マクラーレンF1がノリスの予選不振に対応 新サスペンションの詳細判明
マクラーレンのフロントサスペンションに関する新たな詳細が明らかになり、ランド・ノリスの予選での苦戦を改善する鍵として注目されている。

ランド・ノリスは、2025年型マクラーレンF1マシンにおいて「限界域での手応え」が薄いことに苦しんできた。特に予選Q3での1周に集中したアタックでは、マシンの動きを正確に感じ取ることができず、チームメイトのオスカー・ピアストリとの戦いで後れを取る場面が目立っていた。

ノリスとチームメイトのオスカー・ピアストリは、MCL39のフィーリングについて「感覚が鈍い」と感じており、マクラーレンは前戦F1カナダGPでフロントサスペンションの改良版をテストした。さらに今回のオーストリアGPに向けては、フロントサスペンションのジオメトリーにさらなる変更を加えるとともに、マシンの安定性と全体的なパフォーマンスを向上させるために、前後の空力デバイスも再設計している。

ランド・ノリスは今季これまで、特に予選Q3でのアタック時にマシンからのフィードバックが不足し、「限界での手応え」が得られないことに苦しんできた。ステアリングを通じた“cueing(きっかけ)”の弱さが影響しており、これはピアストリもある程度感じているが、より順応できていることで予選では4勝2敗とノリスに対して優勢を保っている。

マクラーレンはこの問題の根源を探るべく、ノリスの詳細なフィードバックをもとに開発を進めてきた。特に4月のサウジアラビアGPとマイアミGPの間に、ノリスはウォーキングのシミュレーターに長時間取り組み、フロントアクスルの反応の薄さを徹底的に分析した。

ランド・ノリスの問題解決となるか?
マクラーレンのエンジニアリング部門テクニカルディレクター、ニール・ホールディは、レッドブル・リンクでCrash.netを含むメディアに次のように説明している。

「詳しくは話さないが、グリッド全体を見ても、リアサスペンションには多くの変更が加えられている。いわゆるサスペンションのキネマティクス(運動構造)というやつだ」

「今回のイベントでは、主にコーナーの進入時にリアの安定性を少し向上させると思われるものを追加した」

「空力面での性能向上が難しくなってくると、こうした開発領域に注力するようになる。我々はそうした取り組みを行っており、引き続きマシンの性能を進化させているところだ」

さらにホールディは、今季開幕以来ノリスが訴えてきたマシンの感覚的な問題を解決するために、今回のアップグレードが用意されたことを認めた。

「もちろんランドからはデブリーフィングでさらに詳しいフィードバックを受け取っている。彼がマシンを改善するために何を必要としているのか、我々は理解していて、今回のアップグレードのいくつかは彼のコメントを反映させた内容になっている」

「当然のことながら、ドライバーが必要としているものを見極め、それに合わせてアップグレードを調整していくものだ」

「我々は彼が何を必要としているのかをよく理解しており、いくつかの領域で小さな改善を施すことができた。これまでの数戦でもそれが彼の助けになっており、今後も引き続きプラスになるはずだ」

こうした変更は、ピアストリにも適用可能であり、マクラーレンは2台のマシンを同等のレベルに保ちながら、全体の性能向上を狙っている。

「最終的にはすべてを2台に装着する予定だ。2台のマシンを非常に近いレベルで維持することができている」とホールディは語った。

「サスペンション変更とフロントウイングの変更はどちらのマシンにも使えるようになっている」

「もし分析の結果としてその方が速くて、ドライバーがそれを好むなら、現在の仕様を維持することもできるし、アップグレードを適用することもできる。それはセッションから得られるデータ次第だが、我々の期待としては、パフォーマンスのアップグレードを前進させているということだ」

「こうしたすべての要素で、複数のシナリオの中から最適解を見つけ出そうとしている。サスペンションについても同様だった」

「ある部分に懸念があって、それが実際には問題ないとわかってきたので、今は性能を最適化するためにトレードオフを繰り返している。そしてランドにとって最適なセットアップを、ようやく見つけられたと考えている」

マクラーレン F1 ランド・ノリス

予選成績で劣勢のノリス、焦りがミスを誘発
予選でのノリスは、ここまでピアストリに8勝4敗(スプリント除けば6勝4敗)とリードを許しており、カナダGPではQ3での攻めすぎが仇となって7番手に沈んだ。自身も「ミスの多さがタイトル争いに直結する要因」と認めており、特にピアストリとの接触を招いたカナダでの予選を「自分の過ち」と総括している。

「このサスペンションの変更は、車のパフォーマンスを引き出すというより、自分により良い感触を与えることを目的としている。でもその感触が最終的にパフォーマンスにつながるなら、それは理想的だ」

「僕自身、そしてチームとしても改善に取り組んでいて、今週末のオーストリアはその成果を試す良い機会になるはずだ」

ノリスの苦戦は単なるドライビングの問題ではなく、マシンの感触そのものに起因する構造的な課題だった。マクラーレンが施した改良がその「壁」を打ち破る鍵となるのか。チームはついに“最適解”を見つけたと確信している。

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カテゴリー: F1 / マクラーレンF1チーム / ランド・ノリス