角田裕毅の後任最有力:アイザック・ハジャー F1デビュー戦の挫折から復活

2024年F2ランキング2位のフランス人ハジャーは、フォーメーションラップのターン2でレーシングブルズのマシンをクラッシュさせ、レースが始まる前に週末を終えてしまった。
厳しいコンディションのなか、開幕戦で壁に突っ込んだのは彼だけではなかったが、ハジャー自身はデビューを「ただただ恥ずかしい」と表現した。
しかし、パドックに戻った際にルイス・ハミルトンの父アンソニーから温かい言葉をかけられたことで、ハジャーはすぐに大きな期待通りの潜在能力を示し始めた。
フランス人は2025年シーズン、夏休みに入る前までに6度の入賞を果たし、常にトップ10争いを演じてきた。特にモナコ市街地での6位はシーズン前半のハイライトだったが、ザントフォールトでの驚きの初表彰台がそれをさらに上回る結果となった。そして、マックス・フェルスタッペンの隣のシートが来季も未定であるなか、ハジャーはすでにシニアチーム昇格への道を固めたのかもしれない。
恥ずかしいデビューをどう乗り越えたか
自ら「恥ずかしい」と表現したメルボルンでのデビューを経て、ハジャーはすぐに失望を乗り越え、結果を積み重ね始めた。続く中国ではポイントを逃したが、日本ではQ3に進出し、7番グリッドを獲得。憧れのハミルトンを予選で上回る快挙を果たした。
決勝では8位入賞を果たして初ポイントを獲得したが、同じルーキーのキミ・アントネッリが史上最年少のレースリーダーとなり、その快挙に隠れる形となった。しかし、鈴鹿をきっかけに次の6戦で4度ポイントを獲得し、モナコではキャリアベストの6位をマーク。リヤム・ローソンがレッドブルから降格後の調整に苦しむなかでも、ハジャーはレーシングブルズをミッドフィールドの中で確実に競争力ある存在に保ち続けた。
レッドブル昇格への大きな一歩?
その後一時的に結果を落としたものの、ハジャーはオランダで衝撃の走りを見せた。トップ10に返り咲いただけでなく、予選Q3最終アタックでラッセルや2台のフェラーリを上回り、2列目4番グリッドを確保。すぐ隣にはレッドブルのフェルスタッペンが並んだ。
決勝では序盤からルクレールのフェラーリやラッセルのメルセデスを退け、フェルスタッペンの背後についていく走りを披露。度重なるセーフティカーリスタートでも冷静に4位を守り続けた。そして、残り8周でノリスがマシントラブルによりリタイアすると、ハジャーは見事に表彰台を手にした。
この結果、ハジャーは史上最年少で表彰台に立ったフランス人となっただけでなく、レッドブル支援ドライバーとしても最速での表彰台獲得記録を更新。従来の記録は2008年モンツァでの優勝(22戦目)だったセバスチャン・ベッテルのものだったが、ハジャーはわずか14戦でこの偉業を達成した。
そしてフェルスタッペンの隣のシートを巡る議論が続くなか、ハジャーは角田裕毅の2026年残留の可能性に“とどめを刺した”との見方さえ広がっている。

レッドブルの次なるスター候補?
角田裕毅が8戦ぶりにポイントを獲得したザントフォールトの週末を経ても、角田の2025年以降の将来はレッドブル内では厳しいと見られている。
一方、ハジャー自身はメディアに対し、現時点でレッドブル昇格の準備ができていないと率直に語っている。フェルスタッペンのチームメイトとして挑んだドライバーが次々と苦戦している現実を目の当たりにしてきたからだ。
しかし、2026年にフロントランニングカーを得られる可能性を考えると、そのチャンスを断るのは難しいだろう。近年のレッドブルマシンはドライバビリティに問題を抱えてきたが、2026年の新レギュレーションで採用される従来型アンダーフロアへの回帰が、この問題を緩和する可能性もある。
レッドブルはこれまでもフェルスタッペンやベッテルといった若き才能を頂点に導いてきた。ハジャーもその系譜に連なる資質を備えている。開幕戦で「終わった」と思った失望から、いまや“レッドブルの次なるスーパースター”候補にまで上り詰めたハジャーの逆転劇は、まさに驚くべきものだ。(文:ダニエル・ハリス)
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