F1マイアミGP:木曜記者会見 Part.1 - 角田裕毅、ガスリー、ノリス

前半は司会者からの質問、後半はメディアからの質問へのドライバーの回答。
参加ドライバー:角田裕毅(レッドブル・レーシング)、ピエール・ガスリー(アルピーヌ)、ランド・ノリス(マクラーレン)
Q:ランド、お帰りなさい。F1初勝利を挙げたハードロックスタジアムに戻ってきて、気分はどうですか?
ランド・ノリス(以下LN):特に足取りが軽くなるわけじゃないけど、良い思い出ではある。子供のころ夢見ていたこと、つまり勝利して表彰台の頂点に立つということをここで叶えることができた。本当にクールな瞬間だった。レースのこと、チェッカーフラッグを受けたとき、チームが祝っている様子を思い出すと、自然と笑顔になる。だから、もう一度あの瞬間を味わいたいね。
Q:今週末、マクラーレンにとって最大の課題は?
LN:いつも通り、ライバルとの戦いだね。自信を持って臨んではいるけど、他チームもすぐ後ろにいて、常にプレッシャーをかけてくる。ちょっとしたミスでも順位を落としかねない。あとは、とにかく良い週末にすること。クリーンな走りをして、安定した結果を出したい。
Q:ここ数戦、予選では最高のパフォーマンスを見せていない印象です。アプローチを変える予定は?
LN:今、自分に必要な改善点を洗い出しているところだ。スピードや実力が足りないわけではない。Q1、Q2ではうまくいっても、Q3で崩れてしまう。ドライビングやマシンの面で、噛み合っていない部分がある。そこを改善して、今週末にはうまくまとめたい。
Q:ピエール、今週末はチーム投資家のパトリック・マホームズも来るそうですね。肩の調子は?(アメフトのスーパースターにちなんだ質問)
ピエール・ガスリー(以下PG):今週末はビッグネームが集まるね。アメリカの支援や投資家がたくさんいて、この地に来るのはいつも特別だ。パトリックとはよく話すけど、彼の競技での成功には本当に敬意を払っている。彼と話すのはいつも刺激的だ。
Q:今季、アルピーヌはバーレーンの7位以外は厳しい戦いが続いています。マシンのパフォーマンスにおける傾向は?
PG:グリッド中団は非常に僅差で、0.3秒の差でQ3に進出するかQ1で敗退するかが決まる。だからこそ、常に完璧な仕事が求められる。ここ2戦はうまくまとめることができたけど、最初の3戦は運にも恵まれなかった。ただ、ウィリアムズ、VCARB、ハースとはしっかり戦えるポテンシャルはあると思っている。あらゆる細部にこだわってパフォーマンスを引き出す必要がある。
Q:裕毅、先週のシルバーストーンテストについて聞かせてください。2年前のマシンに乗ったそうですが?
角田裕毅:いかにもイギリスらしい天気で、最初は濡れていました。ウェットタイヤは用意していなかったので、乾くのをかなり待ちました。終盤にはマシントラブルも出てしまって、結局あまり走れませんでした。でも、経験としては面白かったです。ただ、過去のレースと比較しても条件が全然違ったので、フィードバックも変に混乱させたくなくて、自分の感じたことを素直に伝えました。走行距離は少なかったけれど、自分にとっては良いテストでした。
Q:RB21に乗って3戦目となりましたが、今年のマシンに対する自信の度合いは?
角田裕毅:まだ時間が必要だと思います。今のところは順調ですが、100%の限界までプッシュするのは予選だけなので、そこで初めてマシンの本当の挙動を感じます。FP1の段階ではまだ思うようなスタートが切れず、新しいサーキットでは特に感触を掴むのに時間がかかります。予選で新しい動きが出て、それに対応できないこともある。決して運転しづらい車ではないですが、限界の見極めにはもう少し時間が必要ですね。

メディアからの質問
Q:ランドへ。アンドレア・ステラが、あなたにとって運転しやすくするためのアップグレードを計画していると言っていましたが、それが導入されるのはいつ頃ですか?また、それが必要だと思いますか?
LN:確かに助けにはなると思う。ただ、具体的な時期についてはよく分からない。段階的に導入される予定ですが、個人的にはそれをあてにせず、自分でも改善しようと努力している。去年とのマシンの違いや、どこからタイムを引き出せるのかが明確になってきているので、チーム全体で取り組んでいます。多少の我慢は必要だね。
Q:裕毅さん、マシンがそこまで複雑でないと言うなら、もっと快適に感じるために必要な部分はどこですか?
角田裕毅:「運転が簡単」という意味ではないんです。ただ、VCARBの方がドライビングに対してもっと寛容で、方向性の幅も広かったです。レッドブルはパフォーマンスが出る「ウィンドウ」が狭くて、よりシビアなマシンです。最初に乗った時よりは扱いやすい印象でしたが、VCARBと比べて難しいですね。
F1に入ってから4年間同じタイプのマシンに乗ってきて、どうセットアップすればいいか、どこが限界かは自然と分かっていました。でも今はそれを一から学ばないといけません。鈴鹿で試したセットアップも、感触は良くてもタイムにはつながらなかった。だから時には「変な感触でも、タイムが良ければそれに従う」ようなアプローチが必要です。今はとにかく学んでいるところです。チームも多くサポートしてくれています。
ただ、まだ限界が見えていません。たとえばサウジアラビアのQ3では少しプッシュしたら予想外のスナップ(急激な挙動変化)が起きました。少しずつ慣れていくしかありません。エンジニアもスコットランド出身で、スコットランド英語と日本英語が入り交じったやり取りが面白いですね。そういう環境も、馴染むのに時間がかかります。
Q:ランド、今はマイアミですが、多くのドライバーはバルセロナ以降で大きく状況が変わると言っています。マクラーレンもそう感じていますか?
LN:いや、全然そんなことはない。みんなが言っていること、予想していることはよく見かけるけど、僕らは今のままでも十分やっていけると思っている。オスカーも言っていたけど、シーズン通して強さを維持できると確信している。もちろん改善すべきことはありますが、他の人が何を言おうと気にしていない。
Q:ピエール、もしくは他の方でも。今回もタイヤがソフト寄りになっていて、ジェッダでは2ストップになりませんでした。今週末は影響が出そうですか?
PG:そうだね、今年はスプリント週末ということもあり、タイヤの使い方が難しい。戦略に多少の妥協が必要になるかもしれない。日曜には戦略の違いがより出る可能性はあると思う。土曜のスプリントを経て、もっと明確になるだろうね。
LN:うん、同意。
Q:ランド、このマシンの性格は、あなたよりもオスカーのドライビングスタイルに合っていると思いますか?
LN:それは一概に答えにくい質問だ。確かに僕が必要とする感触が得られていない部分があり、それが予選で最高のパフォーマンスを出すのを難しくしている。もちろんドライバーは与えられたマシンに適応する責任がある。でも、マシンとの相性や妥協も存在する。
オスカーが自然にうまく適応しているのかもしれないし、彼のやり方がうまくいっているのかもしれない。でも、それに時間をかけて考えるより、自分のやるべきことに集中したい。昨年末の自分が最高の状態だったと思っていて、そこに戻れるよう努力している。
Q:ランド、今季のマシンは昨年のマシンより運転が難しいと感じるのは予想していましたか?
LN:いいや、特にそういう予想はしていなかった。シミュレーターではそれほど違いを感じなかったし、事前の情報からもそこまで明確な兆候はなかった。ただ、実際に走ってみないと分からないものだ。サーキットによっては良い感触を得られるところもあるけど、全体的に見ると昨年の方が快適だったかもしれない。
Q:ランド、5戦中5週間でレースがあった過密日程の後、リセットはできましたか?また、工場に行ってマシンに関する理解は深まりましたか?
LN:このブレイクは本当に必要だった。リフレッシュできたし、自分自身を見直す良い時間だった。もちろん、この週末にすぐ大きな改善があるというわけではないけど、感じていた問題について理解が進んだ。シミュレーターではその部分を重点的に取り組んだ。
重要なのは、それをどうマシンに反映させるか、どこにリソースを注ぐかを見極めることだ。単純に「これが原因だ」と言えるものではない。だからこそ、理解を深められたことが一番の成果だ。あとはチームとして、それを実行に移していく必要がある。
Q:皆さんに伺います。このマイアミGPというイベントについてどう思いますか?良い点、改善してほしい点などは?
角田裕毅:サーキットについて?それともイベント全体?…食べ物は美味しいですね。全体的に満足しています。特に文句はないですが、交通がちょっと課題かな。
PG:おいおい、君は警察のエスコートあるんだろ?何に文句を言ってるの(笑)!
角田裕毅:いや、今年はそうだけど…去年までは違ったんだよ(笑)。でも、今のところ不満はないですね。いい感じです。
PG:僕はすごく好きだね。マイアミはクールな街だし、エネルギーに満ちている。ヨーロッパとは全く違った雰囲気で、火曜や水曜にちょっと街を楽しめるのも良い。レース後の夜も盛り上がるから、良い結果を出して良い夜にしたい、というモチベーションにもなる。
LN:うーん、正直、あんまり覚えてないんだよね(笑)。でも、マイアミはいい場所だよ。すごく楽しい。個人的には、友達がたくさん住んでるから、日曜に来て、数日ゆっくりできるのも嬉しいし。イベントとしても充実してるし、パトリック(マホームズ)みたいなスターやアスリート、セレブがたくさん来るのも面白い。自分はそういうの好きだからね。ひとつだけ言うなら…交通がひどい! メキシコよりひどいかも。メキシコは道がないけど(笑)、こっちは道がたくさんあるのに、なんであんなに渋滞するのか不思議だよ。だから変えるとしたらそれくらいかな。他は全部好きだよ。素敵な人が多いし、とても楽しんでる。
Q:裕毅、TPCテストではあまり走れなかったようですが、レッドブルのマシンのコンセプトや特性に対する理解は深まりましたか?サウジで“半分も理解できていない”と言っていましたが、その理解度は上がっていますか?
角田裕毅:少しずつですが、自然と頭や身体に染み込んできています。マイアミで走れば、何かしら変化を感じるかもしれません。ただ、セットアップに関しては、走行時間が限られていたのであまり進展はありませんでした。セットアップの変更も色々試したかったけど、最後までできませんでした。今回のテストは、どちらかというとエンジニア側が試したい内容が中心でした。だから、自分の理解という点ではそこまで変わっていません。ただ、車の動きは多く体感できたので、少し自信が持てたかなと思います。
Q:ランド、スポーツでは勢い(モメンタム)が大事と言われます。オスカーはメルボルン以降3勝していますが、彼が勢いをつけていると感じますか?ここで勝つことの重要性は増していますか?
LN:いや、特に心配していない。彼は素晴らしい仕事をしていて、それにふさわしい結果を出している。ただ、個人的にはモメンタムという考え方をあまり信じていない。僕は自分のベストを尽くしているし、確かにミスもして、今のところ去年の終盤ほどのパフォーマンスは出せていない。でも、それを取り戻すことはできると信じている。シーズンは24戦あるうちの6戦目だ。ずっとその言い訳は使えないけど、今は集中して改善に取り組んでいる。速さもあるし、レースペースもある。あとは細部を整えるだけ。それには少し時間がかかるけど、自信はある。
Q:ランド、昨年マイアミで勝ったときは、ややアンダードッグ的な勝利でしたが、今ではマクラーレンが追われる立場になっています。チーム内の雰囲気や対応は変わりましたか?
LN:基本的には自然な進化だと思う。チームの働き方も昨年より良くなっているし、マシンの性能も向上している。もちろん、トップに立てばプレッシャーも増えるし、外部の注目や意見も多くなる。でも、僕たちはそれに対してしっかり対応できている。重要なのは、なぜ自分たちが今強いのかを理解していること。それがあってこそ、継続的に結果を出せると思う。
チームは冷静に状況を見極めていて、ザク(・ブラウン)やアンドレア(・ステラ)といったリーダーたちが、常にチームを前に進めるように導いてくれている。「まだすべてのレースに勝ったわけじゃない、満足してはいけない」といった意識を持たせてくれる。それが良い雰囲気を生んでいる。オスカーとの関係も良好で、お互いにプッシュし合っていて、それがチーム全体のレベルアップにつながっている。
Q:裕毅さん、以前の上司フランツ・トストは、あなたがチームに馴染むためにファエンツァへ引っ越すように言いました。今はミルトン・キーンズに戻りましたか?イギリスの食事や天気は楽しんでいますか?
角田裕毅:いいえ、まだ戻っていませんし、今のところ戻る予定もないです。イギリスにはもう十分滞在しました。イタリアに住む方がメリットが大きいです。ミルトン・キーンズに住んでいた頃はちょうどコロナ禍だったので、正直あまり良い思い出がありません。だから、今はオフの時間をリラックスして過ごせる場所として、イタリアの方が自分には合っていると感じています。シミュレーターなどで必要があればイギリスには行きますが、普段はイタリアがベースです。
Q:裕毅さん、ジェッダのレース後、マルコ博士はあなたのチーム適応を評価していると話していましたが、Q3でのもう一段階のパフォーマンス向上を求めていました。これはあなた自身も同意しますか?また、それはマシンへの慣れの問題ですか?
角田裕毅:はい、完全に同意します。正直なところ、ここ数戦Q3でうまくまとめることができていません。Q1とQ2ではいい流れを作れても、Q3ではもう一段上のプッシュが必要になります。そのとき、車がちょっとでも許容範囲を超えると、思いがけない反応をすることがあるんです。まだそれを予測できていません。こればかりはレッドブルでの経験を積まないと分からない。
Q3で良い結果を出せれば、ポイントを取るチャンスも広がりますし、チームとの戦略の幅も増えます。なので、間違いなく重点的に取り組むべき部分ですね。
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