角田裕毅 レッドブルF1での挑戦:フェルスタッペンに学ぶ“細部”の重要性
角田裕毅は、レッドブルでの3レースを終えて好印象を残している。しかし、その適応プロセスはまだ完了しておらず、マックス・フェルスタッペンとの差は単なるスピードだけに留まらない。

現在の選手権ランキングでは、レッドブルは3位につけており、開幕からマクラーレンが築いてきた支配体制に唯一割って入ったチームとなっている。これは、フェルスタッペンが日本GPで挙げた勝利によるところが大きい。

とはいえ、レッドブルとって、シーズン序盤は決して順風満帆とは言えず、RB21は期待された性能を十分に引き出せていないのが現状である。

RB21の特性と角田裕毅の適応
RB20の進化型として投入されたRB21は、セットアップの自由度を拡大し、ドライバーにとって扱いやすいマシンを目指して設計された。しかし、実際には依然として扱いの難しいマシンであり、この複雑さが角田裕毅の適応を難しくしている。

角田裕毅は、開幕から2戦で結果を残せなかったリアム・ローソンに代わりレッドブルに昇格。デビュー戦となった鈴鹿では、即座にポジティブな兆候を示し、少なくとも下位に沈むことはないことを証明した。ローソンがオーストラリアと中国で苦戦し続けたのに対し、角田裕毅はRB21特有の挙動に一定の順応を見せている。ただし、適応プロセスはまだ道半ばである。

レッドブル側も、プレッシャーのかかる環境下での角田裕毅のパフォーマンスを高く評価しており、当面の目標はフェルスタッペンに勝つことではなく、一定のタイムギャップ内で走行し、ポイント圏内に入ることとされている。

なお、レッドブルに比べ、レーシングブルズ(VCARB 02)はダウンフォースが低く、ピークパフォーマスも劣るが、作動ウィンドウが広いため、マシンを限界まで引き出すのが容易だった。この違いが、角田裕毅にとって新たな課題となっている。

予選で見えた課題 - 小さなミスの積み重ね
角田裕毅の予選パフォーマンスを分析すると、いくつか興味深い傾向が見えてくる。たとえば、日本GPではQ2最終アタックでタイムを更新できず、バーレーンではターン10のヘアピンで、サウジアラビアではターン4立ち上がりでミスを犯している。

これらのミスは、RB21というマシンの限界を十分に理解できていないことに起因しており、以前ローソンが経験したものと類似している。特に、レッドブルのマシンはフロントエンドの反応性が非常に高く、これに慣れるには時間がかかる。レーシング・ブルズに比べ、ステアリング入力への応答性が格段に鋭いため、ドライバーに繊細なコントロールが要求されるのだ。

また、初期2戦においては角田裕毅とフェルスタッペンで異なるダウンフォースレベルを選択しており、角田裕毅は安定性重視で高めのダウンフォース設定を、フェルスタッペンはリアの軽さを活かしてトップスピードを重視したセットアップを採用していた。

角田裕毅 レッドブル F1

スピードだけではない差 - タイヤマネジメントと感覚の違い
角田裕毅自身も「自信の面ではまだ発展途上ではございますが、少しずつ成長していると感じております」と語っている。最大の課題は、タイヤのウォームアップと温度管理である。現行F1マシンはタイヤの温度依存度が高く、適正ウィンドウに持ち込む繊細な感覚が求められる。

フェルスタッペンは、走行開始直後のわずかな温度変化すら察知できるとされ、Q1からQ3にかけて気温が変化しても適応できる能力を持つ。一方、角田裕毅はまだそこまでのフィーリングを得られておらず、「完全にリラックスして運転できていないことが原因かもしれません」と自己分析している。

さらに、角田裕毅は「タイヤ温度管理やセットアップ作業、そしてエンジニアとの信頼関係といった小さな要素が、現在のF1においてタイムに直結してまいります」と指摘している。実際、フェルスタッペンとレースエンジニアのジャンピエロ・ランビアーゼの強固な関係性は、彼らの安定したパフォーマンスを支えている。

エンジニアとの連携構築も重要課題
角田選手はレッドブル移籍直後、「レースエンジニアとのコミュニケーションをより円滑にする必要がありません」と述べており、バーレーンでは冗談交じりに「今夜、エンジニアと一緒に食事に出かけて、関係をより深めたほうが良いかもしれません」と語った。

なお、角田裕毅は2024年にレーシングブルズでも担当エンジニアが変更されており、既にある程度理解し合った環境から、全く新たな関係構築を求められている。

レッドブルはこうした背景を踏まえ、角田の適応を加速させるために、RB19を使用したプライベートテストやシミュレーターセッションを積極的に実施し、実戦とは異なる環境での走行距離確保をサポートしている。

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カテゴリー: F1 / 角田裕毅 / レッドブル・レーシング