佐藤琢磨 「また優勝のチャンスは巡ってくる」
佐藤琢磨が、2位表彰台を獲得し、日本人として初めてインディカーのポイントリーダーに立つことになったサンパウロのレース週末を振り返った。
IZODインディカー・シリーズのサンパウロ戦で、これまで佐藤琢磨はいくつもの“初”を達成してきた。2010年は琢磨のインディカー・デビューレース。2011年はレース中に初めてトップに立った。2012年はインディカーの初表彰台を獲得している。
今回、佐藤琢磨が達成したのは初優勝ではない。それは2週間前にロングビーチで成し遂げている。だが、あとわずかなところで2勝目を挙げられたうえに、世界中の耳目が次戦のインディ500に集まろうとしているいま、佐藤琢磨はインディカー・シリーズのポイントリーダーに初めて立った。
カリフォルニアで栄冠を勝ち取ってからというもの、より一層忙しい毎日を送ることになった佐藤琢磨は、ブラジルに到着するまでに、およそ3万5000kmのフライトを経験しなければならなかった。
「ロングビーチの後、仕事がたくさんあったので日本に戻りました。でも、初優勝のおかげで急に予定が膨れあがりました。とはいえ、東京で優勝記者会見ができたのは本当によかったし、応援してくれるファンの前でトークショーができたことはものすごく嬉しかった。それにしても、本当に忙しい毎日です!」
サンパウロのコースと佐藤琢磨の相性がいいこと、そしてAJフォイト・レーシングが走らせるダラーラ・ホンダが好調なことを考えれば、今回も好成績が期待できると誰もが思うところだが、プラクティスから予選にかけては、そうした期待は現実のものとはならなかった。
「自分たちがそれほどコンペティティブでなかったことは、ある意味驚きでした。その理由のひとつとして、ファイアストンが昨年仕様のタイヤをサンパウロに持ち込んだことが挙げられます。このタイヤを上手く使いこなそうとして様々な努力をし、今年のセットアップを昨年のタイヤにマッチさせる試みもいくつか行いましたが、どれも上手くいきませんでした」
「今回は2デイ・イベントだったので、走行時間も限られていました。予選前のプラクティスは2回しかなく、そのうちの1回は途中で赤旗が提示されて中断となりました。おかげで、なにをしてもバランスを改善できませんでした」
「予選では本当に苦しみました。最善を尽くしたところ、幸運も手伝ってQ2に進出できました。ただし、トップには0.5秒も引き離されており、とても難しい状況に追い込まれていました」
佐藤琢磨は12番グリッドからスタートすることになったが、決勝当日のウォームアップではまだ多くの作業をこなす必要があった。
「コースコンディションは大きく変わっていました。気温が下がり、その当然の結果としてペースが上がっていたのです。ここでは、昨年のセットアップをベースに、今年のセットアップの考え方を取り込むことにしました。チームは、昨年のセットアップに満足していませんでしたが、これをきっかけにしてマシンの状態は徐々に良くなっていきます。ただし、決勝レースまでにはまだやるべき仕事がたくさん残っていました」
「サンパウロではアクシデントなどの波乱が起こりがちで、いつもエキサイティングなレースになるため、展開はまったく予想できません。僕たちにできることといえば、クルマが好調で、スタートでアクシデントに巻き込まれないことを祈るだけでした」
佐藤琢磨のスタートは順調で、最初のコーションが出るまでに9番手へと浮上すると、続いてジャスティン・ウィルソンとEJヴィソを攻略。コース上でウィル・パワーのマシンから炎が上がって2回目のコーションが出されるまでに、佐藤琢磨は6番手へと駒を進めていた。
「とてもいい流れでした。ターン1とターン2が大幅に改修されてコース幅が広がり、コーナーの角度も浅くなった結果、コーナリングスピードは大幅に上昇しました。けれども、急減速する区間は引き続き残っていたので、僕はこれを活用して大きく順位を上げていきました」
「硬めのブラック・タイヤは確実なパフォーマンスを発揮してくれました。ほとんどのドライバーがブラック・タイヤでスタートしたのは、今回がおそらく初めてだったと思います。とても興味深い状況でした」
「サンパウロのコースレイアウトは大好きです。オーバーテイクもできるので、僕たちはリスタートのたびにポジションを上げていき、思い通りの状況となっていました。マシンの反応が良好なことにも満足していました。僕たちのマシンがいちばん速かったわけではありませんが、安定感はあったので、不安なく速いペースを保つことができました」
レース中盤、トップのセバスチャン・ブールデと2番手のジョセフ・ニューガーデンがそれぞれ2回目のピットストップを行うと、これとほぼ同時に佐藤琢磨はライアン・ハンター-レイをオーバーテイクして実質的な首位に浮上する。
「大きな達成感を味わっていました。ポールポジションからスタートした彼と、レース前はトップ争いなど望めないと思っていたマシンで勝負し、これに勝ったのですから……。僕はレッド・タイヤで、ライアンはブラック・タイヤを履いていましたが、それでもオーバーテイクできて最高の気分でした。難しい状況の予選からここまで立ち直れたことに、僕たちは本当に勇気づけられました。とても素晴らしい進歩を果たしたと思います」
その後、佐藤琢磨は4ラップで4秒間のリードを築いたが、グレアム・レイホールのマシンから落ちた破片を回収することになった影響で佐藤琢磨のアドバンテージは消滅。そこでチームは佐藤琢磨を予定よりも早めにピットへと呼び戻すことにした。残り37ラップを1セットのタイヤ、そして無給油で走りきろうという戦略である。
「これは少しギャンブルだったと思います」と佐藤琢磨。
「このとき、ほとんどのドライバーはステイアウトを選びました。僕に確信はなかったので、とりあえずチームの指示に従うことにしました。いまにして思えば、これはやや早すぎるタイミングでした」
「この頃、僕はできる限り燃料をセーブしながらイエローが出るのを待っていました。けれども、実際にイエローが出ると、僕はピットに呼び戻されてわずかな量の給油を行い、また列の後ろに並ぶことになりました。最初は、これでどうやって順位を上げるのか見当がつきませんでしたが、やがて、ほとんどのドライバーは最後のスティントのためにもう1度ピットストップしなければいけないという朗報がもたらされます。それだったら、レース終盤にかなり順位を上げられるのではないかとの期待が膨らみました」
残り20周でレースが再開されたとき、各チームの戦略の違いによってオーダーが大きく変化し、佐藤琢磨は4番手に浮上していた。その10周前に20番手まで順位を落としていたことを考えれば、悪くない展開である。
「あるリスタートでは、周回遅れに行く手を阻まれ、もう少しでウォールと接触しそうになりました。そのとき、目の前では何台かのマシンが互いに絡み合っていました。続いてたくさんのオーバーテイクをしたので、タイヤに大きな負担を強いることになりました」
このとき、佐藤琢磨はレース中盤に装着したレッド・タイヤを履き続けていたが、マルコ・アンドレッティとジェイムズ・ヒンチクリフをパスして4番手から2番手へとジャンプアップ。さらにウィルソンがタイヤバリアに突っ込んだ影響で、この日最後のイエローが提示される。そしてレースが残り16ラップとなったとき、トップを走っていたJRヒルデブランドがピットストップを行ったため、佐藤琢磨は再び首位に浮上したのだ。
まずはニューガーデンが、そして最後の数周はヒンチクリフが襲いかかってきたとき、履き古したタイヤでこれに対抗するのは佐藤琢磨にとって容易なことではなかった。
「ふたりは、僕よりもずっとフレッシュなタイヤを履いていました。彼らが攻めてくることはわかっていました。最後の5ラップは、タイヤがもうなくなったも同然の状態でした。タイヤはすっかり磨り減っていたうえに、ブレーキにも小さな問題を抱えていました」
「ニューガーデンとのバトルは、お互いホンダ勢ということもあって、とても面白かったのですが、ヒンチが2番手になってからはずいぶん苦しめられました。というのも、トップスピードではシボレー・エンジンにアドバンテージがあったからです」
「ヘアピンへの進入では、毎周、懸命にディフェンドしなければいけなかったし、最終ラップに入るときはヒンチやニューガーデンとともに3ワイドにさえなりました! これはエキサイティングな展開でしたが、おかげでふたりをほんの少し引き離すことができました。ターン1では、おそらくコンマ数秒の差があったので、『よし、このまま逃げ切るぞ!』と思っていましたが、彼はバックストレートで急激に迫ってきました。僕はストレートでディフェンディングラインを採りましたが、最終コーナーでは本当にギリギリでした。ここでマシンがスライドし、ヒンチを抑えきることができませんでした。彼の動きは見事だったと思います」
「最終ラップの最終コーナーまでリードしていながら、最後の数百mで敗れたことは本当に残念でした。でも、それまでの状況を考えれば、2位は決して悪い成績ではありません。本当に力強い立ち直りだったので、2戦連続で表彰台に立ち、チャンピオンシップでポイントリーダーに立てたことは、本当にボーナスみたいなものだと考えています」
もしもニュータイヤに履き替えていたら、結果は変わっていただろうか?
「最後のピットストップでは、予選で3周しか走っていない比較的フレッシュなレッド・タイヤに交換することが可能でした。これには3〜4秒の時間を要し、おそらくひとつかふたつ、順位を落としていたことでしょうが、そこから力強く挽回できたとも思います。結果がどうなったかはわかりません。レースに“タラ・レバ”はつきものですが、あの時点でチームがこの判断を下すのは難しかったと思います。彼らは素晴らしい働きをし、最高のピットストップ作業を見せ、おかげで僕は楽しくレースができました」
「もしも2連勝できたら、こんなに素晴らしいことはありませんが、あまり欲張りすぎるのも考え物です。本当に素晴らしいレース、素晴らしいエンターテイメントで、ファンの皆さんも楽しんでくれたことでしょう。いずれにせよ、今季はまた優勝のチャンスが巡ってくるはずです」
次のレースはシリーズ最大の1戦、インディ500である。今年、アメリカのレースファンは時間を大きく遡ったかのような感覚を味わうことだろう。なにしろ、フォイト(のもとで走る琢磨)がアンドレッティ(の息子であるマイケルのチームで走るマルコ)に13ポイントの差をつけているのだ!
「ポイントリーダーになるのはいつでも最高の気分ですし、チームのモチベーションも高まります。この2レースでは大成功を収めることができましたが、シーズン最初の2レースでも僕たちは貴重なポイントを獲得していました」
「でも、インディ500はまったくの別物です。まずは一度落ち着いて、第1週目のプラクティスで手堅い仕事をするつもりです。今回、コノー・ダリィというチームメイトがいることは心強いですね。2台で貴重なデータを収集し、来るべき1戦に備えるつもりです」
カテゴリー: F1 / 佐藤琢磨 / インディカー
IZODインディカー・シリーズのサンパウロ戦で、これまで佐藤琢磨はいくつもの“初”を達成してきた。2010年は琢磨のインディカー・デビューレース。2011年はレース中に初めてトップに立った。2012年はインディカーの初表彰台を獲得している。
今回、佐藤琢磨が達成したのは初優勝ではない。それは2週間前にロングビーチで成し遂げている。だが、あとわずかなところで2勝目を挙げられたうえに、世界中の耳目が次戦のインディ500に集まろうとしているいま、佐藤琢磨はインディカー・シリーズのポイントリーダーに初めて立った。
カリフォルニアで栄冠を勝ち取ってからというもの、より一層忙しい毎日を送ることになった佐藤琢磨は、ブラジルに到着するまでに、およそ3万5000kmのフライトを経験しなければならなかった。
「ロングビーチの後、仕事がたくさんあったので日本に戻りました。でも、初優勝のおかげで急に予定が膨れあがりました。とはいえ、東京で優勝記者会見ができたのは本当によかったし、応援してくれるファンの前でトークショーができたことはものすごく嬉しかった。それにしても、本当に忙しい毎日です!」
サンパウロのコースと佐藤琢磨の相性がいいこと、そしてAJフォイト・レーシングが走らせるダラーラ・ホンダが好調なことを考えれば、今回も好成績が期待できると誰もが思うところだが、プラクティスから予選にかけては、そうした期待は現実のものとはならなかった。
「自分たちがそれほどコンペティティブでなかったことは、ある意味驚きでした。その理由のひとつとして、ファイアストンが昨年仕様のタイヤをサンパウロに持ち込んだことが挙げられます。このタイヤを上手く使いこなそうとして様々な努力をし、今年のセットアップを昨年のタイヤにマッチさせる試みもいくつか行いましたが、どれも上手くいきませんでした」
「今回は2デイ・イベントだったので、走行時間も限られていました。予選前のプラクティスは2回しかなく、そのうちの1回は途中で赤旗が提示されて中断となりました。おかげで、なにをしてもバランスを改善できませんでした」
「予選では本当に苦しみました。最善を尽くしたところ、幸運も手伝ってQ2に進出できました。ただし、トップには0.5秒も引き離されており、とても難しい状況に追い込まれていました」
佐藤琢磨は12番グリッドからスタートすることになったが、決勝当日のウォームアップではまだ多くの作業をこなす必要があった。
「コースコンディションは大きく変わっていました。気温が下がり、その当然の結果としてペースが上がっていたのです。ここでは、昨年のセットアップをベースに、今年のセットアップの考え方を取り込むことにしました。チームは、昨年のセットアップに満足していませんでしたが、これをきっかけにしてマシンの状態は徐々に良くなっていきます。ただし、決勝レースまでにはまだやるべき仕事がたくさん残っていました」
「サンパウロではアクシデントなどの波乱が起こりがちで、いつもエキサイティングなレースになるため、展開はまったく予想できません。僕たちにできることといえば、クルマが好調で、スタートでアクシデントに巻き込まれないことを祈るだけでした」
佐藤琢磨のスタートは順調で、最初のコーションが出るまでに9番手へと浮上すると、続いてジャスティン・ウィルソンとEJヴィソを攻略。コース上でウィル・パワーのマシンから炎が上がって2回目のコーションが出されるまでに、佐藤琢磨は6番手へと駒を進めていた。
「とてもいい流れでした。ターン1とターン2が大幅に改修されてコース幅が広がり、コーナーの角度も浅くなった結果、コーナリングスピードは大幅に上昇しました。けれども、急減速する区間は引き続き残っていたので、僕はこれを活用して大きく順位を上げていきました」
「硬めのブラック・タイヤは確実なパフォーマンスを発揮してくれました。ほとんどのドライバーがブラック・タイヤでスタートしたのは、今回がおそらく初めてだったと思います。とても興味深い状況でした」
「サンパウロのコースレイアウトは大好きです。オーバーテイクもできるので、僕たちはリスタートのたびにポジションを上げていき、思い通りの状況となっていました。マシンの反応が良好なことにも満足していました。僕たちのマシンがいちばん速かったわけではありませんが、安定感はあったので、不安なく速いペースを保つことができました」
レース中盤、トップのセバスチャン・ブールデと2番手のジョセフ・ニューガーデンがそれぞれ2回目のピットストップを行うと、これとほぼ同時に佐藤琢磨はライアン・ハンター-レイをオーバーテイクして実質的な首位に浮上する。
「大きな達成感を味わっていました。ポールポジションからスタートした彼と、レース前はトップ争いなど望めないと思っていたマシンで勝負し、これに勝ったのですから……。僕はレッド・タイヤで、ライアンはブラック・タイヤを履いていましたが、それでもオーバーテイクできて最高の気分でした。難しい状況の予選からここまで立ち直れたことに、僕たちは本当に勇気づけられました。とても素晴らしい進歩を果たしたと思います」
その後、佐藤琢磨は4ラップで4秒間のリードを築いたが、グレアム・レイホールのマシンから落ちた破片を回収することになった影響で佐藤琢磨のアドバンテージは消滅。そこでチームは佐藤琢磨を予定よりも早めにピットへと呼び戻すことにした。残り37ラップを1セットのタイヤ、そして無給油で走りきろうという戦略である。
「これは少しギャンブルだったと思います」と佐藤琢磨。
「このとき、ほとんどのドライバーはステイアウトを選びました。僕に確信はなかったので、とりあえずチームの指示に従うことにしました。いまにして思えば、これはやや早すぎるタイミングでした」
「この頃、僕はできる限り燃料をセーブしながらイエローが出るのを待っていました。けれども、実際にイエローが出ると、僕はピットに呼び戻されてわずかな量の給油を行い、また列の後ろに並ぶことになりました。最初は、これでどうやって順位を上げるのか見当がつきませんでしたが、やがて、ほとんどのドライバーは最後のスティントのためにもう1度ピットストップしなければいけないという朗報がもたらされます。それだったら、レース終盤にかなり順位を上げられるのではないかとの期待が膨らみました」
残り20周でレースが再開されたとき、各チームの戦略の違いによってオーダーが大きく変化し、佐藤琢磨は4番手に浮上していた。その10周前に20番手まで順位を落としていたことを考えれば、悪くない展開である。
「あるリスタートでは、周回遅れに行く手を阻まれ、もう少しでウォールと接触しそうになりました。そのとき、目の前では何台かのマシンが互いに絡み合っていました。続いてたくさんのオーバーテイクをしたので、タイヤに大きな負担を強いることになりました」
このとき、佐藤琢磨はレース中盤に装着したレッド・タイヤを履き続けていたが、マルコ・アンドレッティとジェイムズ・ヒンチクリフをパスして4番手から2番手へとジャンプアップ。さらにウィルソンがタイヤバリアに突っ込んだ影響で、この日最後のイエローが提示される。そしてレースが残り16ラップとなったとき、トップを走っていたJRヒルデブランドがピットストップを行ったため、佐藤琢磨は再び首位に浮上したのだ。
まずはニューガーデンが、そして最後の数周はヒンチクリフが襲いかかってきたとき、履き古したタイヤでこれに対抗するのは佐藤琢磨にとって容易なことではなかった。
「ふたりは、僕よりもずっとフレッシュなタイヤを履いていました。彼らが攻めてくることはわかっていました。最後の5ラップは、タイヤがもうなくなったも同然の状態でした。タイヤはすっかり磨り減っていたうえに、ブレーキにも小さな問題を抱えていました」
「ニューガーデンとのバトルは、お互いホンダ勢ということもあって、とても面白かったのですが、ヒンチが2番手になってからはずいぶん苦しめられました。というのも、トップスピードではシボレー・エンジンにアドバンテージがあったからです」
「ヘアピンへの進入では、毎周、懸命にディフェンドしなければいけなかったし、最終ラップに入るときはヒンチやニューガーデンとともに3ワイドにさえなりました! これはエキサイティングな展開でしたが、おかげでふたりをほんの少し引き離すことができました。ターン1では、おそらくコンマ数秒の差があったので、『よし、このまま逃げ切るぞ!』と思っていましたが、彼はバックストレートで急激に迫ってきました。僕はストレートでディフェンディングラインを採りましたが、最終コーナーでは本当にギリギリでした。ここでマシンがスライドし、ヒンチを抑えきることができませんでした。彼の動きは見事だったと思います」
「最終ラップの最終コーナーまでリードしていながら、最後の数百mで敗れたことは本当に残念でした。でも、それまでの状況を考えれば、2位は決して悪い成績ではありません。本当に力強い立ち直りだったので、2戦連続で表彰台に立ち、チャンピオンシップでポイントリーダーに立てたことは、本当にボーナスみたいなものだと考えています」
もしもニュータイヤに履き替えていたら、結果は変わっていただろうか?
「最後のピットストップでは、予選で3周しか走っていない比較的フレッシュなレッド・タイヤに交換することが可能でした。これには3〜4秒の時間を要し、おそらくひとつかふたつ、順位を落としていたことでしょうが、そこから力強く挽回できたとも思います。結果がどうなったかはわかりません。レースに“タラ・レバ”はつきものですが、あの時点でチームがこの判断を下すのは難しかったと思います。彼らは素晴らしい働きをし、最高のピットストップ作業を見せ、おかげで僕は楽しくレースができました」
「もしも2連勝できたら、こんなに素晴らしいことはありませんが、あまり欲張りすぎるのも考え物です。本当に素晴らしいレース、素晴らしいエンターテイメントで、ファンの皆さんも楽しんでくれたことでしょう。いずれにせよ、今季はまた優勝のチャンスが巡ってくるはずです」
次のレースはシリーズ最大の1戦、インディ500である。今年、アメリカのレースファンは時間を大きく遡ったかのような感覚を味わうことだろう。なにしろ、フォイト(のもとで走る琢磨)がアンドレッティ(の息子であるマイケルのチームで走るマルコ)に13ポイントの差をつけているのだ!
「ポイントリーダーになるのはいつでも最高の気分ですし、チームのモチベーションも高まります。この2レースでは大成功を収めることができましたが、シーズン最初の2レースでも僕たちは貴重なポイントを獲得していました」
「でも、インディ500はまったくの別物です。まずは一度落ち着いて、第1週目のプラクティスで手堅い仕事をするつもりです。今回、コノー・ダリィというチームメイトがいることは心強いですね。2台で貴重なデータを収集し、来るべき1戦に備えるつもりです」
カテゴリー: F1 / 佐藤琢磨 / インディカー