F1特集:ホンダF1の山本雅史MDが2021年の展望を語る
ホンダF1としては最後のシーズンの開幕戦が始まった。マネージングディレクターを務める山本雅史が、この一年間をどんな思いで戦うのか、そして2022年以降のことについて語った。
2015年のF1復帰から6年、119戦を経て、ホンダF1は今週末のバーレーンGPで最後のシーズン開幕を迎える。山本雅史マネージングディレクターは、これまでホンダとして”3つのステップ”を経てきたことで、今季の目標が揺るぎないものになっていると語る。
「ホンダにとっては今年が最終年ですから、できるだけ多く勝利を挙げてタイトル争いをしたいですね」と山本雅史は語る。
「我々は、ここまで大きく前進してきたと思います。まずは、マクラーレンと組んでF1に復帰して、そこでいいことも悪いこともたくさん学びました」
「2つ目のステップは、トロロッソと組めたこと。ここは、タイトル争いができる競争力を持ったパワーユニット(PU)を作るための準備期間のようなもので、チームから多くを学び、開発もかなり進めることができました」
「そして今、レッドブル、アルファタウリとともにタイトルを勝ち取る大きなチャンスが目の前に来ていると思います。少し時間はかかり過ぎたかもしれませんが、ここまで進歩し続けていて、素晴らしい6年間だったと思います」
この1年間は、新型コロナウイルスの影響を受けて、開発の時間が削られてしまった面はあるが、昨年のF1参戦終了発表以降、自分たちの持てるパフォーマンスをすべて発揮すべく、総力を挙げて取り組み、今季は新骨格のパワーユニット(PU)が投入される。
「もともと、コロナ禍以前は、2021年に新たなPUを投入する予定でしたが、コロナの影響で開発計画は2022年まで延期となりました。しかし、2021年末での参戦終了を発表したことで、再び今季からの投入に計画を変更したんです」
「コロナ禍で、2022年型の開発が数カ月間はストップしたのに、それを2021年に投入しようということで、かなりタイトなスケジュールになったのは事実です。Sakuraのエンジニアは、本当に頑張ってくれましたね」
「使える時間は限られていましたから、厳しい状況ではあったものの、我々には2015年から積み上げてきた知見がありますし、うちのエンジニアならやってくれると信じていました。このPUで出力が向上できると確信していたので、パワーの増したPUで戦うんだという強い思いで進めてきました」
こうした努力の末に完成した新骨格のPUだが、実際にコースへ出てうまく機能するのか、不安はつきものだ。バーレーンでのテストは3日間に限られており、問題が起きて走行を止めるわけにはいかない。山本雅史MDは、この3日間の内容が充実したことで、初期段階としては安心できたようだ。
「テストはいい感じで進んで、我々にとってはポジティブなプレシーズンになりました」
「もちろん、信頼性が第一ですが、パワーを向上させようとすればその代償として信頼性部分で負荷がかかります。だから、テストで信頼性の高さが見られたのはいいことですね」
「ライバルたちが開幕戦でどうなっているかは分かりませんし、予選とレースまで成り行きを見守る必要があります。でも、楽しみですね!」
今季はPUの変更だけでなく、レッドブル・レーシング、スクーデリア・アルファタウリともにドライバーラインアップも変わり、セルジオ・ペレスと角田裕毅が加入した。
「4人のドライバーそれぞれの強みや特長があるので、一緒に戦うのが楽しみです」
「もちろん、昨年ともに戦ったアレックス(アルボン)もとてもいいドライバーで、才能豊かですが、ペレス選手は経験豊富ですし、力強いドライバーがチームに2人揃うことで、好結果が期待できると思います」
「そして、アルファタウリのパフォーマンスも楽しみにしています。ピエール(ガスリー)は経験を積んで成熟した感があり、昨年示してみせたようにとても強いドライバーになったと思います」
「裕毅はルーキーですが、僕らはあまりそう思っていません。とにかくレースに集中しているし、ここまでいいパフォーマンスを見せてくれています」
「まずは、今週末のレースで完走してくれることを願っています。F2とは違うとはいえ、彼の速さやブレーキングでの強さを見られるはずですし、いくつかいいオーバーテイクを決めてくれるんじゃないかな」
「ホンダは日本で生まれた企業ですから、当然、裕毅の存在は特別なものがあります。おひざ元である日本のモータースポーツファンの皆さんも本当に喜んでくれていますよね。日本人ドライバーをF1のグリッドに送り出せるというのは誇らしいですし、小林可夢偉選手以来7年ぶりとなるわけですから、彼のレースにはとてもワクワクしています」
角田裕毅のデビューには、山本雅史MDだけでなく、世界中のレースファンが注目している。昨年はコロナ禍の影響で鈴鹿でのグランプリが中止の憂き目にあった日本のファンにとってはなおさらで、10月の日本GP開催を心待ちにしていることだろう。
「もちろん、鈴鹿でレースができることを願っています。前回の日本GPではメルセデスが優位でしたが、我々も鈴鹿で強さを発揮できるマシンを目指してきました。マックス、チェコ(ペレス)、ピエール、裕毅は、全員日本のファンの前でいいレースができるはずですし、いい結果をお見せしたいですね」
ホンダとしての参戦は今季限りとなりますが、来年以降、PU技術はレッドブルへと引き継がれる。F1マネージングディレクターとして、どう捉えているのだろうか。
「レッドブルと大筋の方向性では合意していますので、今は来年以降、ホンダがどうサポートをしていけるのか詳細を詰めているところで、その部分は引き続き協議中です」
「個人的には、来年からも我々が作ってきたものを使ってもらえるということでとてもうれしいです。ホンダとしても競争力のあるPUを提供することでレッドブルがチャンピオンシップを争えるようにサポートしていきたいと思っています。それがきちんとできれば、本当に素晴らしいことですよね」
「マシンやエンジンにHondaのロゴが出ることはありません。ホンダのPUを搭載したマシンを外から見ることになるのは複雑な気分になるでしょうね。マシンの心臓部はホンダなのに、ホンダのクルマとは言えないわけですから」
しかし、ホンダとして戦う時間は、まだ1年間残されています。2015年からの挑戦を締めくくるに相応しい戦いをすべく、山本MDは自信をにじませる。
「昨年の反省は、最初の3連戦であまりポイントを獲得できなかったことにあります。ホンダとしては序盤の数戦で絶対にミスをしてはいけませんし、特にマックスとチェコにはできる限り多くのポイントを手にしてもらいたいと思っています」
「現実的には、すべてのコースで強さを発揮して全戦優勝というのは難しいでしょうけど、レッドブルとは、ここで勝たなきゃいけないよね、というコミュニケーションは十分にできています。その他のレースでも最低限表彰台には立たなければなりません。このバランスをしっかりと取って、すべてのレースでいい結果を残していきたいと思います」
カテゴリー: F1 / ホンダF1 / レッドブル・レーシング / F1バーレーンGP / スクーデリア・アルファタウリ
2015年のF1復帰から6年、119戦を経て、ホンダF1は今週末のバーレーンGPで最後のシーズン開幕を迎える。山本雅史マネージングディレクターは、これまでホンダとして”3つのステップ”を経てきたことで、今季の目標が揺るぎないものになっていると語る。
「ホンダにとっては今年が最終年ですから、できるだけ多く勝利を挙げてタイトル争いをしたいですね」と山本雅史は語る。
「我々は、ここまで大きく前進してきたと思います。まずは、マクラーレンと組んでF1に復帰して、そこでいいことも悪いこともたくさん学びました」
「2つ目のステップは、トロロッソと組めたこと。ここは、タイトル争いができる競争力を持ったパワーユニット(PU)を作るための準備期間のようなもので、チームから多くを学び、開発もかなり進めることができました」
「そして今、レッドブル、アルファタウリとともにタイトルを勝ち取る大きなチャンスが目の前に来ていると思います。少し時間はかかり過ぎたかもしれませんが、ここまで進歩し続けていて、素晴らしい6年間だったと思います」
この1年間は、新型コロナウイルスの影響を受けて、開発の時間が削られてしまった面はあるが、昨年のF1参戦終了発表以降、自分たちの持てるパフォーマンスをすべて発揮すべく、総力を挙げて取り組み、今季は新骨格のパワーユニット(PU)が投入される。
「もともと、コロナ禍以前は、2021年に新たなPUを投入する予定でしたが、コロナの影響で開発計画は2022年まで延期となりました。しかし、2021年末での参戦終了を発表したことで、再び今季からの投入に計画を変更したんです」
「コロナ禍で、2022年型の開発が数カ月間はストップしたのに、それを2021年に投入しようということで、かなりタイトなスケジュールになったのは事実です。Sakuraのエンジニアは、本当に頑張ってくれましたね」
「使える時間は限られていましたから、厳しい状況ではあったものの、我々には2015年から積み上げてきた知見がありますし、うちのエンジニアならやってくれると信じていました。このPUで出力が向上できると確信していたので、パワーの増したPUで戦うんだという強い思いで進めてきました」
こうした努力の末に完成した新骨格のPUだが、実際にコースへ出てうまく機能するのか、不安はつきものだ。バーレーンでのテストは3日間に限られており、問題が起きて走行を止めるわけにはいかない。山本雅史MDは、この3日間の内容が充実したことで、初期段階としては安心できたようだ。
「テストはいい感じで進んで、我々にとってはポジティブなプレシーズンになりました」
「もちろん、信頼性が第一ですが、パワーを向上させようとすればその代償として信頼性部分で負荷がかかります。だから、テストで信頼性の高さが見られたのはいいことですね」
「ライバルたちが開幕戦でどうなっているかは分かりませんし、予選とレースまで成り行きを見守る必要があります。でも、楽しみですね!」
今季はPUの変更だけでなく、レッドブル・レーシング、スクーデリア・アルファタウリともにドライバーラインアップも変わり、セルジオ・ペレスと角田裕毅が加入した。
「4人のドライバーそれぞれの強みや特長があるので、一緒に戦うのが楽しみです」
「もちろん、昨年ともに戦ったアレックス(アルボン)もとてもいいドライバーで、才能豊かですが、ペレス選手は経験豊富ですし、力強いドライバーがチームに2人揃うことで、好結果が期待できると思います」
「そして、アルファタウリのパフォーマンスも楽しみにしています。ピエール(ガスリー)は経験を積んで成熟した感があり、昨年示してみせたようにとても強いドライバーになったと思います」
「裕毅はルーキーですが、僕らはあまりそう思っていません。とにかくレースに集中しているし、ここまでいいパフォーマンスを見せてくれています」
「まずは、今週末のレースで完走してくれることを願っています。F2とは違うとはいえ、彼の速さやブレーキングでの強さを見られるはずですし、いくつかいいオーバーテイクを決めてくれるんじゃないかな」
「ホンダは日本で生まれた企業ですから、当然、裕毅の存在は特別なものがあります。おひざ元である日本のモータースポーツファンの皆さんも本当に喜んでくれていますよね。日本人ドライバーをF1のグリッドに送り出せるというのは誇らしいですし、小林可夢偉選手以来7年ぶりとなるわけですから、彼のレースにはとてもワクワクしています」
角田裕毅のデビューには、山本雅史MDだけでなく、世界中のレースファンが注目している。昨年はコロナ禍の影響で鈴鹿でのグランプリが中止の憂き目にあった日本のファンにとってはなおさらで、10月の日本GP開催を心待ちにしていることだろう。
「もちろん、鈴鹿でレースができることを願っています。前回の日本GPではメルセデスが優位でしたが、我々も鈴鹿で強さを発揮できるマシンを目指してきました。マックス、チェコ(ペレス)、ピエール、裕毅は、全員日本のファンの前でいいレースができるはずですし、いい結果をお見せしたいですね」
ホンダとしての参戦は今季限りとなりますが、来年以降、PU技術はレッドブルへと引き継がれる。F1マネージングディレクターとして、どう捉えているのだろうか。
「レッドブルと大筋の方向性では合意していますので、今は来年以降、ホンダがどうサポートをしていけるのか詳細を詰めているところで、その部分は引き続き協議中です」
「個人的には、来年からも我々が作ってきたものを使ってもらえるということでとてもうれしいです。ホンダとしても競争力のあるPUを提供することでレッドブルがチャンピオンシップを争えるようにサポートしていきたいと思っています。それがきちんとできれば、本当に素晴らしいことですよね」
「マシンやエンジンにHondaのロゴが出ることはありません。ホンダのPUを搭載したマシンを外から見ることになるのは複雑な気分になるでしょうね。マシンの心臓部はホンダなのに、ホンダのクルマとは言えないわけですから」
しかし、ホンダとして戦う時間は、まだ1年間残されています。2015年からの挑戦を締めくくるに相応しい戦いをすべく、山本MDは自信をにじませる。
「昨年の反省は、最初の3連戦であまりポイントを獲得できなかったことにあります。ホンダとしては序盤の数戦で絶対にミスをしてはいけませんし、特にマックスとチェコにはできる限り多くのポイントを手にしてもらいたいと思っています」
「現実的には、すべてのコースで強さを発揮して全戦優勝というのは難しいでしょうけど、レッドブルとは、ここで勝たなきゃいけないよね、というコミュニケーションは十分にできています。その他のレースでも最低限表彰台には立たなければなりません。このバランスをしっかりと取って、すべてのレースでいい結果を残していきたいと思います」
カテゴリー: F1 / ホンダF1 / レッドブル・レーシング / F1バーレーンGP / スクーデリア・アルファタウリ