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レッドブル・ホンダのF1オーストリアGPの優勝は“スイスの時計”のような精密なパッケージングとホンダのジェットエンジン技術を応用したF1エンジンの信頼性によってもたらされた勝利だった。

F1オーストリアGPでは、マックス・フェルスタッペンがメルセデスの開幕からの8連勝にストップをかけた。

決勝日は30℃の超える高い気温のなかで行われた。会場となったレッドブル・リンクは海抜700mの高地に位置し、平地と比較して約7%ほど空気が薄い。

これによって王者メルセデスは、冷却に苦しみ、オーバーヒートを抑えるためにエンジンを抑え、惰性運転を余儀なくされた。

メルセデスのエンジニアのアンドリュー・ショブリンは“ラップあたり約400m”を惰性で走行せざるを得なかったと語る。それはレッドブル・リンクのレイアウトではほぼ10%に及ぶ。

メルセデスは、弱点だった低速コーナーのパフォーマンスを向上させるために今季マシン『W10』にアグレッシブなパッケージングを採用。それが、メルセデスが“アキレス腱”と呼ぶ冷却問題を引き起こした。

一方、優勝したレッドブル・ホンダは、ホンダのF1テクニカルディレクターを務める田辺豊治曰く「冷却という点ではギリギリでした。もちろん、高温のせいで我々もパワーユニットをセーブすることを余儀なくされました。できるだけ多くのパワーを引き出せるようトライしていました」というようにメルセデスは異なり多くのパワーを引き出せている。

レース終盤にマックス・フェルスタッペンに無線で伝えられた『エンジンモード11、ポジション5』という指令は耐久性を犠牲にしてでもエンジンをハイパワーで稼働させるハイリスクなモードだった。

「パフォーマンスを上げるモードを伝えました」と田辺豊治は語る。

「レース週末前からチーム側から『行けるところまで行きたい』と言われていました。我々も『行けるところまで行くよ』と話をしていました。レース中にエンジンの状況を確認しながら『もっと行ける』と我々のほうから伝えました」

これはレッドブルとホンダが突き詰めたパッケージングとF1エンジンに応用されたジェットエンジン技術が奏功していた。

シーズン開幕前、レッドブルのF1チーム代表を務めるクリスチャン・ホーナーは、ホンダのF1パワーユニットのパッケージングはこれまでのマシンのなかで最高であり、その美しさをスイス製の時計に例えていた。

「我々はこれほどエンジンを完璧に設置したことはいまだかつてない。ボディワークの下はまるでスイス製の時計のようだ」とクリスチャン・ホーナーはコメント。

ホンダは2019年もコンパクトなF1エンジンを設計するというアップローチは継続しており、それによってパフォーマンスが傷つけられることはないと主張としていた。

パフォーマンスとパッケージング間のトレードオフについて質問された田辺豊治は「我々は中立だと考えています」とコメント。

「パワーユニットのパフォーマンス、またはトータルのパッケージでのパフォーマンスについては、レッドブル・レーシングとスクーデリア・トロ・ロッソの両方と多くの議論を重ねてきました。解決するための妥協点を見つけていますし、その方がいいです」

「より多くのパワーがあれば、パフォーマンスは向上しますが、その一方でシャシー側に損失が出てきます。ベストな妥協点はどこか?ということです。そのようにして我々は全体的なパッケージとしてのベストなパフォーマンスを決定しています」

田辺豊治は、レッドブル・テクノロジーによって、よりコンパクトなF1エンジン設計への取り組みが駆り立てられたと語る。

「レッドブル・テクノロジーがチーム間でそれを議論してくれたことで、我々の仕事は非常にシンプルなものになりました」と田辺豊治は語る。

「目的はコンパクトかつ素晴らしいものにすることです。そこが我々がオフシーズン中に行ってきたことです」

また、今季型のパワーユニットの“スペック3”導入時に話題となったジェットエンジン技術の応用も成果を挙げている。

ホンダのF1開発研究部門でありHRD Sakuraの人員は、過去2年間にわたって同社の航空エンジン研究開発部門との関係を強化。昨シーズン後半に導入された2018年のスペック3のMGU-Hでは信頼性面で大幅な進歩を果たした。

航空機用のエンジンには過酷な環境に耐えうる信頼性が求められる。ホンダの航空エンジン研究開発部門は、小型軽量、低燃費、低エミッションのエンジンの開発に注力してきた。

田辺豊治は「ジェットエンジン自体はまったく異なります」と語っている。

「ですが、ターボチャジャーとMGU-Hはジェットのタービンのようなものです。高速回転を使用しており、タービンには空力設計が必要です。そこには非常に共通した技術があると思います」

「高効率ターボチャージャーがあれば、ICE側だけでなく、MGU-H側でもその利益を共有できます。このスペック3の開発では特に高効率ターボチャージャーが挙げられます」

これらレッドブルとホンダの協力体制によって、F1オーストリアGPで優勝は達成された。

クリスチャン・ホーナーは「それ以来、我々は彼らの真の献身と決意を目の当たりにしている。それが今日のレースで優勝できた理由だ。今日、田辺さんがコンストラクタートロフィーを受け取った。彼らが注いだすべての努力によって表彰台に日本の代表が立っているのを見るのは素晴らしいことだった」と称賛した。

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カテゴリー: F1 / レッドブル・レーシング / ホンダF1