マクラーレン・ホンダ F1 モナコGP
マクラーレン・ホンダは、F1モナコGPの決勝で ジェンソン・バトン、ストフェル・バンドーンともにリタイアという結果に終わった。

ストフェル・バンドーンは、レース中盤にほかのドライバーが次々とピットストップを行った際に7番手を走行。レース終盤には10番手を走行し、ポイントを獲得するためにいいポジションにつけていた。

ただ残念ながら、バンドーンはレース終盤に導入されたセーフティカーが解除されたあと、アクシデントに見舞われた。タイヤとブレーキが冷えていたためにアンダーステアになり、サン・デボーテでタイヤウオールにクラッシュ。66周目でリタイアする結果となった。

一方、今週末にバンドーンのチームメートとして出場したジェンソン・バトンにとって、午後のレースが厳しい内容になることは最初から分かっていた。パワーユニットのコンポーネント交換によってグリッド後方からのスタートを余儀なくされたため、戦略担当者はバトンを1周目でピットストップさせて、渋滞のない中で別の戦略に出ることを決断した。

ただ、同じラップでザウバーもパスカル・ウェーレインをピットストップさせることにしたために、バトンのピットストップはすぐにその効果を失ってしまった。ピットストップ後にマシンを安全にリリースしなかったことで、ウェーレインに5秒間のペナルティーが科せられたものの、1周目の戦略的なピットストップがバトンの午後の残りのレースを決定づけるかたちとなった。

前方を走るザウバーのマシンをなかなかオーバーテイクできなかったため、チームは戦略を練り直し、バトンはレース中盤でオプションタイヤに履き替えるためにピットインした。その後、ウェーレインに追いついたバトンは、ポルティエでイン側からのオーバーテイクを試みたものの、両マシンが激突。ウェーレインのマシンはタイヤウオールに横向きにクラッシュし、バトンはマシンの左側フロントコーナーを破損した状態でハーバーフロントの避難用道路の端にマシンを止めた。

ジェンソン・バトン

「今日は、レースでポジションを上げることができず、残念な一日だった。1周目から非常に難しいレースとなり、その後、ウェーレインとのアクシデントが発生した。彼のマシンのタイヤは、1周目から完全に摩耗した状態だった。僕はスタート直後にピットインし、レース開始時点から彼と同じ種類のタイヤを装着していたので、彼のタイヤの状態は分かっていた。タイヤが路面に付着したラバーの上を走るときにはグリップが全くないので、前のコーナーからの立ち上がりの際に、かなりのトラクションを抱えていた。十分に距離を置いた上でイン側を刺したつもりだったが、横を見ると、ウェーレインが僕に気づいていないことが分かった。そこで、後ろに下がろうとしたが、すでに手遅れだった。このマシンに乗っていると、周囲を見渡しにくいのは確かだ。ただ、イン側に入ったときに相手が自分のことを見えないかもしれないとは、その瞬間には思わない。オーバーテイクを仕掛けて、ちゃんと判断したと思ったが、うまくいかなかった。マシンが横転すると、ドライバーの頭がなにかにぶつかるかどうかが分からないので、そのような光景を目にしたくはない。ただ一番大事なことは、ウェーレインが無事だったことだ。彼と話をしたところ、当然のことながら少し動揺していたが、彼にケガがなかったことがなによりだ。今日は少しフラストレーションが溜まった。レーシングドライバーとしては、後方でドライブしているだけで、オーバーテイクのチャンスがないというのは難しいものだ。実際にオーバーテイクを仕掛けて、ちゃんと判断したつもりだったが、失敗に終わった。今週末に、マシンにダメージを与える結果になった点については、チームに対して申し訳なく思う。今日も数周は走行を楽しむことができた。ただ、マシンに損傷を与えるつもりは当然なかったし、そういった結果につながったことはそう多くはない。昨日はすばらしい気分だったし、予選を心から楽しむことができた。今週末は、たくさんのいい思い出を胸にサーキットを去る。フェルナンドが午後に安全で、いいレースをしてくれることを願っている。みんなで楽しみにしている」

ストフェル・バンドーン

「今週末に、1ポイントも獲得できなかったことは残念だ。今回は僕たち全員がもう少しいい結果を期待していたと思う。レース終盤の再スタートの際に、困難な状況になることは分かっていた。スーパーソフトタイヤを温めるのは常に難しく、セーフティカー導入時にオプションタイヤに履き替えたセルジオ・ペレス(フォース・インディア)とフェリペ・マッサ(ウィリアムズ)を後方にとどめることはできないだろうと考えていた。ただ、セーフティカー導入時にタイヤ交換のためピットインすることは、僕たちの選択肢にはなかった。トップ10圏内を走行している際は、そのポジションを維持しなければならない。タイヤとブレーキをなかなか温めることができず、残念ながら1コーナーではどこにも行きようがなかった。今回の結果は、今週末に僕たちが期待していたものではないが、モナコ戦ではポジティブな点もあった。全体的なパフォーマンスはまだ十分ではないものの、今週末は有効な進化を遂げることができた。まだやるべきことは多くあるが、僕は前向きな気持ちでいる」

エリック・ブーリエ (マクラーレン・ホンダ レーシングディレクター)

「モンテカルロのカジノを訪れて、大儲けをすることもあれば、手ぶらで帰ることもある。今日は我々にとって、運に恵まれなかった不運な一日であっただけに過ぎない。ジェンソンがレースを後方からスタートすることは、分かっていた。ただ、ザウバーが我々と全く同じ戦略に出たことで、渋滞のない中でジェンソンを走らせようという目論見が台無しになってしまったことは残念だ。ウェーレインのマシンが安全にリリースされなかったにもかかわらず、それによって彼が受けたペナルティーがジェンソンにとってはなんの得にもならなかったことは、残酷なことだったと言えるだろう。2台のクラッシュはレースでは起こり得るものだが、両ドライバーにケガがなくてよかった。その後は、残ったストフェルに焦点を当ててレースを展開し、今日はまずまずの結果が得られるのではないかと思っていた。ストフェルはレース全体にわたって、トップ10周辺を常に走行し、オプションタイヤでのペースは非常に期待できるものだった。プライムタイヤに履き替えたあとも、入賞することは確実だと思っていた。しかしながら、セーフティカー導入後のレース再開の際に、タイヤとブレーキが温まっていなかったためにアンダーステアとなり、1コーナーのタイヤウオールにクラッシュしてしまった。それでも、ポジティブな点はある。今週末はストフェルが、ドライビングとマシンに対する自信の持ち具合という面で、確実に一歩前進したと思う。また、ジェンソンは彼が今も偉大なチャンピオンであり、F1というスポーツにとってすばらしい大使の役割を担っていることを示してくれた。最後に、インディ500でレースに臨むフェルナンドと我々の仲間に『幸運を』というメッセージを送りたい」

長谷川祐介 (ホンダ F1プロジェクト総責任者)

「今日は残念なレースになってしまいました。ストフェルはペナルティーにより12番手からのスタートでしたが、プラクティスからペースがいいのは分かっていたので、オーバーテイクが難しいここモナコでも、ポイント獲得のチャンスはあると思っていました。実際に賢明なピット戦略と彼の見事な走りにより、ポイント圏内に届いたことはすばらしかっただけに、あのような接触でポイントを逃してしまったことは本当に悔しく残念です。ジェンソンにも速さはあったと思いますが、前を走るライバルに引っかかり、なかなかペースを上げられない状況でした。終盤の接触によりリタイアするかたちになりましたが、昨日の予選でのパフォーマンスなど、スポット参戦とは思えない活躍を披露し、伝統ある華やかな舞台でチームに明るい雰囲気をもたらしてくれた週末でした。テクニカルサーキットのモナコから一転、次戦はパワーサーキットであるカナダで、インディから戻ってくるフェルナンドを迎えて戦うことになります。次はカナダになりますが、まずはその前に、フェルナンドのインディ500での活躍をテレビで見守ることにします」

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カテゴリー: F1 / マクラーレンF1チーム / ホンダF1 / F1モナコGP