レッドブルF1技術責任者「マクラーレンの牙城は今季中に崩せる」

ワシェは、今季を通じてレッドブルが着実に前進しており、1周あたりの差は「コンマ3秒まで縮まってきた」と語った。開幕当初はそれ以上に差があったという。
しかし、ワシェとレッドブルにとって厳しいのは、マックス・フェルスタッペン一人でオスカー・ピアストリとランド・ノリスの二人を相手にしなければならないことだ。
開幕から9戦が終わった時点で、リアム・ローソンと角田裕毅は苦戦を強いられており、コンストラクターズ選手権ではレッドブルがマクラーレンに対して218ポイントもの差をつけられている。
フェルスタッペンはドライバーズタイトル争いに踏みとどまっているものの、スペイングランプリで話題を呼んだペナルティにより10位でチェッカーを受け、ピアストリに対して49ポイントのビハインドを負っている。
レッドブルを打ち負かして「最強のチーム」となったマクラーレンの躍進について、ワシェはRacingNews365の独占取材にこう語った。
「明らかに、マクラーレンは昨年中盤からすべてのチームを上回る開発をしてきた。マシンの挙動やパフォーマンスにおける“スイートスポット”を見つけ出したんだ。我々が見つけられなかった場所をね」
「我々は2023年と2024年に非常に支配的だったが、そのときからすでにマシンには同じ課題があったんだ。その特性自体は変わらず、課題が大きくなってもなお、パフォーマンスを伸ばすことができていたというのが正直なところだ」
「チェコ(ペレス)が苦しんでいたのを見れば分かるように、あのマシンは誰にでも扱いやすいものではなかった。でもマックスはそれでもパフォーマンスを引き出していた。マクラーレンはまったく異なる方向性を選び、それによって我々を上回ってきたということだ」
「だからこそ今、我々はキャッチアップしないといけない。扱いやすいマシンにしつつもパフォーマンスは落とさず、ドライバーがきちんと性能を引き出せるようにする必要があるんだ」

長年にわたり、レッドブルのマシンはフェルスタッペンが最大限の力を発揮できるように設計されてきた、という見方が定着しているが、ワシェは「フェルスタッペン偏重」といった指摘を否定した。
「難しい問題だよ」とワシェは語る。「問題が起きるまでは、その存在に気づくことすらない」
「この世界では、我々は非常に集中していて、しかもリソースや予算には限りがある。だからマシンをどうテストするかにも制限があるし、全体像を見る余裕がない。その中で“問題”が起きるまでは、自分たちが進んでいる方向性が正しいかどうかを判断するのは難しい」
「今になって振り返れば『やらかしたな』と言えるかもしれないけど、今の知識を持って過去に戻れたとしても、結局は同じことをしていたかもしれない。クルマは確かに速くなっているけど、それでもまだ十分じゃないんだ」
それでもワシェは、マクラーレンとの差を詰めることができると確信している。
「もし追いつけないと思っていたら、開発なんてやらない」とワシェは言う。
「マクラーレンはあらゆる面で強力だが、それでも我々はやれると思っている。もしそう思っていなかったら、今ごろはすべてのリソースを来年のために振り向けているはずだ」
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