レッドブルF1:ハジャーのクラッシュがガスリーと同じ運命にならない訳

7年前、レッドブルはF1ルーキーイヤーを成功させたガスリーを、より経験豊富なカルロス・サインツJr.ではなくマックス・フェルスタッペンのチームメイトに抜擢した。しかしガスリーは、2019年バルセロナのプレシーズンテストで2度クラッシュし、シーズン前半の悪夢のような成績の末にトロロッソへ降格することになった。
そして2026年、レッドブルは再びフランス人の2年目ドライバーであるハジャーをフェルスタッペンの隣に据えた。選択にあたり、より経験のある角田裕毅ではなく、勢いのある若手を選んだ点も当時と重なる。そのハジャーもまた、バルセロナで新車RB22をクラッシュさせた。
正直なところ、F1の2026年新レギュレーション下で完全新設計のマシンを投入しているレッドブルにとって、今回のアクシデントが理想的だったとは言えない。ただし、事故は走行最終盤に起きたため、失われた走行時間は最小限に抑えられている。
ガスリーの2019年と何が違うのか
2019年のガスリーは、まずテスト2日目にターン12でリアを失いクラッシュした。その際、本人は限界を探る中で起きたミスだったと説明している。
さらに9日後、2回目のバルセロナテストでは超高速のターン9で再び大きなクラッシュを喫した。この2度目の事故はチームにとって深刻で、レッドブルは旧仕様のバージボードへ戻さざるを得ず、フェルスタッペンの最終日の走行距離にも影響が出た。
結果としてガスリーは12戦でフェルスタッペンに大きく遅れを取り、表彰台に一度も上がれないままシートを失うことになる。後に大きく立て直したことを考えれば、降格は結果的に救いだったとも言える。
マシン特性とチーム環境の違い
ガスリーが苦しんだ最大の要因は、RB15の挙動と自身のドライビングスタイルの不一致だった。攻撃的な走りがマシンと噛み合わず、セットアップを試行錯誤する中で迷走。オーストリアGPでは周回遅れにされ、予選でも差は拡大していった。
さらに本人は、チーム内で十分なサポートを受けられていなかったとも感じていた。レースエンジニアのマイク・ラッグはF1未経験で、元々はダニエル・リカルドとの再タッグを想定した配置だったが、リカルド移籍によりガスリーが引き継ぐ形になった。この体制も長続きはしなかった。
一方でハジャーを取り巻く環境は大きく異なる。2026年は技術規則が全面刷新され、今回のクラッシュもウェットコンディションでの新車走行中に発生したものだ。前日にはドライで1日走り切っている点も重要である。
2019年のプレシーズンテストで2度のクラッシュを喫したピエール・ガスリー体制刷新されたレッドブル
ハジャーのレースエンジニアはリチャード・ウッドで、近年はパフォーマンスエンジニアとして経験を積み、セルジオ・ペレスの代役も務めてきた人物だ。ローソンや角田裕毅と仕事をしてきた経歴もあり、経験値は十分にある。
また、チームマネジメントも様変わりしている。かつての体制を率いたクリスチャン・ホーナーやヘルムート・マルコは去り、現在はローラン・メキースがチーム代表を務めている。人心掌握に長け、誠実な姿勢で知られる人物であり、内部からも高い評価を受けている。
実際、ハジャーのクラッシュ後もメキースは「非常にトリッキーなコンディションだった。不運だったが、これはレースの一部だ」と冷静に受け止めた。
同じ結末になる必然性はない
確かに、レッドブルのセカンドシートが厳しいことは事実だ。過去にはアレクサンダー・アルボン、セルジオ・ペレス、リアム・ローソン、角田裕毅もフェルスタッペンとの差に苦しんできた。
それでも、ハジャーが成功できない理由はどこにもない。ここで言う成功とは、フェルスタッペンに勝つことではなく、十分に近い位置で戦える存在になることだ。
そのために必要なのは、残りのプレシーズンで同様のクラッシュを繰り返さないことだけだ。疑念が芽生える前に、着実な走行を重ねることができれば、2019年の再現になるとは限らない。
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