フェルナンド・アロンソ、マクラーレンF1時代の“1000ユーロ事件”の真相

しかしこの“善意の行為”はチーム上層部の怒りを買い、スタッフが解雇されかねない事態に発展していたという。
突然のリスト作成依頼から始まった出来事
スレイドはスペイン紙『Marca』に対し、アロンソから「自分のクルー全員のリストを作ってほしい」と頼まれたのが始まりだったと語る。
「ニュルブルクリンクの初日にフェルナンドがやって来て、『僕のクルー全員の名前をまとめてくれないか』と言った。最初はなぜそんなことを聞くのか分からなかったが、燃料担当、タイヤ担当、部品係など、関係するスタッフをリストアップした」とスレイドは回想する。
「翌朝、フェルナンドが戻ってきて『このリストの人たちを裏に集めてくれ』と言った。週末の前に“自分の仲間たち”に話をしたいのかと思ったが、彼はこう言ったんだ――『僕はこれまでマクラーレンではやってこなかったけど、自分のクルーに感謝を伝えるのが好きなんだ』と。そして全員に封筒を配った。中には1000ユーロが入っていた」
マクラーレン上層部が激怒、返金を命令
ところがその後、チームマネージャーのデイブ・ライアンが険しい表情でモーターホームに現れ、スレイドに問い詰めたという。
「彼は『ガレージで何が起きた?』と聞き、『フェルナンドがクルーにお金を渡した』と答えると、『そんなことは許されない。全額返却しろ。返さなければ解雇だ』とまで言った」とスレイドは語る。
「一部ではフェルナンドがメカニックの忠誠心を“買おうとした”と受け取られたが、僕にはそうは見えなかった。むしろチームとの相性の悪さを象徴する出来事だったと思う。彼は謙虚で、僕は彼と働くのが好きだった」

確執の果てに別れ、そして再会へ
2007年シーズン、アロンソはルイス・ハミルトンと激しいタイトル争いを繰り広げる一方で、マクラーレン内部との対立が深まり、シーズン終了後にチームを離脱。翌年にはルノーへ復帰した。
その後2015年から2018年にかけてマクラーレンに再加入したものの、再び厳しい戦いを強いられた。
分析:アロンソの情熱とマクラーレン文化の衝突
この“1000ユーロ事件”は、アロンソの人間味あふれる感謝の表現と、マクラーレンの厳格な企業文化の衝突を象徴している。個人の感謝を直接伝えるアロンソらしい行為が、チーム内の規律重視の体制にとっては“秩序の乱れ”と映った。
結果的にこの誤解が両者の信頼関係を崩し、2007年の確執をさらに深める一因となった。今振り返れば、それはアロンソの情熱と、組織文化のすれ違いが生んだ“F1の裏舞台のドラマ”だったといえる。
Source: Crash.net
カテゴリー: F1 / フェルナンド・アロンソ / マクラーレンF1チーム