角田裕毅はなぜレッドブルF1から切られたのか メキースの決断と美辞麗句
レッドブルの“回転ドア”が、また一人の犠牲者を生んだ。今回その名を刻まれたのは角田裕毅だ。そしてチーム首脳陣は、この冷酷な決断を、できる限り柔らかなベルベットで包み込もうとしている。

日本人ドライバーである角田裕毅は、ハイリスクなシートシャッフルのシーズンを経て、レッドブルのトップチームに昇格したものの、そこで流れをつかみ切れなかった。ミルトンキーンズを拠点とするレッドブルは、最終的にそのプロジェクトに終止符を打った。

2026年はアイザック・ハジャーが起用され、角田裕毅には“慰め”とも言えるリザーブドライバーの役割が与えられることになった。

数字と結果が突きつける厳しい現実にもかかわらず、レッドブルF1チーム代表のローラン・メキースは、この決断を「内部の葛藤」と「胸が張り裂ける思い」という物語で包み込もうとしている。本当にそうなのだろうか。

苦い決断
角田裕毅を再び傍観者の立場へ戻すという決断について語る中で、メキースは、経営陣が深く苦悩した様子を描き出した。レーシングブルズ時代に角田裕毅を指導してきたフランス人指揮官は、この移行がいかに感情的な重みを伴うものだったかを強調した。

「非常に難しい決断だった」とメキースは説明する。

「オラクル・レッドブル・レーシングのセカンドシートは簡単なものではない。ドライブが難しいマシンだ。我々はもちろん、角田裕毅を支えるために、できる限りのことを試みてきた」

メキースによれば、この判断は衝動的なものではなく、あらゆる改善策を尽くした末に下された、苦渋の結論だったという。

「どこかの段階で、将来を見据えたときに、非常に難しい判断を下さなければならなかった。私は、そして我々は、角田裕毅がまたチャンスを得ることを願っているし、そうなると思っている。彼は来年、我々のリザーブドライバーになる」

誠実さのズレ 冷酷な現実と企業的な優しさ
しかし、メキースが“良い警官”役を少し熱心に演じすぎているのではないか、と疑問を抱く余地もある。

彼が「難しさ」を語る一方で、結果表はより単純な事実を示している。角田裕毅の今季は、ほぼあらゆる指標で見ても失望に終わった。

マックス・フェルスタッペンの手で8勝を挙げ、しばしばグリッド最前列に並んだマシンを駆りながら、ドライバーズランキング17位という結果は、シートの安定を約束するものではない。

シーズンのハイライトが、バクーでの6位入賞ただ一度という状況では、角田裕毅を外し、台頭する若手であるアイザック・ハジャーに替える判断は、「難しい決断」というより「論理的な必然」に見える。

パフォーマンスだけが通貨として通用するレッドブル・レーシングの世界では、本当に難しかったのは、ホンダにどうやって丁寧にその知らせを伝えるか、という点だったのではないかと思えてしまう。

角田裕毅 レッドブル・レーシング F1

わずかに残された扉
少なくともカメラの前では楽観主義者であるメキースは、これが角田裕毅にとって最終章ではないと強調した。

彼は、レッドブルのドライバープールが持つ不安定な歴史を引き合いに出し、復活の可能性は常に残されていると語る。2024年末、リアム・ローソンが一度昇格し、その後シートが角田裕毅に渡った、あの混乱を例に挙げた。

「何が起こるかは分からない」とメキースは続ける。「我々は過去にも、かなり素早いドライバー決断で知られてきた。

「ひとつ覚えているのは、2024年シーズン終盤だ。あのとき角田裕毅は非常に良い走りをしていた。それでも、リアムがレッドブル・レーシングに昇格することになり、彼にとっては非常につらい状況だった」

メキースは、その時期に見せた角田裕毅の回復力こそが、再び彼を救うかもしれない資質だと強調した。

「彼は、その冬を、いつかチャンスが来るのかどうか分からないまま過ごした。そして戻ってきて、当時のチームと共に、すべてを最大化し、星を狙うという目標を立てた。3レース後、彼はオラクル・レッドブル・レーシングのマシンをドライブしていた」

これは本当に“復活”への確信なのか。それとも道を見失ったドライバーに用意された、穏やかな着地点に過ぎないのか。その答えはまだ見えない。

今のところ、メキースは「ペースではなく状況によって脇に追いやられた才能」という物語を貫いている。

「だから、未来がどうなるかは分からない。ここにいる誰もが、そしてこの場を超えた多くの人が、挫折を経験してきたはずだ。時には、とても厳しい挫折もある」

「これは彼にとって挫折だ。しかし私は、彼の中には再びチャンスをつかむだけのものが十分にあると確信している」

角田裕毅

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カテゴリー: F1 / 角田裕毅 / レッドブル・レーシング