アレックス・パロウ、マクラーレンF1契約訴訟で証言「裏切られたと感じた」

訴訟の核心は、マクラーレンが主張する契約違反による損害賠償2,070万ドル(約31億円)と、パロウが「F1昇格の約束を受けていた」とする主張の食い違いにある。
マクラーレン契約の経緯と訴訟の背景
2022年、パロウはマクラーレンと契約を締結し、インディカーで3年間走ると同時に「F1リザーブドライバーの可能性」を含む内容だった。しかし、当時所属していたチップ・ガナッシ・レーシング(CGR)が契約延長オプションを行使し、パロウの移籍を阻止。結果的にパロウはマクラーレンとの契約を反故にせざるを得ず、マクラーレンはその損害を理由に法的措置に踏み切った。
マクラーレン側は、スポンサー契約(NTTデータとの再交渉費720万ドル、他スポンサー損失680万ドル)、他ドライバーの昇格や給与支出(130万ドル)、さらにパロウへのサインボーナス40万ドルの返還を求めている。
「F1昇格を約束された」と主張するパロウ
パロウは証言の中で、マクラーレンがF1昇格を約束していたと主張したが、マクラーレンはこれを全面否定している。
「僕はマクラーレンが別の新人ドライバーと契約したと知って非常に動揺し、怒りを感じた」とパロウは述べた。
それは2022年9月、ピアストリが「アルピーヌではなくマクラーレンと契約した」とSNSで発表した時のことだったという。
「当時のマネジメント会社MIMにザク(・ブラウン)に確認してもらったら、『2023年に速いドライバーが必要だった』と言われた」と説明したうえで、「ただ、ザクは『F1のチャンスに影響はない』とも言っていた」と付け加えた。
ザク・ブラウンは「保証はしていない」と反論
ザク・ブラウンCEOは10月8日の証言で、「アレックスを欺いたことはない。F1起用を確約したこともない」と主張。
マクラーレン側の説明によると、パロウには「プランB(怪我などでF1正ドライバーの代役)」や「プランC(ピアストリが期待外れだった場合の起用)」といった“可能性”が提示されただけだったという。
それでもパロウは、「F1こそがこの契約の唯一の魅力だった」と法廷で強調した。
ピアストリ契約後の不信とレッドブル接触の経緯
パロウは、2022年10月にザク・ブラウンと夕食を共にした際、「ピアストリを選んだのはチーム代表アンドレアス・ザイドルの決定だ」と説明されたと述べた。
さらにブラウンが「2024年にピアストリと自分のパフォーマンスを比較する」と発言したことから、「すでに状況が変わってしまった」と感じ、CGR残留を視野に入れ始めたという。
2023年6月には、レッドブルのヘルムート・マルコから「アルファタウリのドライバー候補」として接触を受けたと主張。
しかし、その話をザク・ブラウンに伝えたところ、ブラウンが直接マルコに電話した後、突然話が立ち消えになったという。
「何が起きたのか分からないが、確実に状況は悪化した」とパロウは述べた。
マクラーレン側の主張:資金と名誉の損失
マクラーレンは、パロウの離脱によってNTTデータとのスポンサー契約再交渉や、パト・オワードの昇格費用が発生したと主張している。
ブラウンは証言で「我々はチャンピオンを失っただけでなく、ドライバーの入れ替えや怪我の影響でチーム運営が混乱した」と語った。
「本来ならトラックでのパフォーマンスや新スポンサーの獲得に集中すべきだったが、誰が走るのか分からない状況ではそれができなかった」と述べ、パロウによる「 reputational damage(評判の損害)」も訴えている。
今後の審理と判決時期
アレックス・パロウは10月10日(金)から反対尋問を受ける予定で、裁判はサイモン・ピッケン判事のもとで進行中。判決は11月に言い渡される見込みだ。
Source: PlanetF1.com
カテゴリー: F1 / マクラーレンF1チーム