アウディF1代表 「マックス・フェルスタッペンに我々のマシンを運転してほしい」
アウディのチーム代表ジョナサン・ウィートリーはすでに、他チームより何十周も先の未来を見据えている──その野心は大胆そのものだ。4度のF1世界王者マックス・フェルスタッペンをアウディに招くという、極めて明確なターゲットを口にしたのだ。

アウディは来季、ザウバー運営体制を完全に掌握し、2026年の大規模レギュレーション変更とともに正式にF1へ参入する。

独自パワーユニット開発、次世代に向けた長期計画など、アウディは“全面的な変革”を狙っている。その最終到達点として、ウィートリーはF1最大のスターを迎えたいと明言した。

友情を背景にした野心
水曜日、ミュンヘンで行われたアウディの2026年F1コンセプトデザイン発表会で、ウィートリーはオランダ紙『De Telegraaf』に対し、フェルスタッペンを将来構想に含めるかどうか問われ、飾らずこう答えた。

「はい、マックス・フェルスタッペンに我々のマシンを運転してほしいと思っている」

アウディはすでに2026年のドライバーとしてニコ・ヒュルケンベルグとルーキーのガブリエル・ボルトレトを確保している。しかし、ウィートリーは自身の野心がその枠で終わるものではないと考えている。フェルスタッペンは2028年末までレッドブルとの契約を結んでいるが、各チームは何年も先を見据えて動き出している。

「それを望まないチーム代表がいるだろうか?」

これは“リップサービス”ではない。ウィートリーはフェルスタッペン本人、その父ヨス、そしてマネージャーのレイモンドと長い信頼関係を築いてきた。

「私は長い間、マックスと友人でいられるという幸運な立場にある。同様に彼の父ヨスとも、マネージャーのレイモンドともね。友情というのは、常に正直であり、築いた信頼を裏切らないことで育まれるものだ」

「だが今の段階でフェルスタッペンとアウディのF1シートを直接結びつけるほど、その友情が十分だとは思っていない」

つまり──ドアは開いているが、タイミングが合う必要があるということだ。

争奪戦は避けられない?
もちろん、2028年より前にフェルスタッペンを狙うチームはアウディだけではない。メルセデスはすでに来年にもアプローチを再開するとみられ、トト・ヴォルフは折に触れてフェルスタッペンへの賛辞を口にしている。

アストンマーティンもまた、静かに準備を進めている可能性が高い。ローレンス・ストロールは施設や人材へ大規模投資を続けており、「世界を獲りにいくパッケージ」を構築している。フェルスタッペンが耳を傾けたくなる要素は揃いつつある。

そう考えると、アウディが初期ラインナップを固めたときの状況とは比べものにならないほど、将来の“移籍市場”はカオスを迎えるだろう。

マックス・フェルスタッペンとジョナサン・ウィートリー(アウディF1代表)

アウディの“長期戦略”
それでもウィートリーは焦らない。アウディは2030年までに世界選手権争いへ加わるという長期目標を掲げている。それは、レッドブルでの成功を重ねたフェルスタッペンが「新たな挑戦」を求めるタイミングと一致する可能性もある。

今のウィートリーの戦略は明快だ──信頼を築き、競争力を築き、フェルスタッペンが“いつか帰って来たくなる環境”を築くこと。

楽観的に聞こえるかもしれない。しかし、ウィートリーの言葉どおり、野心こそがアウディがF1の勢力図を変えようとする上で不可欠な燃料なのだ。

アウディF1の本気度:なぜウィートリーは“フェルスタッペン指名”を公言したのか
アウディはF1参入前から人員、設備、PU開発に前例のないレベルの投資をしており、ウィートリーの発言はその延長線上にある。「大物を獲りに行く姿勢」そのものが、ブランド価値の演出と長期的な信頼構築につながるからだ。

■ ポイント整理
・アウディは2030年のタイトル争いを目標に掲げる超長期戦略
・フェルスタッペンは2028年までレッドブル契約
・ウィートリーはフェルスタッペン陣営と長年の強い信頼関係
・メルセデス、アストンマーティンも“獲得レース”に参戦見込み
・現段階での明言はアウディの本気度を示す“メッセージ戦略”

長期的な戦力図が流動化する2026〜2030年のF1において、アウディが早い段階で“主役級ドライバーを本気で迎える気がある”と示したことは、ライバルチームにも強いシグナルとなる。

フェルスタッペンが本当にアウディへ向かうかは別として──アウディがF1の勢力図を本気で変えようとしているのは、間違いない。

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カテゴリー: F1 / アウディ / マックス・フェルスタッペン