ホンダF1首脳 「考えていた以上にメルセデスの進歩が大きかった」
ホンダF1のマネージングディレクターを務める山本雅史が、2020年のF1世界選手権を振り返るとともに、アルファタウリF1として挑む最後のシーズンとなる2021年への意気込みをHonda Racing F1の公式サイト語った。

チャンピオンに届かず、悔しい結果に
「我々のパフォーマンスについては、レッドブルとコンストラクター2位を獲得したものの、チャンピオンシップを獲るという想いで臨んだシーズンであることを考えると、悔しい一年になったと言わざるを得ません」

「2019年シーズン終了後はもちろんですが、コロナ禍でレースを開催できないときでも研究所のエンジニアやチームはその時々でのベストを尽くし、我々としても自信を持って7月のオーストリアでの開幕戦に臨みましたが、ふたを開けてみれば、メルセデスに対して総合力で対抗できないという結果になりました」

「もちろん、我々もシーズンを通してパッケージとして胸を張れるだけの進歩を遂げましたが、自分たちが考えていた以上にメルセデスの進歩が大きかったというのが実際のところだと思います。昨年末には彼らの背中が見えたと思っていただけに、結果として大きく水をあけられてしまったことは非常に悔しく思っていますが、同時に2014年から6連覇していても驕ることなく進化を続けた、王者メルセデスの慢心なき姿勢と組織としての強靭さは、敵ながら素晴らしいと感じています」

パフォーマンス面での進化
「一方で、ホンダとしては2004年以来のコンストラクター2位を獲得したということも事実であり、着実な前進を示せた部分もあったと感じています」

「メルセデスの強さが際立ったシーズンのなかでも、フェルスタッペン選手のF1 70周年記念グランプリでの勝利や、ガスリー選手のモンツァでの初優勝、そして最終戦のフェルスタッペン選手のポール・トゥ・ウインなど、いくつか印象的なシーンを残すことができました」

「どれもそれぞれに特別で、色々な想いがありましたが、特にガスリー選手の勝利は皆さんと同様にとても喜ばしいものでした。彼自身の初勝利、アルファタウリにとってはホームレースでチーム史上12年ぶり2回目の優勝、我々ホンダにとっても彼らとの50戦目の記念レースであったなど、一番勝ってほしいタイミングで勝ってくれたような気がしています」

「ガスリー選手はスーパーフォーミュラ時代から合わせるとホンダとは4年の歴史がありますし、彼と一緒にF1で勝利を挙げられたのはことさら特別な気持ちでした。ここまで彼自身様々なアップダウンがありましたし、それをずっと近くで見てきただけに、心からおめでとうと感じました」

「ホンダにとっては、PUマニュファクチュラーとして、現行のハイブリッドレギュレーション下で、2チームと勝利を得た初のメーカー、という記録も作ることができ、その部分についても感謝しています。トロロッソ(現アルファタウリ)との2018年のパートナーシップ開始時を想うと、一緒にすごい進歩を遂げてきたなと感じますし、本当に感慨深いものがあります」

ホンダF1の歴代記録と比べてみると
「フェルスタッペン選手については今年2勝を挙げており、それも合わせてシーズン合計で11回表彰台に上がっています。実はこの数字は、ホンダドライバーとしては1988年のプロスト選手の14回、1991年のセナ選手の12回に次ぐ歴代3位タイの記録になります」

「勝利数こそ及びませんが、シーズンのレース数がほぼ同じ状況で、ホンダエンジンがF1界を席巻した黄金時代の多くのドライバーの記録を、今年マックス選手が上回ったことは、少し地味ながらも誇りに思っていい部分だと感じています。もちろん、これはマックス選手が歴史に名を残すレジェンドドライバーに負けない才能を持っているからこそ成し遂げられた記録であることは、言うまでもありません」

「もう一つ、表彰台関連の話では、今年の第2戦シュタイアーマルクGPから第12戦ポルトガルGPまで、ホンダとして11戦連続で表彰台を獲得することができました。これもホンダとしては1990年の13戦連続、1987年の12戦連続に次ぐ歴代3位タイの記録です。マックス選手が表彰台に上れないときでも、アルボン選手やガスリー選手が記録をつないでいってくれたのでここまで数字を伸ばせており、ホンダのPUを積む2チームが力を見せた上でたどり着いた記録だと感じています」

「偉大な先輩方が作った第2期の成績を一つでも上回りたいという気持ちは常に持っているので、エミリア・ロマーニャGPで記録が途絶えたときには悔しい気持ちも感じましたが、この記録もマックス選手の表彰台回数と同じく、我々の着実な進歩を示す数字として前向きにとらえています」

「もちろん、レースは勝つことがすべてですし、どれだけ記録を更新しても最終的にチャンピオンシップを獲得できなければ意味がありません。来年はこういった記録も更新しながら、チャンピオンを獲得できればそれ以上のことはないと思っています」

2021年でのF1プロジェクト終了について
「もう一つ、今年あった大きな出来事として、2021年限りでのホンダ F1プロジェクト終了のアナウンスについて触れないわけにはいきません」

「私はマネージングディレクターとして、サーキットでのレース運営や2つのチームとのコミュニケーションに携わるとともに、日本の本社サイドでも経営メンバーと直接話をする立場にあります。サーキットや研究所からF1を戦うメンバーの一人としては、レッドブル・アルファタウリと手を携えて一歩一歩前進を果たしてきて、ようやくトップの背中が見えたタイミングでプロジェクトをやめなければいけないことは、言葉にできないくらい悔しい想いです」

「ここまで地道な努力を重ねてきたSakuraやミルトンキーンズのメンバー、我々を信頼してパートナーシップを組み、今や素晴らしいパートナーになっている2つのチーム、そしてどんなときでもホンダを信じて熱い声援をくださるファンのことを想うと、本当に申し訳ないという言葉しか出てきません」

「一方で、自動車業界が大きな変革期にある中で、ホンダが企業として新たな一歩を踏み出さなくてはいけないタイミングにあることも事実です。今回の決定は、我々が持つ限られたリソースの中で、どうしたら優秀なエンジニアたちをホンダの未来のために有効活用できるのか、考え抜いた末での結論です」

「もちろん、ホンダにとって『レース』や『挑戦』がどれだけ大切なものであるかは、この会社で働いている人なら身に染みて理解している部分です。それだけに、今回の決定は誰にとっても非常に苦しいものだったと思っています。そのうえでも、我々が企業として前進するために必要な決断だったとご理解いただければ幸いです」

「どれだけ説明を尽くしても、皆さんをがっかりさせてしまったという事実は変わりません。せめて残された期間で最大限、皆さんを喜ばせられればと、今はそのように感じています」

「改めて、ホンダにとってF1は大切な企業文化であり、創業者の夢でもあります。だからこそ、ここまで様々なアップダウンがあった中でも、我々の目標であるチャンピオンを獲得するために挑戦を続けてきました。困難に打ち克つために挑戦をしていくのがホンダですし、実際にF1を通してここまでその姿勢を見せてこられたと考えています」

「来年いっぱいでその挑戦をやめなくてはならないことは本当に残念ではありますが、前向きにとらえれば、まだ我々にはチャレンジできる期間が1年間残っているとも言えます。今年目の当たりにしてきたように、ライバルの壁は非常に高いですが、彼らに打ち勝ってチャンピオンをとるために、HRD-Sakuraやチームのファクトリーでは今も休む間もなく開発が続けられています。私はホンダが持つ底力を信じていますし、レッドブルとアルファタウリも来年に懸ける想いは強く持ってくれていると感じています」

2021年は、皆さんとさらなる高みへ!
「ここからまた年が明けると、PUのファイアアップやシェイクダウン、ウインターテストなど、イベントが怒涛のように押し寄せ、そこからあっという間にメルボルンでの開幕戦に向かっていきます」

「2021年はさらなる高みを目指し、皆さんともっと多くの喜びや感動を共有できる年にするためにチャレンジを続けていきますので、最後まで応援をよろしくお願いいたします」

「また、この年末年始は、どなたにとっても例年とは少し違うものになると思います。どうか皆さんお身体にはくれぐれもお気をつけて、よい年をお迎えください。またサーキットで会いましょう!」

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カテゴリー: F1 / ホンダF1 / レッドブル・レーシング / スクーデリア・アルファタウリ