アルピーヌF1 2026年に向けた“Xファクター方式”ドライバー選考を開始
アルピーヌF1チームは、2025年シーズンの開幕6戦を終えたタイミングでジャック・ドゥーハンに代わり、フランコ・コラピントを起用すると発表した。コラピントは今後5戦でピエール・ガスリーのチームメイトを務める予定で、今回の決定は2026年の新レギュレーションを見据えた布石とみられている。

スカイスポーツF1のクレイグ・スレイター記者は、今回の動きを英国の人気オーディション番組『Xファクター』になぞらえ、「ドライバー選考という名の公開オーディションだ」と評した。

「アルピーヌは来年に向けて非常に良いパッケージを準備できると考えている。エンジンはメルセデス製、シャシーもすでに高いレベルにあり、バックグラウンドには優秀な人材も揃っている」とスレイターはSky Sports Newsで語る。

「彼らは2026年、タイトル争いに絡める4チームのひとつになり得ると見ている。中には、マックス・フェルスタッペンのアルピーヌ移籍をささやく声もあるが、それは今のところ現実味に欠ける」

「アルピーヌはピエール・ガスリーを信頼しており、ジャック・ドゥーハンを評価してきた。そして、コラピントにはすでに旧型マシンで4度のテスト機会を与えている。育成ドライバーにはエストニア出身のポール・アロンもいる」

「今回の5戦を通じて、彼らは2026年に向けた最適なドライバーラインアップを見極めようとしている。コラピントが期待に応えられなければ、アロンにチャンスが巡る可能性もある」

「とはいえ、それはあまり現実的とは言えないだろう。コラピントが一定の結果を残せば、そのまま残留するはずだ。いずれにせよ、今回の選考は『Xファクター』的な形式、つまり競争を通じた評価プロセスであるのは間違いない」

財政的な要因も決定を左右
アルピーヌの今回の判断には、コラピントの強力な資金的支援が影響を与えたとみられている。

「彼には大きな財政的魅力がある。もし他の要素が拮抗していれば、非常に魅力的な選択肢となる」とスレイターは説明する。

「F1の世界は厳しく、冷酷で非情だ。そして今回の決断は、まさにフラビオ・ブリアトーレの“教科書”通りのものだ。彼は非情な決断を厭わない人物だ」

「今回の交代で最大の要因となったのは、財政的な圧力だと見られている。私が得た情報によれば、アルピーヌはウィリアムズからコラピントをローン移籍で獲得するために450万ユーロを支払った。この契約には、5年以内にウィリアムズへ戻る可能性があるという条項が含まれている」

「ただし、コラピントがレースに出場すれば、年間で最大2000万ユーロの資金がチームにもたらされる。その条件を満たすためにも、彼をマシンに乗せる必要があったということだ」

アルピーヌF1チーム コラピント ドゥーハンアルピーヌF1チームはジャック・ドゥーハンに代えて5戦でフランコ・コラピントを起用する。

チーム代表オリバー・オークスの辞任との関係は?
コラピントの昇格発表からわずか12時間後、アルピーヌはチーム代表オリバー・オークスの突然の辞任を発表した。

この2つの出来事に関連があるのかという問いに対し、スレイターは「必ずしもそうではないようだ」と裏事情を明かした。

「ファクトリーのスタッフがオークスの辞任を知らされたのは前夜のことだった。2件の大きな発表があるとだけ告げられ、辞任の理由は明かされていない」

「オークスはドゥーハンからコラピントへの交代に反対していたわけではないが、“なぜこのタイミングで?”という点には疑問を持っていた可能性がある」

「彼の中では“自分は本当にチーム代表なのか? 実質的な決定はすべてブリアトーレが行っているのではないか?”という疑念が芽生えたのかもしれない。役割の実態が当初聞かされていた内容と違っていた可能性がある」

「さらに、舞台裏で何らかの問題が進行していた可能性も否定できず、それが明らかになるのは今後になるだろう」

「このタイミングでの交代劇、決断の構造から察するに、オークスは“もはやブリアトーレが正式にチーム代表になるべきだ”と感じたのかもしれない。あるいは、ブリアトーレが対外的な顔となり、実務を担う新たな人物を据えるべきだという考えに至ったのかもしれない」

「実際、ダヴィデ・サンチェスやデイブ・グリーンウッドといった人物がファクトリーの統括を担い、ブリアトーレが政治的・経営的な役割に徹する体制も考えられる」

「いずれにせよ、オークスの辞任については現時点で正式な説明はなく、背後には別の要因があった可能性もある」

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カテゴリー: F1 / アルピーヌF1チーム / ジャック・ドゥーハン / フランコ・コラピント