スーパーGT 開幕戦:デビュー戦のGRスープラ GT500がトップ5を独占
2020 AUTOBACS SUPER GT第1戦『たかのこのホテル FUJI GT 300km RACE』の決勝レースが7月19日午後、静岡県の富士スピードウェイ(1周4,563m×66周)で行われた。心配された雨も降ることはなく、好天の下で2020開幕戦のレースが展開された。GT500クラスはNo.37 KeePer TOM'S GR Supra(平川亮/ニック・キャシディ)がポールポジション(予選1位)から逃げて、そのまま優勝。GR Supra GT500はデビューウインを飾った。GT300クラスもGR Supraをベース車とするNo.52 埼玉トヨペットGB GR Supra GT(吉田広樹/川合孝汰)が初優勝した。

開幕戦の決勝レースは午後3時にフォーメーションラップを開始。上空は雲が多いが晴れに近い状況で、前日の公式練習時とは打って変わって夏の汗ばむ陽気。そして66周、300kmのレースの火蓋が切られた。

スタートでトップに立ったのはポールポジションのNo.37 KeePer TOM'S GR Supra(平川亮/ニック・キャシディ)のキャシディ。予選 2位のNo.8 ARTA NSX-GT(野尻智紀/福住仁嶺)福住がそれに続く。その後ろでは予選3位のNo.36 au TOM'S GR Supra(関口雄飛/サッシャ・フェネストラズ)のフェネストラズとNo.100 RAYBRIG NSX-GT(山本尚貴/牧野任祐)の山本がTRG(第1)コーナーで激しいバトルを演じた結果、100号車が3位に浮上した。

一方、GT500隊列の後方、No.12 カルソニック IMPUL GT-R(佐々木大樹/平峰一貴)の佐々木とNo.64 Modulo NSX-GT(伊沢拓也/大津弘樹)の伊沢が100Rで接触するアクシデントが発生。12号車はコースアウトし、車体後部を大きく破損。佐々木はそのままクルマを降りた。一方64号車は走行を続けたが、左フロント周りにダメージを負ってピットに直行し、修復ののち3周遅れでレースに復帰した。このアクシデントで2周目からセーフティカー(SC)が導入された。SCは12号車の回収を待って、5周目終わりで退去。6周目からレースは再開された。

再スタートは8号車のGT500ルーキー福住がTGRコーナーでアウトから37号車に並びかけるが、37号車をドライブする元王者キャシディは一歩も引かずに8号車を退ける。その後、37号車は徐々に後続を引き離しにかかり、20周目には9秒ものリードを築き上げる。一方の8号車はペースが上がらず、12周目のTGRコーナーで100号車と36号車に相次いで抜かれると、No.38 ZENT GR Supra(立川祐路/石浦宏明)の立川にも先行を許して、5位に後退。25周目に所定のピットインを行い野尻に後半を託すことになった。

23周目には2番手争いが勃発。36号車のGT500ルーキーのフェネストラズがTGRコーナーでアウトから、100号車の元王者の山本に並びかける。そして続くコカ・コーラコーナーの進入で抜き去って2位に浮上した。36号車は29周目にピットイン。関口雄飛に交代した。100号車も30周目にピットに向かい牧野任祐にステアリングを託した。

トップの37号車は31周目にピットイン。キャシディから平川に交代し、暫定3位でコースに復帰。その後、ピットインしていないNo.3 CRAFTSPORTS MOTUL GT-R(平手晃平/千代勝正)の平手、No.19 WedsSport ADVAN GR Supra(国本雄資)がピットインしたため、37号車は再びトップに浮上した。この時、2番手の36号車(関口雄飛)とは、18秒8の大差がついていた。

ここまでは順風満帆に見えた37号車だったが、後方でGT300車両と8番手を走るNo.23 MOTUL AUTECH GT-R(松田次生/ロニー・クインタレッリ)の松田が第13コーナーで接触。スピンした360号車がコース上にストップしてしまったため、この処理で38周目に2度目のSCが導入された。なんとこれで37号車が築き上げたリードはゼロとなってしまう。

SCは42周目にコースから退去。43周目からレース再開となる。トップの37号車・平川と追う36号車・関口は、1秒前後で緊迫したバトルを展開する。その後方では、No.14 WAKO'S 4CR GR Supra(大嶋和也/坪井翔)の坪井がめざましい追い上げを見せる。まずは49周目の最終コーナーで38号車(石浦)のインをついて4位に浮上すると、50周終わりのホームストレートで100号車(牧野)をも抜いて3位に浮上。さらに38号車の石浦も51周目のコカ・コーラコーナーで100号車を抜き去って4番手。つづくNo.39 DENSO KOBELCO SARD GR Supra(中山雄一/山下健太)の山下も63周目の1コーナーで100号車を抜き去る。なんとレース終盤に来て、GR Supra GT500がトップ5を走行する状況になった。

 リスタート後は36号車に迫られたトップの37号車だったが、50周を過ぎたあたりから徐々に36号車を引き離す。60周を終えた頃にはその差は5秒となった。その後も平川はまったく後続を寄せ付けない走りで66周を走り切った。これでNo.37 KeePer TOM'S GR Supra(平川亮/ニック・キャシディ)が2020シーズンの開幕をポール・トゥ・ウインで飾った。

一方、2番手の36号車は終盤14号車の坪井の追撃にさらされ、64周目には0.6秒差にまで迫られたが、関口は最後まで坪井に付け入る隙を与えず。No.36 au TOM'S GR Supra(関口雄飛/サッシャ・フェネストラズ)は2位でフィニッシュ。TEAM TOM'Sとしては昨年の第3戦鈴鹿以来のワン・ツー・フィニッシュを達成。GR Supra GT500はデビュー戦でトップ5を独占して完成度の高さを見せた。

公式練習、予選と俊足ぶりを見せつけたHonda NSX GT勢だったが、No.100 RAYBRIG NSX-GT(山本尚貴/牧野任祐)が6位の悔しい結果に。7位にはNo.3 CRAFTSPORTS MOTUL GT-R(平手晃平/千代勝正)が入り、これがNISSAN GT-R NISMO GT500勢の最上位となった。

GT500クラス 優勝
No.37 KeePer TOM'S GR Supra
平川亮
「優勝できて、すごく嬉しいです。僕自身も去年からクルマの開発に携わってきましたがTOYOTA GAZOO Racingやブリヂストン、皆で苦労してきたのをよく分かっているから、その苦労がこうして実ってよかったです。でも、ニック(・キャシディ選手)も言っているように、シーズンはまだ始まったばかり。次回も今回と同じ富士だけど、今度はウェイトを積んでいるので条件が違ってくる。ウェイトは苦しいと思います。でも今回で優勝できただけじゃなく、その一方で課題も見つかっています。だからそれらに対処して、GR Supra GT500をもっともっと速いクルマに仕上げていきたいです。汗もかかずに勝てたように見えましたか? まぁ今日はエアコンが効きづらく集中して…、集中しすぎて汗をかかなかったのかもしれませんね(笑)。予選まではNSX-GT勢と互角だったと思いますが、決勝ではタイヤの選択が違っていて、それが僕たちには有利でしたね。同じブリヂストンなので、相手が履いているタイヤは分かっていて、2,3周踏ん張れたら、あとは引き離せる、と思っていました。一方、(同じTOM'S勢の)36号車とは同じタイヤだったので、シビアな戦いになりました。でもGT300車両とのかかわり方が自分たちの方が良かったみたいで、運にも味方してもらいました。これでウェイトハンディでは厳しくなりますが、次戦はその重い状況でもパフォーマンスを発揮できるよう、GR Supra GT500のポテンシャルを伸ばして行きたいです」

ニック・キャシディ
「今日は本当に完ぺきな1日になりました。予選ではポールポジションを獲ることができ、決勝ではポール・トゥ・ウインで、しかもベストラップもマークすることができたから。今の気分? スーパー・スーパー・ハッピーだよ。クルマを開発してくれたTOYOTA GAZOO Racingやクルマを仕上げてくれたTOM'S、そして素晴らしいタイヤを用意してくれたブリヂストン、皆の努力が今日の結果に結びついたんだと思う。でも、これで終わりじゃなくシーズンは始まったばかりだ。このペースでポイントを積み重ねていきたいね。ただ、今回はタイヤのチョイスで僕らが有利な面があったけど、NSX-GT勢とのバトルはこれからも続くと思います」

GT300 クラス優勝
No.52 埼玉トヨペットGB GR Supra GT
吉田広樹
「優勝できて素直に嬉しいです。この富士では、これまでにも勝てそうで勝てないレースが続いていました。それで、自分たちに足りないものは何だろうと考えるようになりました。今年はエンジニアもメカニックも全員、(埼玉トヨペットの)社員で揃えたんです。それに(デビュー戦の川合)孝汰が乗ることになって、ここに来るまでは優勝できるなんて思ってなかった。でも普段、ディーラーで車検整備などをやっていて、皆で集まって(タイヤ交換の)練習もなかなかできないから、タイヤ交換に関してはリスクがあると考えていました。それでテストの時からタイヤ無交換でいけないか考えるようになって、ロング(ラン)のテストを多くやってきました。今回選んだタイヤは最後の最後まで安定したパフォーマンスを発揮してくれました。ブリヂストンさんに感謝しています。65号車がピットインでタイムロスして遅れたようですが、それがなければ彼らとの勝負になっていたと思います。だから運も味方してくれたんじゃないかな? 個人的には自分の師匠である服部(尚貴)さんに、まだまだ足りないんですけど、(初優勝という形で)少しだけ恩返しできたんじゃないかな。それも嬉しかったです」

川合孝汰
「公式テスト富士から今日まで好調さを保ってきて、この結果に結びつけることができました。でも、それもこれも周囲の皆さんに支えてもらったからこその結果です。午前中の公式予選はQ1を担当させてもらって、がんばってQ2の吉田(広樹)さんに繋いだら、吉田さんが良いポジションにつけてくれました。決勝レースでも(デビュー戦の)自分にスタートを担当させてもらって。本当は緊張したかもしれないのですが、吉田さんに「がんばりすぎるなよ」と言われたことで少し緊張もほぐれていきました。去年まで前座のFIA-F4選手権に出ていたのですが、1回勝ってからそのあとは優勝することができなかったのに、今年はこうしてSUPER GTに出させてもらって…。チーム代表の平沼さん(埼玉トヨペット社長でレーシングドライバー)やメカの人たち、皆さんに感謝しています。決勝レースでも平沼さんがスポッター(状況指示担当)をしてくれて、前後の間隔やGT500が接近してきていることなどを、事細かに指示してくれたのも大きかったです。しかし何よりも大きな勝因は、やはりタイヤ無交換の作戦が上手くいったことだと思いますね」

2020年 スーパーGT 開幕戦 富士 結果
PoNoMachineDriverTireWH
137KeePer TOM'S GR Supra
TOYOTA GR Supra GT500 / RI4AG
平川 亮
ニック・キャシディ
BS
236au TOM'S GR Supra
TOYOTA GR Supra GT500 / RI4AG
関口 雄飛
サッシャ・フェネストラズ
BS
314WAKO'S 4CR GR Supra
TOYOTA GR Supra GT500 / RI4AG
大嶋 和也
坪井 翔
BS
438ZENT GR Supra
TOYOTA GR Supra GT500 / RI4AG
立川 祐路
石浦 宏明
BS
539DENSO KOBELCO SARD GR Supra
TOYOTA GR Supra GT500 / RI4AG
中山 雄一
山下 健太
BS
6100RAYBRIG NSX-GT
Honda NSX-GT / HR-420E
山本 尚貴
牧野 任祐
BS
73CRAFTSPORTS MOTUL GT-R
NISSAN GT-R NISMO GT500 / NR20B
平手 晃平
千代 勝正
MI
88ARTA NSX-GT
Honda NSX-GT / HR-420E
野尻 智紀
福住 仁嶺
BS
919WedsSport ADVAN GR Supra
TOYOTA GR Supra GT500 / RI4AG
国本 雄資
宮田 莉朋
YH
1024リアライズコーポレーション ADVAN GT-R
NISSAN GT-R NISMO GT500 / NR20B
高星 明誠
ヤン・マーデンボロー
YH
1123MOTUL AUTECH GT-R
NISSAN GT-R NISMO GT500 / NR20B
松田 次生
ロニー・クインタレッリ
MI
1216Red Bull MOTUL MUGEN NSX-GT
Honda NSX-GT / HR-420E
武藤 英紀
笹原 右京
YH
1364Modulo NSX-GT
Honda NSX-GT / HR-420E
伊沢 拓也
大津 弘樹
DL
17KEIHIN NSX-GT
Honda NSX-GT / HR-420E
塚越 広大
ベルトラン・バゲット
BS
12カルソニック IMPUL GT-R
NISSAN GT-R NISMO GT500 / NR20B
佐々木 大樹
平峰 一貴
BS


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カテゴリー: F1 / SUPER GT