佐藤公哉
佐藤公哉が、AUTO GP最終大会ブルノのレース週末を振り返った。

僅かな可能性に賭けて逆転タイトル奪取に挑んだ佐藤公哉は、排気管が壊れる不具合に見舞われて周回数を重ねられなかった4日の練習走行1回目こそ13番手に沈んだものの、同日の練習走行2回目では5番手へ浮上した。

西日が眩しい同日午後4時20分からの予選は気温8℃/路面温度25℃、冷たい風が加わって数字以上の寒さとなった。新品のミディアムタイヤを履いたセッション前半の佐藤公哉は、1分44秒419のタイムで5番手につけた。セッション後半には満を持して新品のソフトタイヤを履いて臨んだが、アタックラップ中に赤旗が掲示される不運に遭って1分44秒404のタイムで8番手に留まった。

5日の決勝レース1(16周)、8番グリッドの佐藤公哉は鋭い加速でスタート直後に6番手へ浮上、さらに先行車両のリタイアもあって1周終了時点に早くも5番手を確保した。しかし、背後を走るライバルのペースが速く、3周目に抜かれて6番手へ後退。直後、早めのピットストップを実施してレース後半の勝負に臨んだ。この戦略がピタリと当たり順位を上げ、佐藤公哉はライバルの猛追にさらされながらも4位を死守した。

優勝が絶対条件、しかもタイトル獲得はライバル次第の佐藤公哉にとって、もはや失うものはなかった。

6日の決勝レース2(16周)は決勝レース1の結果に基づいて上位8台がリバースグリッドとなり、佐藤公哉は3列目5番グリッド、タイトル争いでライバルとなるヴィットリオ・ギレッリとナレイン・カーティケヤンは4列目の7、8番グリッド。赤信号消灯直後、目を見張る加速を見せたのは佐藤公哉で、第1コーナーまでに3台を抜き去って2番手へ浮上、さらに高速の第1コーナーでは残る1台をアウト側から抜いてレース開始早々トップに立った。そしてタイヤ交換義務を消化する7周目のピットストップを無難にこなすと、優勝20点だけでなくファステストラップ1点も取るために猛プッシュ、真っ先にチェッカードフラッグを受けて今季最後のレースを完璧な形で締めくくった。

もちろん、タイトルの行方はライバルの成績次第。カーティケヤンはレース中盤にフロントウイングが脱落し掛かるトラブルでレースコントロールからピットインの指示がなされるもこれを無視したため、2位でゴールしたもののレース後に競技規則違反と判断されて競技除外(失格)の裁定が下された。ギレッリは4位でゴールしたが、カーティケヤンの失格で3位に繰り上がり、佐藤公哉は今季最多勝タイの5勝目を飾ったものの惜しくも9点差でチャンピオンを逃し、AUTO GPシリーズ2位に終わった。

佐藤公哉
「練習走行1回目はまともに走れませんでした。それは練習走行2回目にも影響し、やるべきメニューをこなすのが全体的に遅れました。初めて走るサーキットで慎重だった部分はありますが、トップとのタイム差は予想以上に大きかった。クルマは調整を施すべき部分がありましたが、状態が明確であっただけ良かった。予選のセッション前半はミディアムの新品タイヤで臨み5番手のタイムでした。ただ、3、4番手のドライバーはすでにソフトを投入しているにもかかわらずそれほど速くなかったので、自分のタイムも決して悪くはないと感じていました。セッション後半にはソフトの新品タイヤを履き、クルマの調整もうまくいって気持ち良く走れていたのですが、あからさまに邪魔するドライバーが居たり、赤旗が出たりして、まともなタイムアタックができませんでした」

「決勝レース1はスタートで2台を抜いて6番手に上がり、まもなく1台がリタイアしたので1周目を5番手で終えました。後方からのスタートだったので早めのピットストップを想定し、前輪はソフトの中古タイヤで後輪はミディアムの中古タイヤを履いていました。だからトラクションの掛かりも悪く、ブレーキの効きも悪く、クルマのバランスも悪く、レース序盤は後ろから攻め立てられました。それで3周目の第3コーナーで、アウトから1台に抜かれました。あまり抵抗しすぎると、その後ろのライバルにまで抜かれる可能性があったので、そのあたりは冷静に対処できたと思います。4周目のピットストップのタイヤ交換は予定どおりです。タイヤは予選で使った中古ですが前後ともソフトになり、クルマのバランスも良くなったので全力でペースを上げました。しかし、速いペースで5、6周もすると左側の前後タイヤの摩耗が激しくなり、レース終盤はペースも遅くなって苦しかった。あとひとつコーナーが残っていたら、5位に落ちていたと思います」

「決勝レース2は開始早々、トップまで行けたのが大きかったですね。第1コーナーをアウトから行ったのは、後ろから危険なライバルが来ていたので、彼のアタックから逃れる意味もありました。また、第1コーナーまでの速度の伸びが良かったので、トップのドライバーもアウトから抜こうとしていた僕を牽制するに牽制できない状況でした。僕らはレース前からランキングトップのドライバーを追いかけるのは難しいと見ていて、より現実的なライバルに照準を合わせて彼の動きに注意を払い、しっかりとシリーズ2位を取ろうと確認し合いました。とはいえ、ランキングトップのドライバーに何かアクシデントがあったときにはチャンピオンを狙えるよう、優勝とファステストラップでポイントを総取りするつもりでした。だからタイヤ交換後は予選のように攻めました。最後のレースを優勝で飾ったにもかかわらずタイトルを逃したのは悔しいですが、決勝レース2の内容は完璧でした」

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カテゴリー: F1 / 佐藤公哉 / AUTO GP