周冠宇 フェラーリF1で磨く実力「復帰への道はまだ続いている」
フェラーリのリザーブドライバーとして2025年シーズンを過ごしている周冠宇は、「F1復帰の夢はまだ終わっていない」と強調した。3年間のザウバー在籍を経てシートを失ったものの、フェラーリでの経験が自身をより強く成長させたと語る。

中国人初のF1フルタイムドライバーとして2022年にデビューした周冠宇は、2025年はレースシートを得られず、古巣フェラーリにリザーブとして復帰した。2014年から2018年までフェラーリ・ドライバー・アカデミー(FDA)に所属していたこともあり、チームとの再会は自然な流れだった。

フェラーリでの成長と「パドックに残る意味」
周冠宇は、F1の舞台に残ること自体が次のチャンスにつながると語る。

「異なる人々、異なるチームと働くことはとても重要だ。自分の能力を理解してもらえるから」と彼はPlanetF1.comのインタビューで語った。

「フェラーリに来たとき、僕のことを知らない人が多かった。でも、エンジニアたちは僕のデータ分析やフィードバックを高く評価してくれた。F1パドックに残ることは、自分がどんなドライバーかを知ってもらうために必要なんだ。チームが変われば見方も変わるし、それが次のチャンスにつながる」

現在はフェラーリでシミュレーター開発やテストを担当しながら、複数のチームと将来的な可能性についての話を続けているという。

「僕たちはいくつかの人たちと話をしている。フェラーリでの役割に集中しながらも、いつでも声をかけてもらえるようにしておくことが大事だ」

「2026年に向けてレギュレーションが変わる来年は特に重要な1年になる。多くのドライバーの将来が不確定だからこそ、そこにチャンスがあると思っている」

TPCテストで磨く2026年型F1への理解
周冠宇はフェラーリの2026年型車シミュレーター開発に深く関わっており、すでに新レギュレーション対応マシンの挙動を体得しつつある。また「旧型車テスト(TPC)」としてSF-23をドライブし、6月にはSF-25でピレリテストにも参加している。

「TPCは本当に重要だ。シミュレーターだけでは分からないことが多い。実際にクルマに乗ることで初めて理解できる部分がある」と語る。

「フェラーリでは、実車とシミュレーターの差がどんどん縮まっていて、今年の初めから今までに大きく進化した。3月からすでに2026年車の開発プログラムを始めていて、毎週のようにセッションを行っている。これによって次の2年に向けて必要なことを理解できているんだ」

周冠宇 スクーデリア・フェラーリ F1

ザウバー時代の葛藤と“やり残した仕事”
3年間過ごしたザウバーでは、チームの変化に苦しんだと振り返る。

「最初の年は良かったし、クルマも競争力があった。でも、次の年には技術的なトラブルが多く、冷却システムの問題にも悩まされた。3年目にはエンジニア交代などもあって、自分のチーム体制をコントロールできなかった」と回顧する。

「それでも、毎年バルテリ(・ボッタス)との差を詰めていったし、1周の速さで彼から多くを学んだ。確実にドライバーとして成長できたと思う」

「ただ、F1ではまだやり残したことがある。僕は3シーズン戦ったけれど、まだ自分の力を完全に証明できていない。もう一度チャンスを得られれば、今度こそすべてを自分の手で整えて、結果を出したい」

分析:フェラーリで築く“第2のキャリア基盤”
2025年シーズンを通じて周冠宇は、フェラーリの技術文化に溶け込みながら、2026年レギュレーションに対応するドライバーとして存在感を高めている。ザウバーでの苦闘を経て、シミュレーターやTPCを通じた経験は確実に次の扉を開く糧となるだろう。

キャデラックF1のセカンドシートを逃したものの、彼を率いるグレアム・ロードンの人脈と、フェラーリでの実績の積み重ねは今後の再登場への伏線だ。フェラーリにとっても、2026年型マシン開発で得た彼の知見は貴重であり、将来的にアカデミー出身者が再びレースシートに返り咲く展開も十分にあり得る。

「僕はまだ終わっていない」──そう語る周冠宇の姿勢は、2026年以降のF1で再びグリッドに立つための確かな意志を示している。

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カテゴリー: F1 / 周冠宇 / スクーデリア・フェラーリ