2025年F1ルーキー通信簿:各ドライバーは初年度で何を示せたのか?

F1 TVのリードコメンテーターでありF2の専門家でもあるアレックス・ジャックが、各ルーキーが2025年シーズンで何を示し、どのような課題を残したのかを振り返り、その初年度を通信簿形式で評価する。
■ アンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)

■ ベストリザルト:2位
■ 獲得ポイント:150点
際立った瞬間
マイアミのスプリント予選でポールポジションを獲得し、18歳251日でF1史上最年少ポールシッターとなった。ラスベガスで表彰台へ向かう中で見せたレースペースは、彼の並外れたレース能力を初めて強く印象づけるものだった。
どこが印象的だったか
ルイス・ハミルトンの後任という強烈な注目の中で比較的うまく対処し、開幕戦メルボルンでは16番手から4位まで追い上げる走りで存在感を示した。
マイアミではスプリントと決勝の両方でジョージ・ラッセルを予選で上回り、モントリオールでは初めて上位争いを展開して表彰台を獲得。マクラーレン勢の前でフィニッシュした。その結果、F1史上3番目に若い表彰台登壇者となり、彼に寄せられる期待の大きさを改めて示した。
しかし、その後に低迷が訪れる。メルセデスがサスペンション問題に苦しみ、修正アップデートも機能せず、不安定なマシンに悩まされたことで、アントネッリは考え過ぎるようになり、ラップタイムが大きく落ち込んだ。
オーストリアでは1周目にフェルスタッペンと接触するなど、ルーキーらしいミスも重なった。モントリオールの表彰台以降、6戦でわずか3ポイントしか獲得できず、ザントフォールトではルクレールとの接触もあり、自信を失いかけていた。
モンツァ後にチームと行われた率直な話し合いが転機となり、ブラジルとラスベガスでは素晴らしい走りを披露。特にC3タイヤで48周を走り切ったラスベガスのスティントは驚異的で、前方グリッドからスタートしていれば勝てていた可能性すらあった。
2026年に向けて改善すべき点
もし2026年にメルセデスが最前線に戻るなら、長期的な低迷は許されない。2年目で完成形を求めるのは酷だが、複数戦にわたって存在感を失う状況は繰り返せない。
総評
ルーキーミスと一流の才能の片鱗。そのすべてが、ある意味で予想通りだった。
■ オリバー・ベアマン(ハースF1チーム)

■ ベストリザルト:4位
■ 獲得ポイント:41点
際立った瞬間
メキシコシティでの4位。チャンピオン争いをしていたマクラーレンを、ハースで真正面から打ち負かしたレースペースは圧巻だった。
どこが印象的だったか
前半戦は不安定だったが、そこから立て直したメンタリティが際立った。夏休み時点では、チームメイトのエステバン・オコンが27点だったのに対し、自身は8点に留まり、2025年ルーキーの中での立ち位置に疑問符もついていた。
だが後半戦は見事だった。ザントフォールトではピットレーンスタートから6位に入り、混乱した展開の中で高いレースクラフトを示した。
オースティンでの大規模アップデートを境に状況は一変する。ベアマンはマシンを限界まで攻められる感覚をつかみ、「シーズンを通して探していた感触」を得たと語っている。
ハースにとって通常ならトップ8が限界だが、メキシコでの4位、サンパウロでの6位は彼の巨大なポテンシャルを証明した。ラスベガスでは、ハース史上初となる5戦連続入賞も達成。予選対決は14勝10敗でオコンを上回り、ポイントも41対38で逆転した。
2026年に向けて改善すべき点
週末を台無しにしてしまうプラクティスでのミスを減らすこと。
総評
後半戦の出来があまりに素晴らしく、数年以内にフェラーリ入りするという見方も現実味を帯びてきた。
■ ガブリエル・ボルトレト(ザウバー)

■ ベストリザルト:6位
■ 獲得ポイント:19点
際立った瞬間
ブダペストでの走り。ヨーロッパラウンドを通して学びを重ね、ここ一番のQ3で初めて本領を発揮。自己最高の予選結果から、決勝でも安定したスティントを重ねて6位を獲得した。
どこが印象的だったか
まず予選だ。評価の高いニコ・ヒュルケンベルグと予選対決を12対12で引き分けたのは、多くの人の予想を超えていた。
後半戦は、スタート直後のクラッシュや母国ブラジルでの大事故など厳しい場面もあったが、来年は全サーキットを経験済みとなる。本人も、限られた3回のプラクティスで限界を見極める難しさを率直に認めている。
2024年にわずか4点しか取れなかったザウバーにとって、ボルトレトは変革の一部だ。競争力あるマシンさえ与えれば、彼は確実に戦えることを2025年は示した。
2026年に向けて改善すべき点
大きな場面でのコントロール。ブラジルでのクラッシュは、明確なリスクを伴う動きだった。
総評
欧州ラウンドでの力強い走りと、経験豊富なチームメイトを追い詰めた姿は、彼がF1に残るに値することを証明した。
■ ジャック・ドゥーハン/フランコ・コラピント(アルピーヌ)

■ ベストリザルト:ドゥーハン13位/コラピント11位
■ 獲得ポイント:0点
際立った瞬間
在籍期間中、2人とも何度かピエール・ガスリーを予選で上回った。10番目に速いマシンでQ3に10回進出したガスリー相手に、これは特筆すべき点だ。
どこが印象的だったか
この年のアルピーヌのセカンドシートは、最悪のタイミングだった。チームは4月の時点で2026年マシンに注力し、2025年型は苦戦続きだった。
ドゥーハンは交代の噂にさらされながらシーズンを迎え、実際にわずか2か月でシートを失った。その直前、マイアミで初めてガスリーを上回っていただけに、なおさら厳しい展開だった。
コラピントは事前テストなし、さらにルーキーのレースエンジニアとのコンビという難条件でデビュー。それでも決勝予選で5回ガスリーを上回り、2026年へ向けた希望を残した。一方で、経験済みのサーキットではガスリーが好調な日には太刀打ちできなかった。
2026年に向けて改善すべき点
早い段階でポイントを獲得し、自信を取り戻すこと。
総評
不可解なシート運用が、両者にとって忘れたいシーズンを生んでしまった。
■ アイザック・ハジャー(レーシングブルズ)

■ ベストリザルト:3位
■ 獲得ポイント:51点
際立った瞬間
ザントフォールトでの表彰台。開幕戦メルボルンではフォーメーションラップでクラッシュし、スタートすら切れなかったルーキーが、14戦後に成し遂げた快挙だった。
どこが印象的だったか
何よりも速さだ。F3、F2での重要局面でのミスから懸念もあったが、F1では10戦中5戦でポイントを獲得する見事な立ち直りを見せた。
モナコではスピード、技術、戦略理解を融合させて6位。年間予選平均順位は9.8で、ルイス・ハミルトンの9.4に肉薄し、年間8番手の予選成績を記録。ザントフォールトではフランス史上最年少表彰台フィニッシャーとなった。
2026年に向けて改善すべき点
ほぼすべて。マックス・フェルスタッペンのチームメイトという、F1で最も厳しいシートに座ることになるからだ。
総評
若き才能の輝かしい一年。ビッグシート昇格にふさわしい内容だった。
■ リアム・ローソン(レーシングブルズ)

■ ベストリザルト:5位
■ 獲得ポイント:38点
際立った瞬間
バクーでの5位。最終的に世界王者となるドライバーを背後に抑え切った走りは、彼の可能性を示した。
どこが印象的だったか
わずか2戦でレッドブルから降格されるという過酷な状況に直面し、数戦は動揺が見られたが、持ち味であるレースペースを取り戻した。
6月後半のサスペンションアップデート以降はハジャーと互角に戦い、定期的にポイント争いへ。ブラジルでは52周をミディアムタイヤで走り切り、7台を背後に抑え続ける圧巻のレースクラフトを披露した。
2026年に向けて改善すべき点
初めてチームを率いる立場となり、ルーキーのチームメイトに対して主導権を握ること。
総評
降格に屈しない強い精神力。レーシングブルズは、彼にまだ大きな伸び代があると信じている。
カテゴリー: F1 / F1ドライバー
