小松礼雄 ハースF1チームを変えた男 “少数精鋭”で中団最前線へ
ハースF1チームは、F1に大手メーカーや投資家の存在感が増すなかで、ますます異色の存在になっている。限られた財政資源、開発インフラの不足、そして比較的小規模な人員体制により、ハースが使える道具はライバルたちより少ない。

それでも、彼らは中団でもっとも効率的なチームのひとつとしての地位を固めつつある。ハースの2026年型マシン「VF-26」はプレシーズンテストで有望な兆候を示した。アメリカのチームはオーストラリアを前に好調に見え、堅実なシャシーと強力なフェラーリ製エンジンの組み合わせが機能していた。

それでも、メルボルンでオリバー・ベアマンが記録した7位は予想を上回る結果だった。

ハースは開幕戦を終えて貴重な6ポイントを持ち帰り、コンストラクターズランキングで5位につけている。すでにハースは“ベスト・オブ・ザ・レスト”という非公式タイトルを争う好位置につけており、その復活の立役者である小松礼雄は、今こそスポットライトを浴びるに値する。

ハースは少ないもので多くを成し遂げる
小松礼雄がハースのチーム代表に就任した直後、2024年序盤のことだった。彼は、グリッド上の他チームと比較したハースの不足を次のように語っていた。

「少ない人員体制のなかで、我々は常に、週末の作業が月曜日の作業を犠牲にする価値があるのかどうかを見極めなければなりません」

「多くの人がこれを奇妙に感じると思いますが、我々はそういう状況にいます。我々の人数は300人未満です。2番目にスタッフ数が少ないチームでも、その2倍以上います」

「我々は常に従業員数を増やしていますが、それは一夜にして実現するものではありません」

ウィリアムズのような他の中団チームが約1000人の人員を抱えて2026年シーズンを迎えていることを考えれば、ハースが限られた資源を最適化していることは極めて見事だ。

もちろん、ハースはエンジンやギアボックスなどの特定コンポーネントをフェラーリから購入している恩恵を受けている。それでも、これだけでVF-26が中団最上位で戦えている理由を説明することはできない。

キャデラックF1もまたフェラーリのカスタマーチームだが、小松礼雄のチームから数秒遅れた位置にいる。キャデラックF1にとって初のシーズンであり、まだF1への適応段階にあることを考えれば、これは必ずしも公平な比較ではない。

いずれにせよ、こうしたチームの収れんは、2つのカスタマーチームがシャシーと空力面をどれだけ効果的に最適化できているかの違いを示している。これをさらに際立たせているのが、2025年後半にハースが進めた分割開発だ。

ハースは他の多くのチームとは異なり、昨季終盤の数か月間も2025年型パッケージの開発を継続していた。つまり、すでに限られていた風洞時間とエンジニアのリソースが、2025年型の開発と2026年レギュレーション対応に分割されていたことになる。

だからこそ、小松礼雄の技術部門が非常に効率の高いパッケージをまとめ上げたことには、大きな称賛が値する。ウィリアムズのようなチームがこのレギュレーションサイクルへの集中を盛んに語っていたのに対し、ハースは静かに仕事を進め、再びその実力以上の成果を上げている。

2026年F1ではPU最適化も重要なテーマになっている
パワーユニット最適化というテーマは、2026年に入って急速に重要性を増している。根本的には、カスタマーチームが供給元から提供されるエンジンをどれだけ理解し、引き出せるかが、パフォーマンスに大きな影響を与え得る。

この点でも、ハースは再び期待以上の成果を見せている。小松礼雄は、フェラーリ製エンジンのバッテリーに関する電気効率とエネルギー回生が現段階では順調に進んでいるとコメントしている。

さらに、ハースの2026年型開発期間が圧縮されていたことを考えれば、VF-26は決して完成形ではない。現状のパッケージは堅実なベースラインとして機能しており、今後数か月にわたって開発の余地を大きく残している。

重要なのは、ハースが過剰重量や厄介な信頼性といった根本的な問題と戦っていないことだ。こうした基本領域が管理下にあることで、小松礼雄のスタッフは2026年型マシンの細部に集中していくための良い立場にある。

ハースF1チーム

小松礼雄がオーストラリアGPを振り返る
チームの好スタートを受け、小松礼雄が高揚していたのも無理はなかった。もちろん、まだシーズン序盤ではあるが、ハースが今年コンストラクターズランキングでトップ7入りを目指すのは妥当に思える。

5位を確保することすら、まったく不可能ではない。いずれにせよ、ハースがその歴史のなかで7位以上でシーズンを終えたのはこれまで2回しかない。2018年と2024年だ。そう考えると、2026年はF1における彼らにとって最高のシーズンのひとつになる可能性があることを、序盤の兆候は示している。

レース後のコメントで、小松礼雄はチームの働きを称賛した。

「まず何よりも、皆さんに心からおめでとうと言いたいです。この道のりは、この数か月だけではなく、本当に大きな挑戦でした」

「しかも、VF-25とVF-26を並行して進める開発フェーズの間ずっとそうでした。他のチームがそうだったわけではありません」

「昨日の予選後は複雑な感情がありました。堅実な結果でしたが、もっと良くできたはずです」

「今日は基本に集中し、自分たちのレースをして、正しいタイミングで正しい判断を下し、ピットストップクルーも仕事をやり切ってくれました」

「レースはエネルギーマネジメントという面でまったく新しい挑戦でしたが、周回ごとに学びながら、我々はできる限りうまく対処できたと思います」

「チームとして7位を持ち帰れたことは信じられません。上にいたのはトップ4チームだけでした。皆さんを本当に誇りに思います。今後数戦で我々には大きな学習曲線が待っていますが、これ以上ない形で年をスタートできたと思います」

ハースの次はどうなるのか
F1にメーカーや有力勢が流入していることを考えれば、ハースが長期的に競争力を維持できるのか疑問視するのは自然なことだった。結局のところ、アウディやキャデラックF1のような大きな名前の登場によって、ハースはますます少数派になっていく可能性がある。

ある意味では、2026年シーズン序盤は、大きな名前だからといって成功が保証されないことを示している。むしろ、アストンマーティン、キャデラックF1、ウィリアムズの序盤の苦戦は、野心的なプロジェクトがつまずきに直面し得ることの証拠だ。

それでも、これはハースが追加投資なしに上限を引き上げられることを意味するわけではない。たとえ最善のシナリオでも、現在の状態では彼らの立ち位置はある程度中団に限定される。

その延長線上で考えれば、アストンマーティンのような苦戦しているチームが厳しいスタートから立て直し、順位を上げてくることは十分にあり得る。

そうした意味で、ハースは増強が必要であることを理解している。小松礼雄がトヨタとの合意を非常に抜け目なくまとめたのは、まさにそのためだろう。トヨタは現在、ハースのタイトルスポンサーであり、両者の統合が深まっていることを示している。

ハースとトヨタは研究開発面で協力関係を深めており、そのなかにはハースのF1プロジェクトに関する共同の取り組みも含まれている。根本的には、この提携によってハースは活用できるスタッフ数を増やすことができる。

トヨタの関与拡大は、平川亮のようなドライバーがこのアメリカのチームでフリープラクティスに参加していることからも明らかだ。

時間の経過とともに、この提携はさらに強まり、ハースが抱える構造的な不足を補う助けになるかもしれない。それでも、現時点での証拠は、限られた道具しかなくてもハースが十分に自力で戦えることを示し続けている。

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カテゴリー: F1 / ハースF1チーム