マイアミGPに潜むF1戦略リスク マクラーレン幹部が語るスプリント週末の難しさ
F1は1か月の中断期間を経て、マイアミGPで再開する。華やかな雰囲気や多くのセレブリティに注目が集まりやすい一方で、マイアミ・インターナショナル・オートドロームは、ドライバー、マシン、そして戦略部門に複雑な判断を求めるサーキットでもある。

特に2026年のマイアミGPは、スプリント形式によってプラクティス時間が限られるうえ、新たなレギュレーション変更や各チームのアップデート投入も重なる。

限られた走行データのなかで、どのタイヤを温存し、どのタイミングでリスクを取るかが、週末全体の流れを左右する。

本記事は、F1公式リスクパートナーであるMarshとの提携企画「THE RISK PERSPECTIVE」として、各チームの判断に潜むリスクの視点からマイアミGPを読み解く。

スプリント週末で増すタイヤ判断のリスク
マクラーレンは過去2年のマイアミGPを制しており、2025年にはランド・ノリスとオスカー・ピアストリがスプリントと決勝でワンツーを分け合い、スプリント時代で初めて週末最大ポイントを獲得したチームとなった。

そのマクラーレンで戦略グループを率いるレーシングディレクターのランディ・シンは、マイアミに向けて多くの変数があると語る。

「どのレースでも、タイヤの挙動には常に未知の部分がある」

「通常は、サーキットについては年を追うごとに学び、マシンについてはシーズンを通じて学んでいく。戦略にとって現時点で最大の未知数は後者だ。まだ3レースしか終えていないからだ」

フロントランナーの戦略担当者にとって重要な判断のひとつが、予選でどのタイムを“安全圏”と見なすかだ。最初のアタックで十分なタイムを出したマシンは、それ以降の走行を見送り、週末後半に向けてタイヤを温存できる。

だが、その判断には、路面がどれだけ進化するか、遅いマシンがどの程度のペースを出せるかを読む必要がある。

「今年は簡単ではない。他チームのペースに関する実測データが十分にないからだ」

「通常、シーズン序盤は勢力図がより動きやすいし、スプリントイベントでは金曜の最初の予選セッションが難しい。あまり走行を見ていない状態で臨むことになるからだ。さらに、さまざまなマシンのアップデートも考慮しなければならない」

「ただし、少し簡単になる点もある。スプリント予選のSQ1とSQ2の判断は、通常の予選とは微妙に異なる。もう1セットのタイヤを使うかどうかではなく、許されている1セットをどれだけ使うかを決めるだけだからだ」

1回のフリー走行で問われるミディアムかハードかの選択
スプリント週末では、各車にハード2セット、ミディアム4セット、ソフト6セットが割り当てられる。さらにスプリント予選では、SQ1が新品ミディアム、SQ2も新品ミディアム、SQ3進出車は新品ソフトの使用が義務づけられる。

シンによれば、最も難しい戦略判断は、唯一のフリー走行でどのタイヤを使うかだ。

「最も難しい戦略判断は、1回しかないフリー走行でどのタイヤを使うかになることが多い」

「通常はミディアムかハードの選択だ。ハードを使えば、決勝で使えるハードは1セットだけになる。しかしミディアムを使えば、スプリント予選の2セグメント、スプリント、決勝を乗り切るにはミディアムが十分ではなくなる」

「その判断を助けるための走行データはない。だから、今年の他イベントから得た情報、昨年のマイアミでの情報、そしてファクトリーでのシミュレーションや分析に頼る必要がある」

もうひとつの重要な判断が、スプリントのスタートタイヤだ。ソフトは立ち上がりで有利になる可能性がある一方、スプリント距離でどう機能するかは十分に分からない。ミディアムを選ぶ場合でも、新品を使うか、スプリント予選で使った中古を使うかという選択が残る。

新品タイヤはスプリントで有利かもしれないが、日曜の決勝スタートに温存したいという考えもある。

マイアミ攻略の鍵はターン11から16の低速区間
マイアミ・インターナショナル・オートドロームにはオーバーテイクの可能性が多いが、ドライバーが大きな差をつけるのはターン11から16にかけての複雑なスタジアム区間だ。

この区間は低速コーナーと高低差が組み合わされ、フロリダ・ターンパイクのアクセスランプ下を縫うように走る。橋のクリアランスやクレスト通過時の安全要件を満たすため、速度は低く抑えられる。

F1マシンは高速コーナーを駆け抜ける姿が最も映えるが、低速区間ではドライバーの精度がより明確に表れる。針の穴を通すようなライン取りで、得るものも失うものも大きい。

2026年型マシンで変わるセットアップの考え方
過去のマイアミでは、予選ラップに最適なダウンフォース量よりもわずかに削り、ストレートエンドでの速さを確保する妥協が一般的だった。

しかし2026年は事情が少し異なる。3本のストレートはいずれもストレートモードゾーンとなり、マシンは自動的に低ドラッグ構成へ移行するためだ。

第1セクターの高速スイーパーはマイアミを高速サーキットのように見せるが、実際にはF1が訪れるなかでも低速寄りのサーキットだ。各チームは低速コーナーで縁石を使い、走行ラインを狭めるため、ロール剛性を少し柔らかくする方向に向かう。

一方で路面は非常に滑らかなため、ヒーブ剛性は高めに保つことができる。それにより、空力荷重を最適化しやすくなる。

ノリスが語る2026年マイアミのレース像
ランド・ノリスにとって、マイアミは特別な場所だ。2024年にF1初優勝を挙げ、2025年にはスプリントで勝利し、決勝でも2位に入った。

2026年のマシンは大きく変わっているが、ノリスはそれがレースの性質を根本的に変えるとは考えていない。

「ある意味では、それほど多くのことは変わらない」

「高速の第1セクターがあり、非常に低速の中間セクターがある。ストレートとコーナーの配置を考えると、バッテリーをどう使うか、あるいはどう温存するかという点で、かなり良いレースになる可能性がある」

「オーバーテイクのために使いすぎれば、次のストレートで相手がすぐに抜き返してくることは分かっている。でも、素晴らしいレースになるかもしれない。本当に様子を見る必要がある」

「過去数年、このサーキットでは僕たちは非常に良いパフォーマンスを発揮してきた。ドライバーとしてだけではなく、チームとしてだ。昨年はペースという点でシーズン最高のサーキットのひとつだったし、今年も他の場所より少しマシンに合っているかもしれない」

2024年ノリス初優勝を決めたセーフティカーの妙
マイアミGPは2022年に初開催された。そのなかで最も印象的なレースのひとつが、2024年のノリス初優勝だった。

ノリスは6番手スタートで、フロント集団の後方につけていた。ほかの上位勢と同じくミディアムでスタートし、タイヤを労わりながら無理に攻めすぎず、前のマシンがピットに入るなかで順位を上げていった。

27周目には首位に立ち、オーバーカットを機能させていたが、決定的だったのは29周目に出たセーフティカーだった。

通常のグリーンフラッグ下でのピットストップは17秒を失うが、セーフティカー中ならそれが9秒に縮まる。ノリスはピットに入りながら首位を守ることができた。

ノリスにとって幸運なタイミングだったのは事実だが、早めにピットへ入り、アンダーカットを仕掛けたり、新しく速いタイヤでアンダーカットを防いだりする側は、まさにこうした展開をリスクとして背負っている。

2023年フェルスタッペンのハードタイヤ戦略
2023年のマイアミでは、マックス・フェルスタッペンが9番手スタートから異なる道を選んだ。トップ10のうち8台がミディアムを履くなか、フェルスタッペンはエステバン・オコンとともにハードを選択した。

速いマシンが本来より後方にいる場合、ロングスティントを狙い、ミディアムやソフト勢がピットインしたところでトラックポジションを得る戦略は珍しくない。

ただしフェルスタッペンの場合、より頑丈なハードで長く攻め続け、コース上で順位を上げていった。3周目に8番手、4周目に6番手、8周目までに5番手、9周目には4番手に浮上。14周目にカルロス・サインツ、15周目にフェルナンド・アロンソを攻略し、チームメイトのセルジオ・ペレスの背後に迫った。

ペレスが20周目終わりにピットインすると、フェルスタッペンは首位に立った。その後もプッシュを続け、45周目に自らのピットストップを行った時点で、ペレスのわずか1.7秒後方に戻った。

大きなタイヤ差を生かして容易に抜き返し、そのまま勝利へ向かった。マイアミでフェルスタッペンが越えるべき山は大きかったが、完璧な戦略によって、その登りを穏やかな散歩のように見せた。

華やかさの裏で問われるリスク管理
マイアミGPはショーとしての華やかさが際立つ一方で、F1チームにとっては判断の連続となる週末だ。限られたプラクティス、タイヤ配分、スプリント形式、新レギュレーション、アップデート投入、そして低速区間とストレートモードの組み合わせが、戦略とセットアップの難度を押し上げる。

速さだけではなく、どのリスクを取り、どのリスクを避けるか。その判断の精度が、2026年マイアミGPの結果を大きく左右することになる。

Source: Formula1.com / Marsh

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カテゴリー: F1 / マクラーレンF1チーム / F1マイアミGP