F1シンガポールGP 2025年:マリーナベイ市街地コース&タイヤ解説
2025年F1 シンガポールGPが、10月3日(金)~10月5日(日)の3日間にわたってマリーナベイ市街地コースで開催される。公式タイヤサプライヤーのピレリが2025年のF1世界選手権 第18戦 シンガポールグランプリのタイヤについて解説した。

カスピ海の岸辺でのレースを終えた後、フォーミュラ1は再び市街地サーキットに挑む。今回は赤道からわずか140キロ北に位置する都市国家シンガポールだ。

バクーから大きく南へ移動することで、天候における2つの要素──湿度と気温──が大きく変わる。湿度は通常70%以上で、気温は冬と夏でほとんど変わらず、24〜31℃の間で推移する。これによりシンガポールでの週末はドライバーにとって最も身体的に過酷なもののひとつとなり、レース中に体重が最大3キロ減少することもある。加えて、コースはツイスト区間が多く、ドライバーがステアリングを握る間ほとんど休む暇がないことも負担を増している。

シンガポールGP

シンガポールGPは2008年に初開催されて以来、完全なナイトレースとして行われた最初のグランプリで、現地時間午後8時にレースがスタートする。これにより関係者は事実上ヨーロッパ時間を維持できるため、少なくとも時差ぼけの問題は避けられる。

今回もピレリ・デザインがデザイナーのデニス・デコヴィッチと共同で制作した特別仕様のピレリ・ポディウムキャップが用意されている。鮮やかなマゼンタ色で、このアジアのレースが持つ強烈さと活気を表現している。このポディウムキャップはすでに専用のECプラットフォーム(https://store.pirelli.com/)で購入可能だ。

F1シンガポールGP ポディウムキャップ

コンパウンド
マリーナベイでのドライ用コンパウンドは昨年から変更されていない。ハードがC3、ミディアムがC4、ソフトがC5だ。さらに柔らかいC6も存在するが、シーズン後半用コンパウンドがハンガリーGP週末に発表された際、夏休み前の評価によりこのレースでは不採用となった。理由は、タイヤにかかる負荷と高温により過熱問題が発生する可能性があったからだ。実際、このレースでは熱ストレスがタイヤ性能劣化の主な原因となる。

レースではミディアムとハードが明らかに主力となるが、ソフトはスタート直後にグリップを最大限活かしたい場合や、終盤にセーフティカーが導入された場合に使用される可能性がある。数年前に行われたレイアウト変更によりオーバーテイクはやや容易になったものの、それでも依然として難しい。そのため、多くの周回を走ったミディアムやハードに対して新品に近いソフトを投入すれば、大きなパフォーマンス差を活かす場面が考えられる。

F1 シンガポールGP

2024年
昨年はスタート時に14人がミディアム(C4)を選択し、4人がハード、2人がソフトを選んだ。ミディアムの柔軟性により、唯一のタイヤ交換のタイミングに複数の選択肢が生まれ、例外なく1ストップ戦略が最速の選択だった。渋滞とタイヤマネジメントによってスティントを延長でき、最も極端なケースでは49周まで走行することが可能だった。昨年のレースは、このトラックで数少ないセーフティカーが一度も出動しなかった例のひとつだった。

トラック
マリーナベイはカレンダーの中でも最もツイストの多いコースのひとつで、2023年の改修で23から19に減らされたコーナーを含む全長4.940kmだ。変更点はターン16後に400メートルの直線が加えられたこと。路面は市街地の道路と同じ特性を持ち、粗さが非常に低い。雨天時には多数の道路標識が追加のリスクとなる。ランオフエリアはほとんどなく、バリアは近接しているが、一部ではコース幅が比較的広い。

DRSゾーンは4か所あるが、前述のとおりオーバーテイクは依然として稀だ。ピットレーンの速度制限が60km/hから80km/hに引き上げられたことは戦略に大きく影響するだろう。1ストップはほぼ必須といえる。

予測困難な要素としては、セーフティカー導入や天候が挙げられる。赤道直下では天候の変化が激しく、雷雨も珍しくない。雨が降れば路面に載ったラバーが洗い流され、路面コンディションがリセットされることでタイヤ性能に影響を与える。

シンガポールグランプリ

キーワード:暗闇
シンガポールGPはF1初のナイトレースであり、その後アブダビやジェッダ、そして最新のラスベガスなど一部のレースに模倣された。マリーナベイは、コース全体を照らす技術を先駆的に導入し、ドライバーに最適な視界を提供する必要があった。特に課題となるのは、光が路面やバイザーに反射することで正確なブレーキングポイントを見極めにくくなる点だ。

通常、ナイトレースではレース本番時の気温は日中のセッションより低いが、シンガポールでは緯度の関係で昼夜の気温差がほとんどない。アブダビやジェッダといった砂漠地帯でのナイトレースと比べると大きな違いといえる。

2025年のF1世界選手権 シンガポールグランプリ

統計コーナー
これまでにシンガポールGPは15回開催され、そのうち10回、つまり3分の2で優勝者はポールポジションからスタートしている。これは予選の重要性を示しており、モナコでのポール勝率46.48%と比較しても高い。唯一2008年の初開催時だけが5番手以下からの優勝で、フェルナンド・アロンソが15番手スタートから勝利したが、そのレースは完全に混乱した展開となった。

シンガポール最多勝は5勝を挙げたセバスチャン・ベッテルで、次いでルイス・ハミルトンが4勝。これまで7人のドライバーが優勝を分け合い、そのうち4人が今週末も参戦する。珍しいことに、マックス・フェルスタッペンはここでまだ勝利していないだけでなく、ポールポジションも獲得したことがない。表彰台には3度上がっているものの、未勝利だ。チーム別ではメルセデス、フェラーリ、レッドブルがそれぞれ4勝で並ぶ。ポールポジションではベッテルとハミルトンが4回でトップ、チームではフェラーリが7回で首位。ベッテルは表彰台回数でも8回で最多、ハミルトンが7回、アロンソが5回で続く。チーム別表彰台数はレッドブルが15で最多、フェラーリが11、メルセデスとマクラーレンが7で並んでいる。

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カテゴリー: F1 / F1シンガポールGP / ピレリ