インディカー・シリーズ 佐藤琢磨
2018年インディカー・シリーズの開幕戦となったセントピーターズバーグでは、金曜日、土曜日と空が曇りがちで、予選中には一時、雨も降ったが、決勝日になるとスタートを目前にして空が晴れ渡り、フロリダらしい暖かな気候の中、大観衆の前でレースが開催された。

市街地道路と空港の滑走路を利用した、ユニークな全長1.8マイルのコースを110周するレースは、スリリングなトップ争いが続く白熱した展開に。レースは、ゴールを目前にしてのフルコースコーションが発生したことで、ドラマティックな結末を迎えた。

ルーキーのロバート・ウィッケンズ(Schmidt Peterson Motorsports)は、ポールポジションから69周ものリードラップを記録してみせたが、残り3周のリスタートでアタックして来たアレクサンダー・ロッシ(Andretti Autosport)のマシンがバランスを崩してぶつかってしてしまったことにより、スピンに陥ったあとにリヤからコンクリートウォールにヒット。初優勝ばかりか、完走も逃す非常に悔しい結果となった。

アタックを仕掛けたロッシも接触後にバランスを崩して1台の先行を許し、3位でゴールした。優勝したのは、108周目のグリーンフラッグが振り下ろされたときに3番手を走っていたセバスチャン・ブルデー(Dale Coyne Racing)だった。昨年に続いてのセントピーターズバーグ2連勝で、自身にとって37勝目、Dale Coyne Racingにとっては通算6勝目となった。フランス出身のブルデーだが、セントピーターズバーグは彼がアメリカで故郷としている町で、家族や友人たちが見守る前での2年連続優勝、そして、昨年のインディ500予選での大アクシデントでの負傷以降初めての勝利となり、ブルデーは喜びを爆発させていた。

2位はグレアム・レイホール(Rahal Letterman Lanigan Racing)。予選ではアクシデントにより24番手と苦戦し、最後尾グリッドからのスタートとなったレイホールだったが、レースでのマシンは好ペースでの連続周回が可能なものとしており、最後のピットタイミングもよかったことで、上位への進出に成功。チームの作戦も巧みだったことと、ドライバーがミスなく走りきったことによって、見事、表彰台フィニッシュとなった。4位はジェームズ・ヒンチクリフ(Schmidt Peterson Motorsports)、5位はライアン・ハンターレイ(Andretti Autosport)、そして6位はスコット・ディクソン(Chip Ganassi Racing)と、Honda勢が2018年シーズン最初のレースでトップ6独占を果たし、トップ10に8台が食い込むすばらしい結果を残した。レースでは4人のHondaドライバーがトップを走り、リードラップの合計は110周のうち105周に達した。

佐藤琢磨(Rahal Letterman Lanigan Racing)は予選5番手、3列目のイン側グリッドからレースに臨み、序盤からトップグループ内でポジションを保っていた。表彰台も十分に狙えるパフォーマンスを見せていたが、35周目のターン1でブレーキングミスをしたディクソンが追突してしまい、佐藤琢磨のマシンはリアタイヤのパンクとマシン後部へのダメージを負ってしまった。スロー走行でピットに戻り、タイヤを交換してレースに復帰できたのは幸運だったが、マシン後部のダメージの影響もあってレース前半と同じペースで走り続けることはできず、12位でのフィニッシュとなった。

2018年シーズン最初のレースは、フルコースコーションが8回、21ラップにわたって出されるという波乱の展開となった。レースを通じてコース上で発生したオーバーテイクの数は366回にも達し、セントピーターズバーグの新記録となった。

第2戦はフェニックスで、4月7日(土)に決勝レースが行われる。2度の合同テストを行ったあと、インディカー・シリーズは北米大陸を横断し、アリゾナ州の1マイルオーバルでのナイトレースを戦う。

セバスチャン・ブルデー (優勝)
「とても感動的な勝利となりました。昨年のインディ500予選でアクシデントを起こし、何箇所か骨折をしてレースをしばらく休みました。今日の勝利はカムバックしてから初めてのものとなりました。今回は、Honda初のインディカー・チャンピオンとなったジミー・バッサーらが加わった新体制での初レースでもありました。私たちは小さなチームですが、スタッフ全員がハードワークをこなしたことで手にできた勝利だと思います。今日の私たちは、最速マシンの持ち主ではありませんでした。しかし、安定した走りは可能で、与えられたチャンスをつかんで勝つことができました。今日のレースでは、ロバート・ウィッケンズがすばらしい走りを見せていました。3位での表彰台でも十分にハッピーだった私たちが勝利し、ウィッケンズにとって非常に残念な結果となった。その点については言葉がありません」

佐藤琢磨 (12位)
「荒れたレースになりましたね。スタート直後にウィル・パワーが目の前でスピンしましたが、幸運にも接触せずに通過できました。私たちはスタートで順位を上げ、そのあとに順位を下げました。序盤のペースはよく、コース上でバトルをできたのは楽しかったのですが、ディクソンに後方からぶつかられ、右リアタイヤがパンクし、ディフューザーにもダメージを負いました。そのあとは苦しい戦いになり、ピットタイミングをずらしてチャンスをつかむこともトライしましたが、タイミングよくフルコースコーションが出ることもなく、トップグループに復活することはできませんでした。ファスト6で予選を終えていながら、このような結果になったのはとても残念です。Rahal Letteman Lanigan Racingに戻って最初のレースは12位でのフィニッシュ。しかし、グレアムは見事2位フィニッシュでした。彼には心からおめでとうと言いたいですね。難しい週末となりましたが、最終的にすばらしい結果を手に入れたのですから。この週末、私たちはとても多くのデータを収集し、本当に多くを学べたと思います。ポジティブに思えることはたくさんありますから、これからもプッシュし続けます」

ロバート・ウィッケンズ (18位)
「最後のリスタートで、強引過ぎるポジションの防衛はしたくありませんでした。レーシングライン以外にはものすごい量のタイヤかすが散らばっていたからです。アレクサンダー・ロッシがラインを外れてでもアタックをして来たら、そうさせる気でいました。あのターン1ではブレーキングを遅らせ、私はコーナーを回りきりました。しかし、そこで接触が起こり、マシンがスピンして壁にクラッシュしてしまいました。私にとっても、チームにとっても、考えていたものとは異なる結果となりました。あのリスタートには少々混乱もありました。グリーンフラッグが振られると無線で指示されましたが、私の前を走るペースカーのライトは点灯されたままでした。それで私はベストのリスタートが切れなかったのです。今日私が切ったリスタートの中では、あれが最悪のものでした。これ以上の点についてコメントをするには、ビデオなど、いろいろなものをみて検証を行いたいと思います。レースを通してトップを走りながら、ゴールできなかった。こんなことはもう二度と経験したくないですね」

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カテゴリー: F1 / インディカー