FIAが“直前撤回” F1オーストラリアGPのアクティブエアロゾーン騒動
2026年F1シーズン開幕戦オーストラリアGPの土曜日、アルバートパークでFIAが下した決定がパドックに大きな混乱をもたらした。

最終プラクティス(FP3)を目前に控え、FIAはアクティブエアロの「ストレートモード」ゾーンのひとつを突然削除。しかしチームとドライバーから強い反発が起こり、わずか1時間足らずでその決定を撤回するという異例の展開となった。

2026年の新レギュレーションでは、コーナーではダウンフォース重視の「コーナーモード」、ストレートでは低ドラッグの「ストレートモード」を切り替えるアクティブエアロが導入されている。アルバートパークでは当初、このストレートモードを使用できるゾーンが5カ所設定されていた。

しかしそのうちの1つ、ターン8出口から高速のターン9〜10のS字区間へ向かうセクションが問題となった。

FP3直前にアクティブエアロゾーン削除
週末前のシミュレーションでは問題ないと判断されていたが、金曜夜のドライバーズブリーフィングで一部ドライバーが安全面への懸念を提起した。特に他車の後ろを走行した場合、ダウンフォース不足によりクラッシュリスクが高まる可能性があるという指摘だった。

この懸念を受けてFIAは土曜朝、FP3開始の数時間前というタイミングで「ストレートモードゾーン4」を無効化するとチームに通知した。

しかしこの決定はチーム側にとって極めて大きな問題だった。金曜日の走行データをもとにセッティングを作り上げてきた各チームにとって、ゾーン削除はエネルギーマネジメントから車高、タイヤ圧まで大きな影響を与えるためだ。

あるチーム関係者はその状況をこう例えた。

「これはサッカーの審判がハーフタイムにゴールポストのサイズを変えるようなものだ」

ストレートモードが使えなくなることでマシンは高ドラッグ状態のまま長いストレートを走ることになり、バッテリー消費の増加やタイヤ荷重の変化が発生する。さらにダウンフォース増加によって車体が路面に押し付けられ、プランク摩耗が増えて失格のリスクが高まる可能性もあった。

FIAシングルシーター部門ディレクターのニコラス・トンバジスは、この決定が歓迎されないことは理解していると認めた。

「これはかなり大きな変更だ。チームはマシンのセットアップを調整しなければならない」

「彼らは金曜日とは異なる条件で走ることになる。だから不満を持つチームがいるのは確かだろう」

「しかし我々は安全を最優先にする必要がある。今週末にとってそれが最も責任ある判断だ」

F1 オーストラリアGP 国際自動車連盟

チームとドライバーの反発でFIAが撤回
しかしこの決定は、すぐにパドック全体の反発を招いた。チームとドライバーが連携してFIAに抗議し、ゾーン削除は不要だと主張したのである。

問題のセクションの危険性を最初に指摘したのは、アウディのガブリエル・ボルトレトだったとされる。ボルトレトは単独走行でも全開で通過するのが難しいと述べ、レースで他車の後ろを走ると危険になる可能性があると説明した。

ただし他の多くのドライバーはそこまで深刻な問題とは捉えておらず、ブリーフィング終了時点ではゾーン削除にまで発展するとは誰も予想していなかったという。

ゾーン削除の影響は非常に大きく、チームは車高、サスペンション設定、タイヤ圧、エネルギーマネジメントなどをすべて見直す必要があった。あるチーム代表は、事実上すべての準備を「ゼロからやり直す」ことになると語った。

またストレートモードが使えない場合、トップスピードが大幅に低下する可能性も指摘された。あるシミュレーションでは、ターン9進入速度がF3マシンよりも50km/h遅くなるという予測さえあったという。

こうした状況を受け、チームとドライバーは一致してFIAに決定の見直しを求めた。

そしてFP3開始まで1時間を切った段階で、FIAは方針を撤回した。

FIAは声明で次のように発表した。

「過去1時間にチームとドライバーから寄せられたフィードバック、およびチームから提供された追加分析を受け、アルバートパークのストレートモードゾーン4を削除する決定を撤回する」

「この修正は直ちに有効となり、ストレートモードゾーン4はFP3で使用される」

「FP3の走行中および終了後にさらなる評価を行う」

ダウンフォース設定がチームごとに差
今回の問題の背景には、チームごとの空力設定の違いもあった。

トンバジスによれば、このセクションを安全に通過できるダウンフォース設定を持っていたのはわずか4チームだったという。残りのチームではフロントダウンフォースが予想より少なく、想定していた安全マージンを満たしていなかった。

「11チームのうち約7チームがその問題を抱えていた」

「前輪のダウンフォース量が我々の想定より少なく、安全だと思われた設定が実際には安全ではなかった」

FIAは個別チームにセッティング変更を求めるという選択肢もあったが、短時間では現実的ではないと判断した。

「この影響はすべてのマシンで同じではない」

「しかし短時間で『このチームは変更しなければならないが、他は不要』という明確な基準を作ることはできなかった」

結果として今回の騒動は、2026年F1の新技術であるアクティブエアロがいかにセッティングと戦略に大きな影響を与えるかを象徴する出来事となった。シーズン開幕戦の週末は、予想外の混乱とともにスタートすることになった。

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カテゴリー: F1 / F1オーストラリアGP / FIA(国際自動車連盟)