2025年F1開発トレンド 「安価で即効」なアップグレードが主流

大半の場合、投入された大きな開発項目は、年初に十分早く取り組まれており、全く新しいマシンからリソースを大きく奪うことはなかった。
イタリアGPに向けて登場した数多くのモンツァ用特注ローダウンフォース・ウイングのようなものですら、ずっと前に準備されていたものだった。
しかし、より攻撃的なアプローチを取ったチームもあり、とりわけレッドブルとレーシングブルズはフロア開発を続けてきた。
忘れてはならないのは、フェラーリもまた、7月のベルギーGPで新しいリアサスペンション・レイアウトを投入することを選択したことだ。
だが、このような大規模開発は例外であり、F1が最終戦に向けて残りのフライアウェイを迎える今、開発の蛇口が完全に閉じられたと言うのは誤りだ。
実際のところ、チーム間の差が非常に小さいため、アップデートによるラップタイムのわずかな向上でも相対的に大きな利益を生む可能性がある。そこで「安価で気軽」なアプローチの傾向が現れている。
焦点は、時間も開発リソースもそれほど必要とせず、それでいて一定の前進を得られる可能性のある領域を活用することにある。
ザウバーのスポーティングディレクター、イナキ・ルエダは「通常のシーズンなら、『このレースでこのアップグレードを入れて、このレースで別のアップグレードを入れる』という形になる」と語った。
「だが今は、2025年に関してはほぼ開発が停滞している。つまり、これが2025年のクルマであり、信頼性に関して2つか3つのアップグレードがある程度だ」
「だが時折『これを試してみてもいいのでは?』というようなものが出てくる。しかし、例年のような計画的な開発はない」
この「これを試してみよう」という姿勢が表れているのが、チームがしばらく tinkering(微調整)を続けていると思われる領域、すなわちブレーキダクトである。

新しいデザイントレンド
夏休み明けのオランダGPで、2チームがここに手を加えたのは偶然ではない。
そのひとつがザウバーで、リアブレーキダクトのベーンを修正することを選んだ。
ルエダは「今は我々の主要な焦点を2026年にすべて移した」と説明した。
「だがCFDで得られるものもあるし、風洞試験を必要としない。あるいは過去に試してうまくいくか分からなかったものを、CFDで再試行できることもある。つまり手の届きやすい果実なんだ」
「大きな時間を費やすものではない。見れば分かるが、ブレーキドラム全体を作り直したわけではない。既存のブレーキドラムに付属品を追加しただけだ」
「だからコストキャップの観点からも、ブレーキドラム全体を作り直しているわけではなく、ただ追加しているだけだ。我々は基本的に既存のブレーキダクトにウイングレットを貼り付けているんだ」
もうひとつリアブレーキダクトを改良したのはアルピーヌで、こちらは2026年ルールへの切り替えを最優先するために今年の開発を積極的に停止したチームのひとつだ。
テクニカルディレクターのデビッド・サンチェスは「床のように高コストや高リソースを必要とするものを、本気で開発している人はいないと思う」と語った。
「だがブレーキダクトのような領域は、安価で迅速に開発や評価ができる」
「この種の開発はリアブレーキダクトのパネルに過ぎない。大きな部品ではない。設計時間や設計リソースも多く必要としない。だから『安価』だと言っている」
デビッド・サンチェスは「我々はバックグラウンドで常に人々が考え続けている。そしてアイデアが出て、それを迅速かつ容易にCFDで評価できれば、試してみる。そして気に入れば、レースカーに持ち込めるかどうかを見るんだ」と説明した。

強力な変化
ブレーキダクト開発が依然として魅力的である理由のひとつは、ここでの小さな改良が多方面にわたる利益をもたらす可能性があるからだ。
デビッド・サンチェスは「この領域は多くの面で強力だ。ひとつは直接的なダウンフォースのため。もうひとつは気流やホイールウエイクを操作する方法であり、これはフロアの性能に影響を与える」と語った。
「さらにタイヤ冷却への影響もあるかもしれない。だからすべてがうまく機能すれば、非常に生産的な領域なんだ」
ルエダも「この領域は多くの目的を果たす。フロアからのフローを逃す役割、ボディワークからのフローを逃す役割、そしてタイヤの熱を利用する役割だ」と付け加えた。
「タイヤの熱はもちろん接地面から来るが、ブレーキからも来る。ブレーキはタイヤの内側、ホイールの中にある」
「赤く輝くブレーキからのエネルギーができるだけリムを通して放射されないようにするのは非常に重要な作業だ。これらのウイングレットはその一端を担っている」

オープンマインド
明らかなのは、シーズン終盤のこの段階でも、各チームが2025年に向けたアップグレードのアイデアを完全に放棄していないということだ。
ただし、投入を決断するかどうかは、最小限のリソース使用で最大のリターンをもたらすかどうかにかかっている。
この状況は、接戦を繰り広げるミッドフィールド勢にとっても、フロントを争うチームにとっても同じだ。
マクラーレンですら、パーツ投入の流れが早くはないにせよ、思考のプロセスは続いていると語っている。
COOのピアーズ・シンは「我々は走るたびに学び、進化を続けている」と語った。
「2026年の課題が迫っているとはいえ、今年のマシンにさらなるパフォーマンスを加えることについて、思考を止めてはいない」
「それは我々にとっても、全チームにとっても非常に大きな課題であり、我々は今年から来年に向けて、リソースのバランスを現実的に考えている」
「日が経つごとに、来年の開幕戦はますます近づいてくるのだから」
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