レッドブル・ホンダF1:ハイレーキ+ロードラッグ構成=最適解?
レッドブル・ホンダF1が、4連勝と快進撃を見せているなかで、シーズン序盤に話題となった“ハイレーキ”というワードが再び注目を集めている。

2021年のF1世界選手権では、ピレリのタイヤの耐久性を考慮して、ダウンフォースを10%削減するための空力ルール変更が適用された。ブレーキダクト、ディフューザーの寸法の規制に加え、フロア面積の削減が最も大きな変更となった。

開幕戦でレッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペンがポールポジションを獲得し、王者メルセデスがバランスに苦戦したことから、新しいレギュレーションは「ハイレーキに有利でローレーキに不利」との論調が展開された。

レッドブルが開拓したハイレーキは、マシンに前傾姿勢をとらせることでマシン全体にディフューザーの働きをさせてダウンフォースを稼ぐというもの。一方、メルセデスのローレーキは、路面に対してフラットなロングホイールベースによる面積なフロアでダウンフォースを稼ぐというもの。

しかし、開幕4戦でメルセデスが3勝を挙げたことで、いつしかその話題は過去のものになっていた。

だが、ここに来てレッドブル・ホンダF1が4連勝。特に高速市街地サーキットでF1アゼルバイジャンGPのストレートでメルセデスを凌ぐ速さを見せたことから、ホンダのF1エンジンの戦闘力を含めて、メルセデスとの違いを生んでいる要因へと注目が集まった。

当初は、F1スペインGPで話題となった“ベンディ(曲がる)”リアウイングがストレートの速さに貢献しているというのがメルセデスの主張だった。ストレートで負荷がかかるとリアウイングが寝てドラッグを減らし、コーナーではリアウイングが立ってダウンフォースを発生させているという理論だ。

しかし、ベンディウイングが新しい剛性テストで封じられたF1フランスGPでもレッドブル・ホンダは速く、それはレッドブル・リンクでも変わらなかった。

メルセデスは、前述のフロア面積の削減によってリアのダウンフォースを失っているため、レッドブルが“バーンドア(納屋の大きな開き戸/大きな標的)”と称する大きなリアウイングを外せないでいる。また、リアの改善を優勢した結果、本来持っていたタイヤへの“冷え性”のマシン特性が再び顔を出し、フロントタイヤにスイッチを入れるに苦戦。結果としてタイヤが傷むのが速くなっている。

一方、元々ドラッグいハイレーキをレッドブルは、薄いリアウイングのロードラッグ/ローダウンフォース構成にしたことで逆にバランスが改善。タイヤにスイッチが入るのが速く、コーナーでのバランスも良いため、タイヤも傷みにくいマシンへと仕上がっている。

そもそものマシン自体のダウンフォース特性により、メルセデスはレッドブルのルートを辿ったロードラッグ構成に変更できずにいる。レッドブルはフロア下でのダウンフォースが高く、マシン表面でダウンフォースを発生させなくても理想的なバランスが得られた。逆にメルセデスはフロア下で稼げるダウンフォースが少ないため、上物でダウンフォースを追加しなけれバランスが取れない。

ポール・リカールでタイヤの使い方とレースペースに苦戦したフェラーリが、ロードラッグに寄せたレッドブル・リンクで速さを取り戻したことにも今年のセットアップの最適解が隠されているかもしれない。

メルセデスF1のモータースポーツ戦略ディレクターをツ問えるジェームス・ボウルズは、レーキの違いが、リアウィング選択によってマシンのドラッグにどのような影響を与えているかを完全に判断するのが難しいと認める。

「レッドブルのウイングは我々たちのウイングよりもわずかに低いが、車高もはるかに高いため、彼らのマシンが我々のマシンと比較してどのようなドラッグを生み出しているかを比較することは非常に困難だ」とジェームス・ボウルズは説明した。

「我々が分かっていることは、自分たちのマシンのことであり、それが我々が調査していることだ。我々が走らせているリアウィングの位置はラップタイムに最適であり、最終的にはそれが予選と実際のレースの両方で重要になる」

また、ホンダのF1エンジンのパワーがメルセデスと互角になったこともパフォーマンスに大きな影響を与えている。急にホンダのF1エンジンのパフォーマンスが上がった理由については、信頼性の向上、エクソンモービルのオイルの効果によって、より高い温度とハイパフォーマンスを心配せずに発揮できるようになったとされている。

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カテゴリー: F1 / レッドブル・レーシング / ホンダF1 / F1マシン