ホンダF1:2021年 第13戦 F1オランダGP プレビュー
1985年以来36年ぶりの開催となるF1オランダGPの舞台は、ザントフォールト・サーキット。レッドブル・レーシング・ホンダのマックス・フェルスタッペンは、母国で初のグランプリに臨む。

オランダGPは、昨年からの再開が決まっていたが、コロナ禍でのスケジュール変更により2020年は中止となった。これまでも、スタンドをオレンジに染め上げ、各地で熱狂的な声援を送ってくれたオランダのファンの前で臨む初めてのレース、ホンダF1のすべてのメンバーが楽しみにしている。

このF1開催に向けてサーキットは大幅に改修されており、リズムが重要となる連続コーナーやバンク角のついた最終コーナーなど、絶え間ない操作が要求される高速レイアウト。どんなレースが見られるか、期待が高まっている。

田辺豊治(ホンダF1 テクニカルディレクター)
「先日のベルギーGPは、雨の影響でセーフティカー先導のみで終了したレースとなりましたが、Red Bull Racingのフェルスタッペン選手が優勝を得ました。ポールポジションの獲得がこの優勝に結びついたことからも、毎セッションを大切に全力でレースウィークエンドを進めることが重要だと改めて感じました。2021年シーズン後半の初戦、Red Bull Racingとパートナーを組んでともに戦う50戦目という節目のレースで、ポールポジションに加えて優勝と、いい形でスタートができたと思います。今週は3連戦の2戦目としてオランダGPが開催されます。我々は陸路でオランダへと移動し、フェルスタッペン選手の母国GPに臨みます。ザントフォールト・サーキットでは、1985年以来の開催となるため、現代のF1マシンによるレースは初めてになります。海岸線のすぐ近くにあり風が強いこと、起伏に飛んだ地形に作られ、急なバンクがついているコーナーがあったりと、特徴的なサーキットです。初走行となるサーキットに対して、チームとともに入念なシミュレーションを行い備えていますが、金曜からの走行を通して得られる実際のデータを確認して、迅速にキャリブレーションの最適化を進めることが重要となります。今週末の観客席は、間違いなくフェルスタッペン選手の応援団でオレンジに埋め尽くされると思います。その大きな声援に応えるべく、両チームメンバー、4名のドライバーとともにいいレースができるよう準備を進めます」

マックス・フェルスタッペン(レッドブル・レーシング・ホンダ)
「先週末は予想外の展開となり、望んだ形での優勝ではありませんでしたが、勝利に変わりはありませんし、チャンピオンシップ争いにおいて貴重なポイントを獲得できました。僕らは、どんなチャンスでも最大限ものにしていかなければなりません。もちろん、ドライバーとしては僕ら全員がレースをファンに見せたいと思っていましたが、視界がない中では安全ではありませんし、簡単な決断でなかったのは明らかなので、それを尊重しなければなりません。ザントフォールトでのレースを心から楽しみにしていました。オランダでのレースはホームの観衆を前にした特別なものになるはずなのはもちろん、1人のドライバーとしても新たなコースでF1マシンの限界を探るというのはいいチャレンジになります。オーストリアやベルギーで、僕らを応援してくれる大勢のファンが見られたのは素晴らしい気分だったので、今週末のグランドスタンドに詰めかけてくれたファンにいいレースを見せたいと思います。コースはオーバーテイクがやや難しいかもしれませんが、1ラップのパフォーマンスはやりがいのあるものになるはずです。予選ラップはかなりの高速になるので、ミスの代償も大きくなります。昨年は中止になっただけに、今年はさらに特別なものになるでしょうし、ホームサーキットのオレンジアーミーの前で勝てれば最高だと思います。ザントフォールトでは、F3マシンで1レースだけ経験があります。そのときは“ (元F1ドライバーの)息子”として知られていましたが、今回はきっと違う見られ方のはずです(笑)。いくつかのコーナーが回収され、当時からコースは変わっています。ただ、コースは高速で、F3マシンでもとても楽しかったので、もっとグリップの大きいF1マシンでレースをするのが楽しみです。Red Bullのショーランで、旧型のF1マシンを使って走ったことはあるので、新レイアウトを数ラップ経験しています。これがプラクティスの序盤の走行で役立つはずです」

セルジオ・ペレス(レッドブル・レーシング・ホンダ)
「スパではチームが素晴らしい仕事でマシンを修復してくれたので、今週末はその恩返しをしたいと思っています。彼らが成し遂げたことはとても印象的で、レッドブル・レーシング・ホンダの全員にどれだけハングリー精神があるかを示していました。そのチームワークと、誰もが時間内の修復をあきらめずにマシンへ向かう姿を見て、心から誇らしく思いましたし、ガレージでその光景に立ち会えたのは素晴らしいことでした。赤旗中断の間は、集中を保つのが大変で、まして、今回はマシンがダメージを負った状態でした。かなり難しい状況で、レースが行われるかもはっきりしていなかったので、集中するゾーンに留まっていることが重要でした。何が起きるか分からなかったので、常に準備を整えておく必要があり、これがカギでした。マックスは土曜の予選で素晴らしい走りを見せてくれましたし、それによって貴重なポイントを獲得してメルセデスとの差が縮まったのはよかったです。(英国GPのスタート直後のクラッシュや、3周で終了したベルギーGPにより)レースで走れない日々がしばらく続いています(笑)。だから、今度の日曜日のレーススタートを楽しみにしているのは確かです。ザントフォールトでは再び表彰台に上がれるレースができればと思いますし、そうなるようにチーム一丸となってプッシュしていきます。ザントフォールトはシミュレーターでしか走ったことがありませんが、第一印象はポジティブなもので、実際に走ってみるのがとても楽しみです。F1マシンでこうしたコースレイアウトを走るのはなかなかいいチャレンジになるはずで、最高のレースをしてファンに楽しんでもらいたいです」

ピエール・ガスリー(スクーデリア・アルファタウリ・ホンダ)
「F1が世界最先端の技術を用いたスポーツであっても、天候をコントロールすることはできません。スパでレースができなかったのは本当に残念で、会場のファンの皆さんは辛抱強く待ってくれただけに尚更です。僕らにとっても、6番グリッドを獲得し、いいレースウイークになっていたので残念でした。レースでもかなりいい結果がだせるチャンスがあると確信していたんです。ただ、次のレースがすぐにあるので、スパでよかった点をザントフォールトにも持ち込めると思います。ここでは2012年にフォーミュラ・ルノー2.0でレースをして以来なので、かなり久しぶりです。当時からコースレイアウトは大きく変わっていますが、シミュレーターで経験してきました。マックスがF1に参戦してから初のオランダGPになるので、レースウイークすべてが素晴らしいものになるはずです。ストレートが短く、コース幅はとても狭いので、オーバーテイクがかなり難しくなり、モナコと似たような面白い週末になると思います。予選が特に重要となりますが、その点で僕らは上手くやれているので、有利に働くはずです。また、海の近くにあって砂が吹き寄せられるので、初日の金曜はコース上が埃っぽいと予想しています。コンディションは徐々に上がっていくはずです」

角田裕毅(スクーデリア・アルファタウリ・ホンダ)
「日本でレースをしているときは、雨の中でのドライビングにも慣れていましたが、スパの日曜の視界はレースをするには厳しすぎました。F1マシンでは初めてのスパでのレースをとても楽しみにしていましたし、ルーキーイヤーでの学びにもなるはずだったのですが、安全は何よりも重要だというのは絶対です。フリー走行では、チームが中団勢の中でも競争力があるように思えたので、オランダでも再度それを披露して、どんな戦いができるか見ていきたいと思います。ザントフォールトではどのカテゴリーでも走行経験がありません。変更後のコースレイアウトは、僕のようなルーキーだけでなく、全ドライバーが初めての経験だと思います。シミュレーターでは、かなりの角度のバンクがあり、次のセクションに向けてスピードを維持するにはスキルが必要で、普段のコースとは違うと感じています。経験のないコースへの適応は早い方だと思っていますが、フリー走行でなるべく多くを学ぶためにも、ミスによって走行時間を失うことがないようにしなければなりません。また、ザントフォールトではシミュレーターも新レイアウトの風景が完璧ではないので、トラックウォーク(コースを実際に歩いて確認する時間)がいつも以上に役立つと思います。シミュレーターも役には立ちますが、実際に歩くことですべてを目にすることができます」

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カテゴリー: F1 / ホンダF1 / F1オランダGP