ホンダF1:2021年 第10戦 F1イギリスGP 決勝レポート
2021年 第10戦 F1イギリスGPの決勝は、非常に厳しい戦いとなったが、ホンダF1パワーユニット勢の最上位にスクーデリア・アルファタウリ・ホンダの角田裕毅が入り、ポイント獲得を果たした。

前日に行われたスプリント予選の結果により、レッドブル・レーシング・ホンダのマックス・フェルスタッペンがポールポジションからスタート。スプリント予選をリタイアで終えた、セルジオ・ペレスは、パーツ交換を行ったためにピットレーンスタートとなった。

スクーデリア・アルファタウリ・ホンダは、ピエール・ガスリーが12番グリッド、角田裕毅が16番グリッドとなった。このフォーマットでは、全ドライバーがスタートタイヤを自由に選択できるが、ペレスがハードタイヤを装着したほかは、全員がミディアムタイヤを選択した。

スタート直後から、フェルスタッペンとルイス・ハミルトン(メルセデス)は激しいバトルを繰り広げると、ターン9のコプスで、後方からオーバーテイクを試みたハミルトンが、フェルスタッペンの左リアに接触。フェルスタッペンは高速でコース外のバリアへ衝突した。これによってレースは赤旗中断となったものの、幸いにもフェルスタッペンは自力でマシンを降り、救急車へ歩いて乗り込むことができた。その後、予防の意味も含めてさらなる検査を行うために、地元の病院へと搬送された。このインシデントに対して、スチュワードは、ハミルトンに10秒加算のタイムペナルティーを科した。

マシン回収とバリア修復を行ったため、レース中断は30分以上に及んだが、この間にはタイヤ交換とマシン修復が認められており、全車がスタンディングスタートでの再開に備える。

残り49周時点からスタンディングスタートで再開されると、19番グリッドのペレスが見事な追い上げで12番手まで浮上。しかし、ここでペースの上がらないエステバン・オコン(アルピーヌ)に引っかかっていたガスリーの後方で抑えられる形となり、ペレスは18周目にピットイン。ミディアムタイヤに交換して2ストップ戦略に切り替える。

一方、スクーデリア・アルファタウリ・ホンダ勢はピットストップを遅らせる戦略に挑みます。ガスリーはトラックリミット違反の警告を受けたことから、ドライビングを修正しつつ、DRSトレイン状態の中でレースを進める。周囲のマシンがピットストップを終えて単独走行となると、28周目にハードタイヤに交換。角田はその背後でペースを上げると、全車の中で最も遅い30周目にピットストップを行う。

トップ10に浮上していたペレスは、38周目に2度目のピットストップを行い、再度ミディアムタイヤを装着。オーバーテイクを繰り返し、46周目にパンクを喫したガスリーがピットインしたことで11番手まで浮上。さらにキミ・ライコネン(アルファロメオ)をパスしてポイント圏内に入るが、チームはここでチャンピオンシップを考えて戦略を切り替える。

ハミルトンがレースのリードを奪い、ファステストラップも記録したため、ペレスはソフトタイヤに交換してファステストラップを更新。ペレスは16位でフィニッシュしたため、トップ10以上に限定されるファステストラップポイントの獲得はならなかったが、タイトル争いのライバルであるハミルトンの1ポイント追加を阻止した。

角田はペースを維持しながら順位を上げて、16番グリッドから10位入賞を果たした。これが自身4度目、2戦ぶりのポイント獲得となる。ガスリーは2度目のピットインの後に、ジョージ・ラッセル(ウイリアムズ)をオーバーテイクし、角田に続く11位でフィニッシュした。

次戦はサマーブレイク前最後のレースとなる、第11戦ハンガリーGP。8月1日(日)に決勝が行われる。

田辺豊治(ホンダF1 テクニカルディレクター)
「今日のイギリスGP決勝は、我々にとって非常に厳しい結果になりました。ポールポジションからスタートしたレッドブル・レーシング・ホンダのフェルスタッペン選手は、いいスタートを決めたものの、オープニングラップで後ろから迫るハミルトン選手に接触されてコントロールを失い、タイヤバリアに突っ込みレースを終えました。非常に残念ではありましたが、激しいクラッシュにもかかわらず、フェルスタッペン選手に大きなケガなどがなさそうなことは幸いでした。昨日のスプリント予選でのリタイアを受けてピットレーンからスタートしたチームメートのペレス選手は、オーバーテイクが困難なレースでトラフィックの状況などにより、非常に難しい展開となりました。一時は10番手までポジションを上げましたが、最終的にはノーポイントと、こちらも残念な結果になりました。スクーデリア・アルファタウリ・ホンダについては、週末を通してペースが上がらず苦しい戦いでしたが、粘り強く走った角田選手が10位入賞と、貴重なポイントを獲得できたことはよかったと思っています。今回のレース結果は非常に厳しいものですが、これがチャンピオンシップを戦っていく厳しさだとも感じています。気持ちを入れ替えて、次戦ハンガリーGPに向けて準備を進めます。このあともタフな戦いが続くと思いますが、強力なライバルを相手にいいレースができるよう、最善を尽くしていきたいと思います」

クリスチャン・ホーナー(レッドブル・レーシング・ホンダ チーム代表)
「イギリスGPのレースウイークをこういう形で終えることになるのは本当に厳しいです。マックスが自力でマシンを降りてこられたことが幸いでしたが、彼はその後病院で検査を受けて現在も経過観察の最中です。映像を何度も見返しましたが、コプスのようなF1の中でも最速のコーナーの一つで、イン側からホイールを向けてくるというのは間違った判断で、ルイスが両ドライバーを多大なリスクにさらしたと感じざるを得ません。接触の瞬間を見て分かるように、ルイスはマックスに並びかけておらず、ルイスの左フロントがマックスの右リアに当たっています。この動きによって、マックスは51Gもの衝撃とともに壁に激突しました。マックスとヨス(フェルスタッペン氏/父親)とは連絡を取っており、このあとまた状況をアップデートしようと思います。チェコ(ペレス)にとっては厳しいレースになりました。ピットレーンスタートからすぐにポジションを上げたものの、DRSトレインに引っかかり、タイヤのデグラデーションが大きくなってしまいました。レース終盤では、ファステストラップを記録するために彼をピットに入れました。チャンピオンシップでは我々がまだリードを保っていますが、今日の出来事はチャンピオンシップ獲得に向けて、我々の闘志にさらなる火をつけたと思っています

角田裕毅(スクーデリア・アルファタウリ・ホンダ)
」今日はポイント獲得を果たせてとてもうれしいです。プランに忠実にレースを進めようと、タイヤマネージメントに集中しましたが、うまくやれたと思います。レースウイークを通じて苦戦していましたし、新フォーマットによって僕のようなルーキーには厳しさが増したと思います。そうした中でもチームにとって重要なポイントを持ち帰ることができて、満足しています」

ピエール・ガスリー(スクーデリア・アルファタウリ・ホンダ)
「正直なところ、言葉になりません。最終盤までポイント圏内にいたのに、不運なパンクによって残り5周でピットインしなければなりませんでした。今日のようなレースを終えて、ポイントなしに終わるのはとてもフラストレーションが溜まります。ただ、その中でも明るい点はいくつかあって、厳しいレースウイークでしたが、今日のレース中盤で、トラフィックを攻略して単独走行していたときのペースはとてもよかったです。もっと上位で戦い続けたいと思っているので、今週末苦しんだ部分を理解するために懸命に取り組み、ハンガリーではもう一度競争力のある状態に持っていければと思います」

セルジオ・ペレス(レッドブル・レーシング・ホンダ)
「今週末の内容と自分のパフォーマンスにはとてもがっかりしています。想定していたほど改善できず、タイヤのことを考えるととても難しい位置にいました。DRSトレインに入ってからはオーバーテイクするのが不可能でした。残り数周でランス(ストロール/アストンマーティン)とフェルナンド(アロンソ/アルピーヌ)をパスして7位になることはできたと思いますが、戦略的な理由でファステストラップを目指すためにピットインしました。今週末は僕らにとっては忘れるべきものですし、チャンピオンシップでも大きくリードを詰められてしまいましたが、ハードワークで立て直しを図り、ハンガリーでは再び強くなって戻ってこなければなりません。マックスとルイスのインシデントについてはまだ映像を見ていないので、見直す必要がありますが、何よりも大切なのはマックスが無事だったということです」

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カテゴリー: F1 / ホンダF1 / レッドブル・レーシング / F1イギリスGP / スクーデリア・アルファタウリ