エステバン・オコンとハースF1の関係悪化 陣営は開幕前から“離脱懸念”

スペインメディア『Motornoción』によると、ハースF1チームは将来性を重視してベアマン中心の開発体制へ傾き、オコン陣営は開幕前の段階で“シーズン途中離脱”の可能性まで懸念していたという。
小松礼雄の異例とも言える公開批判、オコンが訴えていたマシン特性への不満、そして後任候補として浮上する複数の名前――パドック内部で何が起きていたのかが徐々に明らかになってきた。
小松礼雄の公開批判が意味したもの
シーズン開幕前、小松礼雄がオコンを公然と批判したことは大きな波紋を呼んだ。近年ハースF1チームを立て直してきた小松礼雄は、バルセロナテスト後に次のように語っている。
「我々はもっと期待していました」
2025年、アルピーヌから加入したオコンはドライバーズランキング15位でシーズンを終え、ルーキーだったベアマンに3ポイント差で敗れていた。
さらに小松礼雄は「チームの誰もエステバンの結果に満足していません」とも発言した。
一般的にF1チームでは、批判は内部で行い、称賛は公の場で行うものだ。しかし小松礼雄は、あえて開幕前にオコンを表舞台で批判した。
「彼の相手はルーキーです。もちろん非常に優秀なルーキーですが、エステバンはF1で10年戦い、優勝経験も表彰台経験もありますので、我々はもっと期待しています」
「もちろん彼だけの問題ではありません。50対50です。ある時期には競争力のあるマシンを与えられなかった部分もありました」
「バクーのようなサーキットで、オリーからあれほど離されるとは思っていませんでした」
189戦を経験してきたオコンも怯まなかった。
「アヤオのコメントにはあまり驚かなかった」
このチーム代表による“公開説教”は、突然起きた出来事ではなかった。実際には、チームとオコンの関係悪化はかなり以前から続いていた。
開幕前から囁かれていた“途中離脱説”
それは単なる感情的な衝突や、一時的な苛立ちではなかった。バルセロナ以前の冬の段階で、オコン陣営の不満は極めて大きなものになっていた。実際、シーズンを最後まで戦えない可能性まで懸念されていたという。そして、まだ4戦しか終わっていない現在でも、その不吉な予想は現実味を失っていない。
では、なぜここまで関係が悪化したのか。問題は2025年シーズン中から始まっていた。
ハースF1チームは、21歳のオリバー・ベアマンを将来の中心と考えていた。そのため、開発方針は徐々にベアマン側へ傾いていった。チームに“お気に入り”のドライバーがいたわけではない。しかし、どちら側のガレージを軸にマシンを開発していくかという判断は存在していた。ベアマンのコメントはより重視され、英国人ドライバー側の意見に基づいて開発が進められていったという。
これが、オコン陣営の不満につながった。
“自分だけがロックしていた” オコンの不満
プレシーズン中、オコンはフラストレーションを隠さなかった。
「去年は12戦、13戦、14戦もの間、このフロントロックと不安定さに苦しんでいた」
「ガレージの反対側ではまったく違う状況だった」
「自信や、そのスタイルで運転できないという問題ではない。ブレーキへの圧力も、条件も同じだった。でも僕だけがロックしていた。もう一方では起きていなかった」
2025年最終戦アブダビGPでは、この対立構造を象徴するような出来事も起きている。
オコンはセットアップ変更後、突然ペースを取り戻した。Q3進出を果たし、予選ではベアマンを上回り、決勝では7位でフィニッシュした。
「何を変えたのか詳細は話さない。それはチーム内部のことだからだ。でも、何であれ、その変更によって突然マシンが生き返った。金曜は新人みたいな感覚だった」
「本来いるべき位置からコンマ5秒離れていた。でも土曜朝には、本来のパフォーマンスを発揮できるようになっていた」
一方、ベアマンはルーキーイヤーから高いパフォーマンスを発揮し続けていた。2025年メキシコGPでは4位を獲得し、ハースF1チーム全体が祝福ムードに包まれた。
それは、オコンにとって決定的な瞬間でもあった。彼はそこで完全に“脇役”へ追いやられてしまった。そして、その構図は現在も続いている。

後任候補として浮上する名前
最悪の場合、オコンがハースF1チームで今シーズンを最後まで戦えなかった場合、誰がその後任になるのだろうか。いくつかの名前が挙がっているが、現時点で決定的な存在はいない。
ブラジル人ジャーナリストのジュリアンヌ・セラソリは、フェラーリ・ドライバー・アカデミー所属のラファエル・カマラの名前を挙げている。ベアマンと同じくフェラーリ育成ドライバーであり、フェラーリ製パワーユニットを使用するハースF1チームとの関係性も背景にある。
また、長くリザーブドライバーを務めている平川亮も、有力候補の一人と見られている。トヨタがハースF1チームへ強く関与するようになったことで、日本人ドライバーへの追い風になる可能性もある。平川亮はすでにアルピーヌでフリー走行を経験しているが、一方でチーム内部には純粋なスピードやレースペースに疑問を持つ声もあるという。
そのため、もう一人のリザーブドライバーであるジャック・ドゥーハンにも注目が集まっている。今年2月3日に発表されたドゥーハン加入は、パドックでも驚きをもって受け止められた。“単なる控え要員ではなく、将来的にレギュラーへ昇格させるための契約ではないか”そう疑う関係者もいたという。
さらに、ベアマンがこのまま速さを見せ続ければ、フェラーリF1移籍説がさらに加速する可能性もある。そうなれば、ハースF1チームでは2席同時に空席が生まれる可能性すらある。
また、このカテゴリーで豊富な経験を持つ日本人ドライバーである角田裕毅も、トヨタにとって魅力的な存在となる可能性はある。ただ、現時点ではそこまで有力候補として名前が挙がっているわけではない。
“17対1”だけでは見えないもの
今回の問題は、単純なポイント差だけでは説明できない。ハースF1チームが誰を未来の中心に据えようとしているのか。そして、その過程で何が起きていたのか。そこに、この一件の本質がある。
ベアマンはフェラーリ育成の次世代候補として高く評価されている。一方のオコンは、豊富な経験を持ちながらも、チームとの関係を急速に悪化させていった。開幕前の段階から“途中離脱説”が囁かれていたという事実だけでも、この状況が異常であることは十分に伝わってくる。
カナダGP以降の流れ次第では、2026年シーズン最初のドライバー交代劇へ発展する可能性もありそうだ。
カテゴリー: F1 / エステバン・オコン / ハースF1チーム
