メルセデスF1、圧縮比論争で窮地「FIAとF1が結束すれば我々は終わりだ」

レッドブル・フォードのパワーユニットを「非常に印象的」と評価した直後とは打って変わり、圧縮比の測定方法変更を巡る議論について語るヴォルフの口調は明らかに重かった。
もしF1とFIAが他のエンジンメーカー側と歩調を合わせ、メルセデスに不利な形で測定ルールを変更すれば、自陣とそのカスタマーチームが違法扱いとなる可能性があるからだ。
「ここ数週間で状況が急に動き出したことに少し困惑している。先週金曜までは何も変わらないと思っていた」とヴォルフは語った。
「イタリアのサイトの記事を読んで、ルールが変わるかもしれないと知った。我々も知らなければならないと思った」
勢力図はすでに変化しているという。レッドブル・フォードがフェラーリ、アウディ、ホンダ側に回ったことで、メルセデスは少数派となった。
「チームだけの問題ではない。連盟と商業権保有者の票も必要だ。もし彼らが共通の意見とアジェンダを共有すれば、その時点で我々は終わりだ」
ヴォルフは、他メーカーによるロビー活動がここ数か月で激化したと主張する。
「秘密会合や秘密書簡があった。それはもはや秘密ではないが、それが現在の状況を招いた」
仮にメルボルン前に圧縮比測定方法が変更されれば、メルセデスだけでなくカスタマーチームであるマクラーレン、アルピーヌ、ウィリアムズも影響を受ける。合計8台が違法と判断される可能性があるが、開幕までにエンジンを作り直すことは不可能だ。
「このスポーツでは何が起こるか分からない。我々は設計段階からすべての決定をFIAに報告してきたし、規則に適合しているという保証も受けている」
「劇的なパフォーマンス差があるわけではない。だが競合他社は不利だと感じ、長期間にわたってFIAに圧力をかけてきたのだろう」
仮に新ルールが成立した場合、従わざるを得ないとしつつも、その影響は小さくない。
「開発には時間がかかる。もし我々が開発した形で使用できないとなれば、パフォーマンスに大きな影響が出る可能性がある」
法的措置の可能性については否定した。
「誰かを訴えるつもりはない。F1ではルールを理解することが重要だ。技術的創意工夫は尊重されるべきだが、統治機関がルール変更を決めたなら従うしかない」

ヴォルフは、この問題がもたらす“前例”こそが本質的な懸念だと指摘する。
「失われるのは数馬力程度だ。レース結果に決定的影響を与えるものではない」
「問題は前例だ。新ルール導入の複雑さ、管理方法、必要な調整、そしてエンジン均衡システム(ADUO)への影響だ」
6戦後に適用されるADUO制度との関連も無視できないという。
「もし第6戦後に変更可能だと分かれば、各社は圧縮比を意識してまったく異なる開発を進めるだろう。予期せぬ影響は計り知れない」
一方で、FIA会長モハメド・ビン・スライエムの理解を得ているとも明かした。
「彼はエンジンや車両に強い関心を持っている。彼の視点では、規則は明確で正しく適用されている」
最終的な決定権はFIAとF1にある。
「もし彼らが特定の見解や隠れたアジェンダを優先するなら、その時点で終わりだ」
2026年F1レギュレーション初年度の開幕を目前に、技術革新と政治力学が複雑に絡み合うエンジン戦争は、コース外での主戦場を迎えている。
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