは狭く曲がりくねっており、オーバーテイクが難しい。そのため例年のレースは1ストップが主流で、展開も単調になりがちだ。今回のルール変更は、そんなレースに「スパイス」を加える狙いがある。

天候が影響する場合は?
レース当日に雨が降った場合でも、この新ルールは適用される。ドライバーはスリック、インターミディエイト、ウェットといった複数の種類のタイヤを使って「最低2回のピットイン」ルールを満たす必要がある。
このため、通常のフルウェットタイヤ2セットに加え、さらに1セットのフルウェットが追加で支給される予定だ。
もしレースが完全なドライコンディションで行われ、インターミディエイトやウェットを使用しない場合は、通常通り「異なる2種類以上のスリックタイヤ」を使用しなければならない。
ルール違反のペナルティは?
今回のモナコGPにおけるタイヤ使用ルールは、スポーティングレギュレーション第30.5条で定められており、違反時の処罰も明記されている。
「レースが中断され、再開されなかった場合を除き、これらの要件に違反したドライバーはリザルトから除外される」と規定されている。
さらに、以下のような文言が加えられている。
「モナコのレースで中断され再開されなかった場合、規定通りに少なくとも2種類のスリックタイヤを使用しなかった、または3セット以上のタイヤを使用しなかったドライバーには、30秒のタイム加算ペナルティが課される」
「さらに、1セットのタイヤしか使用しなかったドライバーには、追加で30秒のペナルティが加えられる」
ドライバーたちの反応は?
ドライバーたちはこの変更をおおむね歓迎している。4度のワールドチャンピオンであるマックス・フェルスタッペンは、今回のルールがレースに「スパイス」を加えると期待を寄せた。
「これは、うまくいく可能性もあれば、完全にカオスになる可能性もある」とフェルスタッペンは語った。
「セーフティカーの出動の有無や、正しいタイミングでピットインできるかどうかが影響するだろう。これまでの1ストップ戦略だと、良いピット作業ができればそのまま集中してバリアに当たらないよう走り切るだけだった」
「でも2ストップになることで、戦略に幅が出る。ギャンブル的な判断も必要になるし、間違いなく何かが変わるだろう」

アルピーヌのピエール・ガスリーも同様の意見を述べた。
「新しい要素が加わることにチャンスを感じているし、恐れずに受け入れるべきだと思う」
「ただ、実際にどれだけレース内容が変わるかは正直まだ誰にも分からない。とはいえ、モナコで大事なのは予選だということに変わりはない。予選で上手くやれれば、レースの半分は成功したようなものだからね」
「新しい戦略の可能性は開けるはず。僕たちチームもそこをしっかり活かしていきたい」
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