ハースF1小松礼雄 トヨタ豊田会長と初対面で意気投合「堅苦しい会社だと思っていた」
ハースF1チームの小松礼雄代表が、トヨタとの業務提携のきっかけとなった豊田章男会長(モリゾウ)との初対面のときのエピソードを明かした。

トヨタとハースF1チームは10月11日(金)、車両開発分野などにおいて協力関係を結ぶことに合意し、基本合意書を締結したことを発表。トヨタは、F1において日本の若手ドライバーやエンジニア・メカニックが経験を積み、成長する環境を整え、自動車産業の発展に貢献することを目指す。

ハースF1チームは、現在F1参戦9年目のシーズン中で、9月のシンガポールグランプリを終え、10チーム中7位につけている。

「一番若いチームで、規模としても一番小さい」とは会見に臨んだ小松礼雄代表。これまで小さいながらもチームとして効率よく戦ってきたが、さらなる順位の押し上げを図る中で、今年の2月ごろに今回の話があったという。

『こういう大きな提携は、共通の目的に向かって一緒にやっていこうという『尊敬と信頼の関係』の上に成り立つものだと思っています。それがすごくあったので、『これだったらいけるんじゃないか』と思いました」

「豊田会長に会っていただけることになったので、カナダグランプリ(6月)の前に東京に来ました」

「そのとき、話してみて、初対面とは思えないと言うか、想いが本当に一緒なんです。すごく情熱のある方で、これからどうしてきたいか、日本の若い人たち、モータースポーツ界にどうやって夢を与えてあげたいか、想いがすごくにじみ出ていました」

「僕がハースF1チームを通してどうしていきたいか、ものすごく共鳴するものがあったので、これでもうゴーサインですよね」

「こういう提携って、やっぱり人と人のことだと思うんです。それがベースにまずあって、『やりましょう』ということになりました。TGRができるモノづくりはうちに今ないものです」

「逆にうちは、現代のF1の最新のノウハウはありますけれども、何といっても人数がいないし、設備も少ないし、ホースパワー(馬力)が足りないんです。それを与えていただけるのもあって、いろんな面で、一緒に協力して、チームを良くしていって、人を育てる」

「F1は最先端技術でやっていますけれど、何が重要かというと人なんです。モノをつくる、シミュレーションソフトウェアをつくるのも人ですし、使うのも人です」

「同じデータを見ても、判断する人によって、十人十色の結果になるわけです。人を重視して育てていこうと本当にお互いが思っており、次の世代に夢を与えられるような戦いができるチームにしたいという想いで、提携をしました」

モリゾンは「ハースさんは、言葉を選ばずに言えば、非常にコンパクトなチームだと思うんです。コンパクトなチームなのに、大恐竜(規模の大きいチーム)に向かって戦っているわけです」と語った。

「そういうチームであるがゆえに、学べる環境はものすごくあるんじゃないかと思い、今回の第一歩を踏み出させていただきました」

「ですが、これは時間のかかることだと思います。人が育つにも、世の中が変わるのも時間がかかる」

「ですから、皆様方には、まずモータースポーツに興味を持っていただく、そして、その最高峰であるF1に対してリスペクトしていただく。長期的な応援体制をぜひよろしくお願いします」

トヨタ ハース F1

旧知の仲のように
モリゾウと小松礼雄が初めて会ったときに共鳴したところ、情熱を感じた言葉、お互いに交わした言葉、あるいは、態度など、お互いにとって印象的だったことは?

モリゾウ:「本当に今日が初めて?」というのが正直なところです。「どこかで会った?」「どこかで話しましたっけ?」と思うぐらいでした。「初めまして」の一言もなかったと思いますね。小松さんも、僕も。会った途端にいろんな話が進んだみたいな感じでした。ずっと昔から、ずっと語り合っていた人と会えて、ちょっと先の話をしたというのが私の正直な感覚です。

小松礼雄:全く同じです。僕もお会いするまでは、豊田章男会長を知らないわけじゃないですが、実際には…。

モリゾウ:実際、僕はどんなイメージでした?

小松代表:トヨタって僕の中ではすごく堅苦しい、大きな会社だと思っていました。

モリゾウ:官僚的で嫌なヤツ?

小松礼雄:何をやるにも時間がかかってすごくイナーシャ(慣性モーメント。運動状態の変化を妨げる力)があって。先ほどおっしゃっていましたが、遠くから見ていると、F1を辞めた方。僕は「何で辞めるんだ!」と思っていたわけです。(モータースポーツの)文化をつくっていかなきゃいけないのに、日本のメーカーは行ったり来たりして。そういうことは本当にやめてほしいという話もしたんですけど、それが初対面で話せちゃう。心から打ち解けて、「なんでこういうこと(F1撤退)をやったんですか?」って素直に疑問を持って話せる。そんな感じだったんです。あり得ないですよね、普通に考えれば。本当にずっと知っているかのような感じで、すごく楽しい会話ができたので、感覚的にこういうインスピレーションや想いを持っている方と一緒にできるってなんて光栄なことなんだろうって本当に思いました。人生の出会いの一つで、こういう出会いがあって本当によかったなと思います。後はその出会いを最大限に生かすしかない、生かさないとダメですよね。

世界を相手に戦ってきた者同士、2人が意気投合するのは必然だったのかもしれない。「TOYOTA GAZOO Racing」が記されたレーシングカーは、Haasの母国となる次戦のアメリカグランプリ(10月)から走り出す。

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カテゴリー: F1 / トヨタ / ハースF1チーム