エイドリアン・ニューウェイの挑戦 アストンマーティン・ホンダF1の現在地

だが、その中心にいるのはエイドリアン・ニューウェイだ。かつてホンダを世界王座へ導いた設計者はいま、再び困難なプロジェクトの舵を握っている。アストンマーティン・ホンダF1の「現在地」を整理する。
苦しい船出となった2026年テスト
バーレーンでのプレシーズンテストは、アストンマーティン・ホンダにとって厳しい内容となった。走行距離は限られ、ストップも発生。開幕前から懸念が広がる形となった。
特に印象的だったのは、マシンを振り返るフェルナンド・アロンソの姿だ。2015年のマクラーレン・ホンダ時代を想起させる光景に、不安の声も少なくなかった。
歴史を振り返れば、このようなスタートから短期間で立て直すのは容易ではない。
ニューウェイという存在
それでも、アストンマーティンには大きな違いがある。エイドリアン・ニューウェイの存在だ。
ホンダが2017年末にマクラーレンと決別した後、再生の舞台となったのがレッドブルだった。2018年にトロロッソでの提携を経て、翌年から本格的にレッドブルと組むと、ホンダは急速に競争力を高めていく。
マクラーレンとの別れから4年後、そのエンジンはマックス・フェルスタッペンの手で世界タイトルを獲得した。
適切な環境と冷静なマネジメントがあれば、ホンダは結果を出せる。その経験を持つ人物が、いまアストンマーティンにいる。
開発遅れという現実
バーレーンテスト前に公開されたインタビューで、ニューウェイは2026年マシン開発がライバルより約4か月遅れて始まったと明かしている。
「2026年は、パワーユニット規則とシャシー規則が同時に変わる初めてのケースだ」
「完全に新しいルールであり、すべてのチームにとって大きな挑戦だが、我々にとってはより厳しい」
「AMRテクノロジーキャンパスはまだ進化の途中で、コアウィーブ風洞が本格稼働したのは4月。私は昨年3月に加入したばかりで、正直に言えば後れを取った状態でスタートした」
「26年型のモデルを風洞に入れられたのは4月中旬だった。他チームは2025年1月の空力テスト制限解除直後から取り組んでいたはずだ」
「結果として研究・設計サイクルは非常に圧縮された。マシンはぎりぎりで完成し、バルセロナのシェイクダウンに間に合わせるのに苦労した」
遅れは構造的なものであり、単純なミスではない。

ホンダ側の課題
ホンダ・レーシング・コーポレーション社長の渡辺康治も、早い段階で困難を認めていた。
「すべてが非常に難しいですが、最善を尽くしています」
2026年仕様の軽量バッテリー開発についても「簡単ではありません」と語り、これがテスト中のストップ要因のひとつとされた。
年明けには次のように述べている。
「正直に申し上げて、すべてが順調というわけではありませんので、多くの分野で苦戦していますが、乗り越えられない致命的な問題は起きていません」
「この状況の中で、私たちは静かに性能と信頼性の向上に集中しています」
「アストンマーティンはエイドリアンのビジョンを反映したマシン作りを望んでいますので、パワーユニット側としてはそれにどう適応するかを見極めることが次のステップになると考えています」
「競争力が高まり勝利に近づくのであれば、必要なことは何でもやります」
「率直に申し上げて、まだ時間が必要です」
「各コンポーネントを統合しながら性能向上を段階的に評価しています。成功するものもあれば、予想外にうまくいかないものもあります」
2021年末に正式撤退し、その後は技術支援にとどまっていたホンダにとって、2026年は事実上の再参戦だ。開発体制の再構築というハンディは避けられなかった。
問われるのは結束と時間
アンディ・コーウェルの退任により、チームとエンジンパートナーの関係管理におけるニューウェイの役割はさらに重要になる。
短期的な焦りや責任の押し付け合いは、関係を損ないかねない。必要なのは、パートナーとしての一体感と長期的視点だ。
2026年開幕時点で、アストンマーティン・ホンダF1は完成形にはほど遠い。
だが、ホンダを再生させた経験を持つニューウェイがいるという事実は、このプロジェクトにとって最大の希望でもある。
現在地は決して理想的ではない。
それでも、この挑戦がどこへ向かうのかは、まだ誰にも分からない。
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