レッドブル・ホンダF1 決勝分析:好成績もアップデートは不発
昨年、マックス・フェルスタッペンがポールポジションを獲得し、伝統的にレッドブルのF1マシンと相性のいいハンガロリンクでチームはRB16に手を焼いた。
初日から両ドライバーはRB16のバランス不足とストレートスピード不足を指摘。レッドブル・ホンダF1は金曜日の夜にカーフュー(夜間外出禁止令)を破ってマシンにあれこれ手を加えたが、土曜日になっても症状は治らなかった。
フリー走行3回目ではマックス・フェルスタッペンがターン12でスピン。アンダーステアが出てパワーをかけられないマシン状態が如実に現れていた。それは予選になっても変わることはなく、フェルスタッペンは7番手、アレクサンダー・アルボンに至ってはQ2を突破することができずに13番手で予選を終えた。
当然ながら、決勝日を迎えてパルクフェルメ下にマシンが変わることはない。ウエットコンディションとなった路面でマックス・フェルスタッペンはレコノサンスラップで前日にスピンしたのと同じターン12でコントロールを失ってクラッシュ。フロントウイングと左フロントサスペンションを破損し、スタート時刻が迫る中、クルーが必死に修復作業を進めた。
クルーの素晴らしい修復作業によって無事スタートすることができたマックス・フェルスタッペンは、スタートで7番グリッドから3位までポジションを上げると、各チームのマシンがピットインしてインターミディエイトからドライタイヤに履き替えるタイミングでランス・ストロール(レーシングポイント)を抜いて2位に浮上する。ライバルのバルテリ・ボッタスはスタートで7番手まで順位を落とした。これですべてが決まった。
一方、アレクサンダー・アルボンはは13番グリッドからのスタートだったため、フェルスタッペンよりも厳しいレースが予想されたが、順調にポジションを上げていき、最終盤のターン2でワイドに膨らんだセバスチャン・ベッテルを抜いて5位に浮上すると、このポジションを守ってフィニッシュした。
結果は2位と5位。しかし、上記のような運と他チームの決勝での予想外のパフォーマンス不足が手伝っての結果と過言ではないかもしれない。
実際、2位でフィニッシュしたマックス・フェルスタッペンはメルセデス勢のレースペースに歯が立たなかった。首位でレースをコントロールしていたルイス・ハミルトンには最大で27秒差がつき、66周目にファステストラップを狙うためのフリーストップの機会を与えた。また、3位のバルテリ・ボッタスにはタイヤの鮮度の違いはあったものの、レース終盤に1~2秒のペース差があり、残り20周で22秒あった差はフィニッシュ時には0.7秒まで縮まっていた。
マックス・フェルスタッペンは「この結果が得られるなんて思っていなかった」と語り、アレクサンダー・アルボンは「予選よりもペースがかなり良かったのはちょっと驚きだったけれど、ポジティブな驚きだし、マシンが上手く機能している証拠だ」と好パフォーマンスの原因はつかめていない。
チーム代表のクリスチャン・ホーナーも「マシンは決勝の方が状態が良く、戦術も良いが、プレシーズンから加えてきたアップデートの一部が期待通りの結果を出していないので、データを精査してシルバーストン前に原因を突き止めたい」と語っている。
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レッドブル・ホンダF1 レース展開
決勝レースのスタートは入れ替わりの激しい展開となった。
まず、ボッタスがスタートに失敗。ハミルトンがリードを守る中、フェルスタッペンは素晴らしいスタートを決めて7位から一気にポジションを上げてランス・ストロールの後方に迫る。ストロールをここで抜くことはできなかったが、オープニングラップでベッテルとルクレールの前、3位までジャンプアップすることに成功した。
レース展開はその後も目まぐるしく変わっていく。ハース勢がスタート前にピットインしてタイヤをドライに交換すると、ダニール・クビアト(スクーデリア・アルファタウリ)もオープニングラップ終了時にピットインして交換。シャルル・ルクレールとボッタスも2周目終了時にピットインしてドライタイヤに交換した。その後、ベッテルもピットインするが、多くのマシンがピットインをしていた関係でコースに戻るタイミングを計り損ねてしまう。タイムを大きく失ったベッテルはポジションも大きく落としてしまった。
また、ハミルトンもピットインしてミディアムタイヤに交換。このタイミングでフェルスタッペンが首位に立つ。
しかし、フェルスタッペンのリードは一瞬だった。フェルスタッペンもすぐにピットインしてインターミディエイトからミディアムに交換。2位でレースに復帰する。
12周が終わる頃にはハミルトンとフェルスタッペンの差は9.4秒まで開いており、3位にはケビン・マグヌッセンがつける。その後方にはストロールとボッタス、さらにロマン・グロージャンとルクレールが続いた。
ルクレールの後方にはベッテル、そして13番グリッドから素晴らしい追い上げを見せていたアルボンが続き、ベッテルがターン12でワイドに膨らんだタイミングでアルボンが前に出て8位に浮上する。その後、アルボンはルクレールにも迫るが、ソフトを履いていたルクレールのペースが上がらないため、ベッテルを加えた三つ巴のバトルになる。
オーバーテイクを何回か試みていたアルボンは、17周目の最終ターンを上手く立ち上がると、ターン1の手前で再度アタックを仕掛ける。ルクレールはブロックを試みるが、アルボンが上手く前に出たため、そのままルクレールを抜いて7位を奪う。ルクレールはその後ベッテルにも抜かれる。
前方ではハミルトンが快走を続けており、24周目では2位フェルスタッペンに12秒差を築いていたが、フェルスタッペンも3位ストロールに15.5秒の差を築いていた。4位にボッタス、5位にマグヌッセン、6位にグロージャン、7位にアルボンが続く。
28周目に6位グロージャンとの差を0.7秒まで詰めていたアルボンは、29周目のターン1で一気に前に出て6位に浮上。7.7秒先を走るマグヌッセンが次のターゲットになった。
30周目終了時にベッテルが2回目のピットインでハードタイヤに交換。9位から11位までポジションを落とすが、フェステストラップを記録しながらカルロス・サインツ Jr.(マクラーレン)との差を詰めていった。
33周目にはボッタスが2回目のピットインでミディアムへ交換。35周目にはアルボンが2回目のピットインを行うが、ここでクルーが素晴らしいピットワークを見せ、2.7秒でハードタイヤに交換。アルボンは10位でレースに復帰する。
続いてストロールがミディアムに交換すると、フェルスタッペンもハードに交換するために2回目のピットインを行う。ここでピットクルーがさらに素晴らしい仕事を見せ、2.0秒でフェルスタッペンを送り出す。そしてハミルトンもピットイン。十分なリードを築いていたハミルトンはミディアムに履き替えて首位のままレースに復帰した。2位にフェルスタッペン、3位にはストロールを抜いていたボッタスが続いた。
フレッシュなタイヤを得たボッタスはここからフェルスタッペン追撃をスタートさせ、40周目で5.3秒だったタイム差を45周目までに1.3秒まで縮めることに成功。2人の後方ではベッテルが5位までポジションを戻していたが、アルボンがさらに上回るペースで背後に迫る。
残り5周、アルボンはベッテルとの差を1.1秒まで詰めることに成功。ボッタスもフェルスタッペンとの差を4秒まで詰めていた。アルボンは次の周のターン2でワイドに膨らんだベッテルのインを突いて5位を奪う。
69周目、ボッタスとフェルスタッペンの差は1秒以内まで詰まっていたが、フェルスタッペンは最終ターンで素晴らしいコーナリングワークを見せてボッタスとの差を0.8秒にキープすると、ファイナルラップもボッタスを抑えてチェッカーフラッグを受けた。
ハミルトンは1分16秒627のファステストラップと共にキャリア8回目のハンガリーGP優勝を手にした。2位にフェルスタッペン、3位にボッタスが続いた。4位には2019シーズンドイツGPと並ぶキャリアベストをマークしたストロールが入り、5位には13位から驚異の追い上げを見せたアルボンが入った。
マックス・フェルスタッペン(2位)
「言うまでもなく、このポディウムは僕のメカニックたちに捧げるものだ。スタート前にレースが終わってしまったと思っていた。ブレーキを踏んだらホイールがロックしてしまったので、ブレーキを外して踏み直したらウォールに当たってしまった。信じられなかったけれど、何とかウォールからグリッドまで戻ることができた。このチームは絶対に諦めないし、メカニックたちが素晴らしい仕事でマシンを瞬時に修復してくれた。あの修復作業を信じられる人はひとりもいないと思うけれど、全員が冷静に作業をしていた。レーストラックはかなり滑っていたけれど、良いスタートを切ることができた。スタートからターン1までのプランを立てることはできないけれど、インサイドが詰まっているのが見えたので、アウトサイドから仕掛けてみようと思った。グリップが得られることが分かっていたから、上手くいった。スタートからしばらく7位が続いていたらレースはまったく違う結果になっていただろうね。スタートに成功したあとは戦略もすべて上手くいった。僕はタイヤを管理しながら安定したラップを重ねてバックマーカーたちをかわしていくだけだった。圧倒的な強さを見せているメルセデス勢の間に割り込めたのは素晴らしい結果だと思う。レースウィークエンドを通じて苦労していたし、予選も上手くいかなかったから、この結果が得られるなんて思っていなかった。メルセデスとの差を詰めていきたい。今の彼らは非常に強いので彼らを上回るのは簡単ではないと思うけれど、トライし続ける」
アレクサンダー・アルボン(5位)
「グッドレースだったし、次々とパスしていくのは楽しかった。昨日の時点で5位になると言われていたら、できることならそうしたいと言っていただろうね。13番グリッドからのスタートだから難しいレースになると思っていたけれど、上手くスタートできたし、そのあとも順調にポジションを上げていくことができた。このサーキットでオーバーテイクするのは簡単じゃないから、かなり大胆なムーブをする必要があった。ここでは限界ギリギリで仕掛ける必要があるけれど、今日はすべて上手くいったし、バトルを楽しめた。見せ場を作れるのは嬉しい。ファイトすれば良い結果が得られる印象だったし、マシンのブレーキングも好調だったからどんどん仕掛けることができた。フェラーリ勢に蓋をされてしまってタイムをかなり失ってしまった。あれがなければもっと上位に迫れていたと思う。でも、マシンは絶好調だった。空気がクリーンならかなりのスピードが得られていたし、競争力は十分だった。今日の結果には満足しているし、チームに十分なポイントを持ち帰ることができた。予選がトリッキーだったから、今日の結果には感謝しておくべきだろうね。予選よりもペースがかなり良かったのはちょっと驚きだったけれど、ポジティブな驚きだし、マシンが上手く機能している証拠だ」
クリスチャン・ホーナー(チーム代表)
「今日はメカニックが見事な仕事をした。マックスの結果は彼らのおかげだ。グリッド上で20分でマシンを修復するというのは素晴らしい。彼らは大汗をかきながら作業していた。彼らは本当に素晴らしい仕事をしてくれている。今回はレースウィークエンドを通じていくつもの改良を行っており、金曜も夜遅くまで働いてくれた。言うまでもなく、昨日の予選でかなり追い詰められていたので、あそこから立ち直ってメルセデス2台に割り込んで2位を獲得できたのは素晴らしい結果だ。マックスは全力で走っていたし、アレックスも見事なレースだった。後方からスタートして素晴らしいラップを記録しながら、アレックスの持ち味を出してオーバーテイクを続けていったことが最高のリカバリードライブに繋がった。マシンは決勝の方が状態が良く、戦術も良いが、プレシーズンから加えてきたアップデートの一部が期待通りの結果を出していないので、データを精査してシルバーストン前に原因を突き止めたい」
カテゴリー: F1 / レッドブル・レーシング / ホンダF1 / F1ハンガリーGP