F1 トロロッソ・ホンダ バーレーンGP
トロロッソ・ホンダのチーム代表フランツ・トストが、昨年のF1バーレーンGPでの4位入賞を振り返った。

昨シーズンの開幕戦オーストラリアGPでトロロッソ・ホンダはポイント獲得を果たせずに終わり、次戦の舞台、バーレーンへと向かった。ロングストレートでの最高速に加え、日中は高い外気温への対応も求められる、厳しい開催地だ。

2018年の第2戦バーレーングランプリ。フリー走行は比較的順調に進んだものの、まさか予選で上位陣にトラブルが出るとは誰も予想していなかった。マックス・フェルスタッペン(レッドブル)がQ1でクラッシュして敗退し、ルイス・ハミルトン(メルセデス)はギアボックス交換が必要となってグリッド降格。これにより、予選6番手タイムをマークしたピエール・ガスリー(当時トロロッソ)は、翌日の決勝で5番グリッドからスタートすることになった。

レースでは、後方から迫ってくるハミルトンにパスされはしたものの、果敢に攻めたガスリーは、ダニエル・リカルド(当時レッドブル)、キミ・ライコネン(当時フェラーリ)のリタイアもあって4番手に浮上。そこからチェッカーまで安定した走りで順位をキープし、自己ベストリザルトとなる4位入賞を果たした。

この4位という結果は、トロロッソにとっても望外の成績でした。遡ること10年前、2008年イタリアGPでセバスチャン・ベッテルが優勝を果たして以来のベストリザルトだった。タッグ結成初年度だったトロロッソとホンダにとって、忘れられないレースとなった。

トロロッソ代表のフランツ・トストは、当時をこう振り返る。

「開幕戦は苦しいスタートでした。パワーユニットが原因ではなく、純粋に我々のマシンに競争力がなかったからです。だから、バーレーンでの結果は本当にうれしくて、チームにとって自信になりましたし、みんなのモチベーションも上がりました」

「バーレーンでは新たなエアロパッケージを投入したので、調子が上向くとは思っていました。ただし、トップチームからライコネン、リカルド、フェルスタッペンがリタイアしたことを忘れてはいけませんね。彼らが残っていたら、我々は7位だったわけですから」

「それでも、我々はチャンスをしっかりとモノにしたんです。普通に戦っても7位になれるパッケージという時点で喜ぶべきことですが、当然4位はさらにうれしいですよね(笑)」

4位という結果だけ見ると驚くべきことのように思えるが、レースウイーク中、ガスリーはすべてのセッションでトップ10入りしており、マシンの戦闘力自体が高かった。フランツ・トストは、ポイント獲得への自信はすぐに持てた一方で、ルーキードライバーがプレッシャーをどう乗り切るかが心配だったと語る。

「レースウイークが始まったとき、チャンスはあると感じていました。セットアップにも手ごたえがあり、オーストラリアよりもパフォーマンスは向上していましたから」

「ピエールは素晴らしい仕事をしてくれましたね。彼はバーレーンが好きなんですよ。彼自身が言っていましたが、GP2で好成績を残していたことなど、精神面のプラスはドライバーにとって重要です。過去に成功したサーキットで、お気に入りの場所だという感覚が、すべてをスムーズに進めてくれるんです」

「F1にデビューしたての若手ドライバーが、レースウイーク中ずっといいポジションに付けられたというのは、レースで速いだけでなく、さまざまな能力が秀でていることの証明になったと思います。ピエールは、予選でも十分に速かったので、5番グリッドを手に入れました」

「『ピエール、OK。ハミルトンはトラブルがあって降格になるから、君のほうが前だ。でも、すぐに迫ってくるだろう。君はプレッシャーを乗り越えなければいけないし、すべてをうまくまとめて、全力を尽くすんだ』と話しました。そして、彼はそれを見事に実行したんです。あの週末、ピエールはたとえようもないくらい力強い存在でしたね」

ピエール・ガスリーはQ3未経験でしたが、予選セッションでは常にトップ10以内につける快走を見せた。そんな状況で、フランツ・トストは、セッション中落ち着いて座っていられなかったと語る。

「私は100年くらいF1にいるけど、それでも緊張は収まらないよ!(笑)想像してみてほしいのですが、『いけるのか?ダメなのか?ミスはできないぞ…』と悩んでいると、どんどんプレッシャーは増していくでしょう?」

トロロッソもホンダも、翌日のレースに焦点を当てていたので、予選後も大喜びはしなかあった。すべてのチャンスをモノにしてここまでこぎつけたのですから、決勝でさらに大きな機会を逃すわけにはいかない。

スタート直前、フランツ・トストはチーム代表としてドライバーを落ち着かせ、チームにはマシンポテンシャルを最大限に引き出せるように指示をしたと語る。

「グリッド上で、ピエールにこう言ったんです。『我々にはいいペースがあるから簡単には抜かれない。だから、いいスタートを切るだけで十分だよ』とね。バーレーンという厳しい土地で、ロングストレートもあったのに、ポジションを守って4位入賞ですから、大成功です」

「もちろん、ピットではずっとナーバスになっていましたよ(笑)ラップ数を数えながら『ああ、まだ20周もある!』と感じていました。こうやって1周ずつ数えると、余計にレースは長く感じるのにね(笑)しかも、自分たちがいい順位にいれば、『次の周で終わってくれないか!』と感じてしまいますよね」

「表彰台まであと1つという位置でしたが、さすがにそこまで欲は起きませんでした。トップ3とは大きな差がありますし、上位勢3台のリタイアという幸運もあったので、4位のまま完走してくれればと願っていました。もちろん、3位の方がいいに決まっていますが、現実的に考えなければなりません。トップ3との差は開いていたし、それに迫るペースもありませんでした」

チェッカーフラッグが振られたときは、まるでお祭り騒ぎだった。トロロッソとホンダの全員で、ホンダが復帰以来の最高位になったことを喜んだ。先週のフェルスタッペンの表彰台獲得のような大盛り上がりだった。

「いろんな感情が沸き出てきましたよ。重要な結果が出たことに、みんな満足していました。チェッカーを見たときにはプレッシャーが消え去り、もはや興奮していませんでした(笑)」

「いつものことなんです。次のレースのことを考えると冷静になる。だから、レースが終われば感情も落ち着くし、普段の態度に戻ります。レース前とレース中は別人になりますけどね(笑)」

フランツ・トストは、当時この結果をかみしめるようなことはなかったが、1年が経った今振り返ると、ホンダが、トロロッソだけでなく将来的にはレッドブル・レーシングとの関係も始められるきっかけになったのではないかと感じているようだ。

「もちろん、トロロッソとホンダの取り組み方が正しいことを証明できましたが、それだけでなく、レッドブルに対してもいいアピールになったと思いますよ」

「ホンダとパワーユニット開発に取り組む計画は進んでいましたし、2019年にはホンダがレッドブルと組んで勝利を目指すことになりました。これによって、我々にも大きなメリットがあるんです。開発スピードは上がるし、リソースなどすべてが向上しますからね。そして、ホンダはオフシーズン中にすばらしい進化を成し遂げてくれました」

「シーズンが終わってみるまで結果は分かりませんが、いい方向へ進んでいますよ」

バーレーンは、チームにとって重要なシーズンの中でもハイライトとなるレースだった。こうした経験を経て、お互いについてさまざまなことを学んだので、トスト代表はオフシーズンの準備が少し楽に感じたそうだ。

このバーレーンのような結果を繰り返すのは簡単ではない。しかし、フランツ・トストは開幕戦でポイントを獲得できたこともあり、今年はより希望の持てるシーズンになるのではと考えている。

「ワクワクしているし、期待していますよ。いいパッケージがあると思います。競争力の高いマシンに加え、ホンダのパワーユニットもいいですし、ドライバーも強力です。(アレックス)アルボンのパフォーマンスには、いい意味で驚きました。期待はしていましたが、バルセロナテストからいい走りを見せてくれました」

「ダニール(クビアト)も素晴らしい仕事ぶりで、アレックス同様にレースでも予選でもポジティブなサプライズを見せてくれます。アレックスは、今年のルーキーの中でも一番の輝きを見せると思いますよ」

「あくまで私の考えだし、願望も入っています。現実的に考えると、もう少し時間が必要でしょう。この話を覚えていてもらって、シーズン後に答え合わせしましょう!(笑)」

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カテゴリー: F1 / トロロッソ / ホンダF1