WRC:トヨタ 2022年 第1戦 ラリー・モンテカルロ 最終日レポート
1月23日(日)、2022年FIA世界ラリー選手権(WRC)第1戦ラリー・モンテカルロの競技最終日デイ4がモナコを起点に行われ、TOYOTA GAZOO Racing World Rally Teamのセバスチャン・オジエ/ベンジャミン・ヴェイラス組(GR YARIS Rally1 1号車)が総合2位で、カッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ハルットゥネン組(69号車)が総合4位で、エルフィン・エバンス/スコット・マーティン組(33号車)が総合21位でフィニッシュ。新世代のハイブリッドラリーカー、Rally1のデビュー戦で全車が完走した。

ラリー・モンテカルロの最終日は、モナコのサービスパークを起点に、デイ2が行われたエリアに近いフランス南部の山岳地帯で、2本のステージを各2回走行。その合計距離は67.26kmだった。天気は、結局ラリー期間中を通して非常に良く、最終日もステージは基本的にドライコンディションとなったが、一部に湿った区間も残っていた。

デイ2で首位に復帰したオジエは、通算9回目となるラリー・モンテカルロ優勝に向けて、順調に駒を進めていた。タイヤにダメージを与えそうなコーナーのインカットはできるだけ避けながらも、オープニングから2ステージ連続で2番手タイムを記録するなどして、総合2位のライバルとの差をさらに拡げた。しかし、1本目のステージの再走となるSS16で、オジエは左前輪にダメージを負い大幅にタイムロス。24.6秒あった差は消え、逆に9.5秒の遅れをとり総合2位に順位を下げた。さらに、最終ステージではジャンプスタートにより、10秒のペナルティタイムを課せられ、総合2位でラリーをフィニッシュ。優勝したセバスチャン・ローブ選手との差は10.5秒だった。

土曜日のデイ3で2本のベストタイムを記録し、クルマに対する理解を深め、自信をつけたロバンペラは、最終のパワーステージで今大会3本目のベストタイムをマーク。総合4位フィニッシュで獲得したポイントに、パワーステージ優勝によるボーナスの5ポイントを加え、ロバンペラはドライバー選手権3位につけた。また、デイ3でのコースオフにより大幅にタイムと順位を失ったエバンスは、最終日に良い走りを見せ、パワーステージでは2番手タイムを記録し総合21位でフィニッシュ。GR YARIS Rally1は、パワーステージで1-2を飾った。今回のラリー・モンテカルロでは全部で17本のステージが設定されたが、GR YARIS Rally1はそのうち9本でベストタイムを記録。トップカテゴリーラリーカーとして初めてハイブリッドシステムを搭載したRally1の初戦で、GR YARIS Rally1はパフォーマンスだけでなく、高い信頼性も証明した。なお、今回のラリー・モンテカルロには、TOYOTA GAZOO Racingヨーロッパの副会長に就任したばかりの中嶋一貴も参加。ハイブリッドラリーカーによる戦いを見守った。

TOYOTA GAZOO Racing World Rally Team Next Generationから、GR YARIS Rally1で出場の勝田貴元は、最終日に2本の3番手タイムを記録するなど、スピードアップに成功。前日のコースオフによる大きなタイムロスが響いたが、それでも総合8位まで順位を回復し、ポイントを獲得した。

豊田 章男 (チームオーナー)
セブ、惜しくも9度目のラリー・モンテカルロ優勝に届かなかったけど、新たな相棒のベンジャミンとのスタートは手応えがありそうでよかったです。我々が準備した新たな相棒”GR YARIS Rally1”とのドライブもフィーリングは悪くなさそうでした。持続可能なラリーを目指す新レギュレーションにより電動化された新たな相棒は「力は強いけど扱いには繊細な配慮が必要…」という感じだったかと思います。そんな”ちょっと気難しい奴”とも、セブはすぐに仲良くなってくれていたみたいでした。誰とでもすぐに仲良くなれるセブを尊敬します。

また、歴史と伝統ある世界ラリー選手権が、電動化・新燃料というカーボンニュートラルの実現に向けて進みだしたこと、FIAのリーダーシップ、準備に携わられたプロモーターなど関係された全ての皆さまに敬意を表します。他のドライバーたちも新しい相棒との相性に少し苦労していましたが、Day3では全てのSSで誰かがベストタイムを出してくれていました。毎戦毎戦、みんなとGR YARIS Rally1が、どれだけ仲良くなっていくか…今シーズンのWRCは新しい楽しみが増えました。ただ、サービスから静かに出ていくラリーカーの姿には、まだ、少し物足りなさを感じてしまいます(笑)。

今までのベース車はYARISでした。今年からはGR YARISです。「モータースポーツで勝つための市販車をつくろう」そう言いながら、久々に自分達の手でつくることができたスポーツカーです。今回、そのクルマがやっと本当の戦いの道を走り出しました。本当に嬉しいです。一緒にGR YARISをつくってきたみんなにもお礼を言いたいと思います。そのGR YARISから”GR YARIS Rally1”をつくったメンバーも相当の苦労をしたと聞いています。ヤリ-マティの下で心をひとつに頑張ってくれたフィンランドのみんな、そしてケルンからもサポートしてくれたメンバーにも、心からのお礼を言わないといけません。本当にありがとう!シーズンははじまったばかりですが、これからもよろしくお願いします。

ファンの皆さま、今シーズンもTOYOTA GAZOO Racing World Rally Teamを応援いただきありがとうございます。引き続き、応援よろしくお願いいたします。

トヨタ自動車株式会社 代表取締役社長 豊田章男

追伸
エルフィンと貴元がコースオフをした時、崖から一緒にクルマを引き上げてくれた沿道のファンの皆さま。SNSでその様子をみました。皆さまの力で2台は走り続けることができました。ありがとうございました!

ヤリ-マティ・ラトバラ (チーム代表)
あと少しで優勝できたはずだったので、もちろん少し残念です。しかし、これがモータースポーツであり、時に受け入れなければなりません。もっとも重要なのは、我々には勝つ力を備え、信頼性の高いクルマがあるということであり、これからのシーズンを戦う上で大きな力となります。セブは本当に良い仕事をしてくれましたが、残念ながら今日は運が味方をしてくれませんでした。カッレはラリーの序盤から比べると大きく進化し、今日はパワーステージで素晴らしい走りをしてくれました。また、エルフィンも素晴らしいパフォーマンスを見せてくれました。昨日は小さなミスがありましたが、パワーステージでは良い走りをし、お陰でチャンピオンシップを有利に進めることができました。優勝したMスポーツ・フォードにはおめでとうと言いたいです。彼らと再び優勝争いができて嬉しかったです。そして、信じられないような結果を残したローブ選手にもおめでとうと言いたいです。この週末は素晴らしいバトルが繰り広げられたので、ファンの皆さんはきっと楽しんでくれたはずです。

セバスチャン・オジエ (GR YARIS Rally1 1号車)
この特別なラリーに再び出場し、素晴らしい戦いをできたことは、私にとって大きな喜びです。今回は優勝することができませんでしたが、間違いなく全力で臨みましたし、ベンジャミンやチームと一緒になって戦いました。クルマは週末を通して素晴らしいパフォーマンスを発揮し、問題も起きなかったのは素晴らしいことだと思います。今日は運がありませんでしたが、それでも笑顔になれますし、戦いを存分に楽しみました。正直なところ、最終のひとつ前のステージで起きたことは、どうしようもなかったと思っています。1本目の走行ではインカットを避けていましたが、2本目は不可能でした。路面は非常にダーティーで、他のドライバーの走行ラインをフォローするしかありませんでした。優勝したセバスチャンとイザベルを祝福したいと思います。彼らは素晴らしいパフォーマンスを発揮し、とても激しい戦いになりました。WRCにとって、きっと良い週末になったはずです。

エルフィン・エバンス (GR YARIS Rally1 33号車)
ある意味、励みになる週末でしたが、昨日のような、大きな代償を払うミスをしてしまったことは本当に悔しいです。クルマのフィーリングは良かったのですが、このラリーでは僅かしかポイントを獲得できませんでした。今日のパワーステージでは非常に良い走りができたと思いますが、終盤のトリッキーなコンディションでは、ハイブリッドシステムの力を最大限に活用できなかったかもしれません。全体的に見れば、チームは本当に良い仕事をしてくれたと思います。テストはあまり多くできませんでしたが、今回のラリー期間中にポイントを掴むことができました。クルマは何も問題なく、本当に良く走ってくれたので、チームに心から感謝します。

カッレ・ロバンペラ (GR YARIS Rally1 69号車)
このラリー中に進歩することができて本当に嬉しいです。最初は何が起こっているのかよくわからなかったのですが、自分たちの力を信じてハードにプッシュし、良いペースで走れるようになりました。できることは全てやりましたし、最終的にはセットアップもだいぶ良くなり、クルマを理解できるようになっていきました。一緒になって頑張り、クルマを大きく変えてくれたエンジニアに感謝します。最終的にはとてもポジティブな週末になりましたし、パワーステージでも良い走りができました。次のスウェーデンでは出走順が早くなり、路面をクリーニングすることになりますが、できるだけ多くのポイントを獲得することが何よりも重要なので、この位置につけていることは嬉しいです。スウェーデンでトリッキーな路面を走ることになっても、ベストを尽くして戦う準備はできています。

ラリー・モンテカルロの結果
1 セバスチャン・ローブ/イザベル・ガルミッシュ (フォード PUMA Rally1) 3h00m32.8s
2 セバスチャン・オジエ/ベンジャミン・ヴェイラス (トヨタ GR YARIS Rally1) +10.5s
3 クレイグ・ブリーン/ポール・ネーグル (フォード PUMA Rally1) +1m39.8s
4 カッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ハルットゥネン (トヨタ GR YARIS Rally1) +2m16.2s
5 ガス・グリーンスミス/ヨナス・アンダーソン (フォード PUMA Rally1) +6m33.4s
6 ティエリー・ヌービル/マーティン・ヴィーデガ (ヒュンダイ i20 N Rally1) +7m42.6s
7 アンドレアス・ミケルセン/トシュテン・エリクソン (シュコダ・ファビア Rally2 evo) +11m33.8s
8 勝田 貴元/アーロン・ジョンストン (トヨタ GR YARIS Rally1) +12m24.7s
9 エリック・カイス/ペトル・テシンスキー (フォード フィエスタ Rally2) +12m29.2s
10 ニコライ・グリアジン/コンスタンティン・アレクサンドロフ (シュコダ・ファビア Rally2 evo) +13m41.3s
21 エルフィン・エバンス/スコット・マーティン (トヨタ GR YARIS Rally1) +23m10.5s

次回のイベント情報
WRC次戦は、2月24日から27日にかけて、スウェーデンで開催される「ラリー・スウェーデン」。雪と氷に覆われた森林地帯の未舗装路を走行するこのラリーは、今シーズン唯一のスノーイベント。ここ数年はトルシュビーを中心に行われていたが、安定した積雪を求め開催場所を北部のウーメオーに移動。ステージが一新されるため、誰にとって新しいラリーとなる。ラリー・スウェーデンは、金属製のスタッド(スパイク)が埋め込まれた特殊な雪道専用のタイヤを装着して走り、非常に高いグリップが得られるため、スノーラリーながらその平均速度は例年WRCの全イベントの中でトップクラスの高さとなる。

このエントリーをはてなブックマークに追加

カテゴリー: F1 / トヨタ / WRC (世界ラリー選手権)