トヨタ、WEC後半戦にハイダウンフォース仕様のTS030 HYBRIDを投入
トヨタは、2013年FIA世界耐久選手権(WEC)第4戦サンパウロ6時間レースから、最新のハイダウンフォース仕様のTS030 HYBRIDを投入する。これまでは第3戦ル・マン24時間レースに目標を絞り、高い最高速度を誇るローダウンフォース仕様で戦って来た。
長い直線を有するル・マンには、最高速重視のTS030 HYBRIDを持ち込んだが、期待通りに性能を活かせず2位に甘んじた。
データ分析によると、高速直線区間は優位に立つものの、高速コーナーなどの区間でやや安定を欠き、十分な性能を発揮出来ず、また、最高速度に関しても改善の余地があることが見つかっている。
こうした課題の解決に努め、さらにWEC後半5戦の行われるサーキットの特徴を分析した結果、ル・マンでの平均速度が240km/h近いのに対し、他のWECが戦われるサーキットでは、およそ180km/hということもあり、サンパウロからは最高速よりもダウンフォースを重視したハイダウンフォース仕様のTS030 HYBRIDを持ち込むことにした。
そのために見直した個所は、前輪を覆うボディカウル(ホイールアーチ)を含む車両前面の形状、エンジンカバー形状、リアウイング形状と多岐にわたる。こうしたダウンフォース向上の改良を施した上で、十分なスピードを保持する策として、既に理想的な燃焼効率を達成している現行の3.4リットルV型8気筒自然吸気ガソリンエンジンも、再度見直しを図り、ル・マン24時間という長時間耐久走行レース用から6時間のスプリントレース用へと最適化している。また、使用可能な回生エネルギーを全て使い切れるように、モーターのアシスト能力を高める努力も施されている。
一方、ドライバーが運転しやすいTS030 HYBRIDへの仕上げも忘れられてはいない。フル制動時や、コーナリング中に、アンダーステア/オーバーステア傾向にならない様に、コンピュータ制御の精度が上げられている。また、コーナーからの立ち上がりでフル加速(エンジン+モーター)をかけたときにも更にスムーズになるよう、ドライバビリティの向上が図られている。
サンパウロ6時間レースは、昨年、トヨタ・レーシングとTS030 HYBRIDが記念すべきポール・トゥ・ウィンでのWEC初優勝を達成し、参戦6戦中3勝の快進撃を開始したレースでもある。
今年は、ル・マン24時間で2位となり、WEC獲得ポイントの多い#8が参戦するが、アンソニー・デビッドソン、セバスチャン・ブエミ、ステファン・サラザンの3名のドライバーは、このインテルラゴス・サーキットを他のレースカテゴリーでも経験済み。中でもサラザンは、2007年のアメリカン・ル・マンシリーズにおいて、この反時計回りのサーキットでLMP1カーでのレースを経験している。また、デビッドソンとブエミは、今月初旬、ドイツ東部のラウジッツリンク・サーキットで、2日間にわたるTS030 HYBRIDのアップデート確認テストに参加し、1,500km余りの走行をこなしたが、仕上がりは上々である。
今年もトヨタ・レーシングとTS030 HYBRIDは、最新のハイダウンフォース仕様で、WEC後半戦での連勝に挑戦する。
木下美明 チーム代表:
ル・マンからしばらく時間が経ったが、この間に我々は力を蓄え、更にダウンフォースを得るべく空力パッケージの見直しを行うと共に、エンジンや電子制御にも改良を加えており、高い戦闘力を示せると確信している。アウディへの挑戦がタフなものに違いないことは承知しているが、昨年初優勝を飾ったインテルラゴス(ブラジル・サンパウロ)では、我々の改良が力を発揮し、再び勝利を勝ち取れるよう、我々は猛烈にプッシュしていく。
アンソニー・デビッドソン #8:
TS030 HYBRIDは、ル・マンの時から大きく変わり、よりダウンフォースが高められたが、これはインテルラゴスのようなグリップ重視のショートトラックでは、非常に重要なことだ。ラウジッツリンクでのテストは上手くいった。長い休暇の後に再びTS030 HYBRIDに乗ること、そして新しいパッケージの感触が良いことがうれしい。サンパウロはこれまで多くのタイトル争いがここで決せられた素晴らしい場所だ。昨年、チームはここでWEC初優勝も果たし、我々にとっても思い入れのあるサーキットだ。今年もその成功を再現するのは大きなチャレンジだが、我々には出来るはずだ。
セバスチャン・ブエミ #8:
TS030 HYBRIDでインテルラゴスを走ることに興奮を覚える。このサーキットで我々のハイブリッドシステムのパフォーマンスを経験できると思うと、じっとしていられない。ル・マンと比べ、インテルラゴスはかなり短いコースなので、周回遅れによるコース上の混雑がレースを左右する大きな要素となる。ここでは、我々のハイブリッドシステムによるアシストがまさにアドバンテージとなるだろう。ル・マンでの2位以降、まだ私は良い気分だし、初めてハイダウンフォース仕様を経験したラウジッツリンクでのテストも、ずっとポジティブなムードだった。これらの改良で我々はかなり前進していると思う。サンパウロで勝つのは容易ではないが、それが我々の目指すゴールだ。
ステファン・サラザン #8:
私はこれまでに、いくつかのレースカテゴリーでインテルラゴスを走ったことがあり、LMP1とLMP2で勝ったのは良い思い出だ。コースは平坦ではないし、長くてきついコーナーがあるが、走るのが楽しい。TS030 HYBRIDもいくつかアップデートされているので、このレースを本当に心待ちにしている。最初のフリー走行セッションは非常に忙しいだろうが、その中でこれらの変更点がどう感じられるかを試すのが、興味深いところだ。WECはル・マンの後一休みとなったが、私はアメリカでの3つのレースを戦い、忙しいスケジュールを過ごして来たので、体調は維持している。今はWECに戻るのが待ちきれない。
インテルラゴスでは8月30日(金)11:05(日本時間23:05)と15:40(同31日3:40)からの2回にわたって90分のフリー走行が行われ、31日(土)に10:20(同22:20)から1時間の最終フリー走行の後、25分間の予選が15:10(同1日3:10)から開始。6時間レースの決勝は9月1日(日)の正午(同2日0:00)にスタートが切られる。
カテゴリー: F1 / トヨタ / WEC (FIA世界耐久選手権)
長い直線を有するル・マンには、最高速重視のTS030 HYBRIDを持ち込んだが、期待通りに性能を活かせず2位に甘んじた。
データ分析によると、高速直線区間は優位に立つものの、高速コーナーなどの区間でやや安定を欠き、十分な性能を発揮出来ず、また、最高速度に関しても改善の余地があることが見つかっている。
こうした課題の解決に努め、さらにWEC後半5戦の行われるサーキットの特徴を分析した結果、ル・マンでの平均速度が240km/h近いのに対し、他のWECが戦われるサーキットでは、およそ180km/hということもあり、サンパウロからは最高速よりもダウンフォースを重視したハイダウンフォース仕様のTS030 HYBRIDを持ち込むことにした。
そのために見直した個所は、前輪を覆うボディカウル(ホイールアーチ)を含む車両前面の形状、エンジンカバー形状、リアウイング形状と多岐にわたる。こうしたダウンフォース向上の改良を施した上で、十分なスピードを保持する策として、既に理想的な燃焼効率を達成している現行の3.4リットルV型8気筒自然吸気ガソリンエンジンも、再度見直しを図り、ル・マン24時間という長時間耐久走行レース用から6時間のスプリントレース用へと最適化している。また、使用可能な回生エネルギーを全て使い切れるように、モーターのアシスト能力を高める努力も施されている。
一方、ドライバーが運転しやすいTS030 HYBRIDへの仕上げも忘れられてはいない。フル制動時や、コーナリング中に、アンダーステア/オーバーステア傾向にならない様に、コンピュータ制御の精度が上げられている。また、コーナーからの立ち上がりでフル加速(エンジン+モーター)をかけたときにも更にスムーズになるよう、ドライバビリティの向上が図られている。
サンパウロ6時間レースは、昨年、トヨタ・レーシングとTS030 HYBRIDが記念すべきポール・トゥ・ウィンでのWEC初優勝を達成し、参戦6戦中3勝の快進撃を開始したレースでもある。
今年は、ル・マン24時間で2位となり、WEC獲得ポイントの多い#8が参戦するが、アンソニー・デビッドソン、セバスチャン・ブエミ、ステファン・サラザンの3名のドライバーは、このインテルラゴス・サーキットを他のレースカテゴリーでも経験済み。中でもサラザンは、2007年のアメリカン・ル・マンシリーズにおいて、この反時計回りのサーキットでLMP1カーでのレースを経験している。また、デビッドソンとブエミは、今月初旬、ドイツ東部のラウジッツリンク・サーキットで、2日間にわたるTS030 HYBRIDのアップデート確認テストに参加し、1,500km余りの走行をこなしたが、仕上がりは上々である。
今年もトヨタ・レーシングとTS030 HYBRIDは、最新のハイダウンフォース仕様で、WEC後半戦での連勝に挑戦する。
木下美明 チーム代表:
ル・マンからしばらく時間が経ったが、この間に我々は力を蓄え、更にダウンフォースを得るべく空力パッケージの見直しを行うと共に、エンジンや電子制御にも改良を加えており、高い戦闘力を示せると確信している。アウディへの挑戦がタフなものに違いないことは承知しているが、昨年初優勝を飾ったインテルラゴス(ブラジル・サンパウロ)では、我々の改良が力を発揮し、再び勝利を勝ち取れるよう、我々は猛烈にプッシュしていく。
アンソニー・デビッドソン #8:
TS030 HYBRIDは、ル・マンの時から大きく変わり、よりダウンフォースが高められたが、これはインテルラゴスのようなグリップ重視のショートトラックでは、非常に重要なことだ。ラウジッツリンクでのテストは上手くいった。長い休暇の後に再びTS030 HYBRIDに乗ること、そして新しいパッケージの感触が良いことがうれしい。サンパウロはこれまで多くのタイトル争いがここで決せられた素晴らしい場所だ。昨年、チームはここでWEC初優勝も果たし、我々にとっても思い入れのあるサーキットだ。今年もその成功を再現するのは大きなチャレンジだが、我々には出来るはずだ。
セバスチャン・ブエミ #8:
TS030 HYBRIDでインテルラゴスを走ることに興奮を覚える。このサーキットで我々のハイブリッドシステムのパフォーマンスを経験できると思うと、じっとしていられない。ル・マンと比べ、インテルラゴスはかなり短いコースなので、周回遅れによるコース上の混雑がレースを左右する大きな要素となる。ここでは、我々のハイブリッドシステムによるアシストがまさにアドバンテージとなるだろう。ル・マンでの2位以降、まだ私は良い気分だし、初めてハイダウンフォース仕様を経験したラウジッツリンクでのテストも、ずっとポジティブなムードだった。これらの改良で我々はかなり前進していると思う。サンパウロで勝つのは容易ではないが、それが我々の目指すゴールだ。
ステファン・サラザン #8:
私はこれまでに、いくつかのレースカテゴリーでインテルラゴスを走ったことがあり、LMP1とLMP2で勝ったのは良い思い出だ。コースは平坦ではないし、長くてきついコーナーがあるが、走るのが楽しい。TS030 HYBRIDもいくつかアップデートされているので、このレースを本当に心待ちにしている。最初のフリー走行セッションは非常に忙しいだろうが、その中でこれらの変更点がどう感じられるかを試すのが、興味深いところだ。WECはル・マンの後一休みとなったが、私はアメリカでの3つのレースを戦い、忙しいスケジュールを過ごして来たので、体調は維持している。今はWECに戻るのが待ちきれない。
インテルラゴスでは8月30日(金)11:05(日本時間23:05)と15:40(同31日3:40)からの2回にわたって90分のフリー走行が行われ、31日(土)に10:20(同22:20)から1時間の最終フリー走行の後、25分間の予選が15:10(同1日3:10)から開始。6時間レースの決勝は9月1日(日)の正午(同2日0:00)にスタートが切られる。
カテゴリー: F1 / トヨタ / WEC (FIA世界耐久選手権)