F1日本GP中止の舞台裏 「100%やり切ったが期限までに回答がなかった」
2021年もF1日本GPを中止するという“苦渋の決断”に至った経緯について、鈴鹿サーキットを運営するモビリティランドの田中薫社長が記者会見で改めて説明した。
今年は、ホンダのラストイヤー、そして、7年ぶりの日本人F1ドライバーとして参戦する角田裕毅の凱旋レースということもあり、鈴鹿サーキットは時間をかけて準備を進めてきた。
しかし、開催まで2か月を切った8月18日(水)に2021年も2年連続で開催を中止することを発表。
SUPER GTが開催されている鈴鹿サーキットで記者会見を行った田中薫社長は「ホンダラストラン、角田裕毅選手の凱旋レースということもあり、期待を持って準備を進めてきました」と語った。
「しかし、最終的に約1500名のF1関係者の入国の見通しが立たず、苦渋の決断として、断念せざるを得ませんでした。特に今年は特別な年でしたが、2年連続でF1が開催できないことになり、大変残念です」と語った。
最大のネックとなったのは、F1関係者の入国ビザの発給と防疫対策だった。
「現在、日本は基本的に外国人の入国を認めておらず、スポーツイベント全般を開催する場合、特に外国人が入国する競技に関しては入国ビザを発行していただく必要があります。それが一番のネックでした」
「また、防疫対策として、オリンピックでおご存じのバブル方式が採用されていますが、実現のために徹底的な準備をしてきました」
F1日本GPの開催にむけて、FOWC(Formula One World Championship Limited)は多大な協力をしてくれたと田中薫社長は語る。
「スポーツイベントに関しての所管官庁はスポーツ庁になり、F1に関しても窓口になって頂きました。FOWCと一緒に様々な書類を提出しました。FOWC側もステファノ・ドメニカリCEOを含め、なんとか開催したいということで、非常に協力をしていただきました」
「実際、1500名の関係者の氏名や国籍など、入国に関する情報をリスト化しました。国籍それぞれの日本大使館に行ってビザを出してもらわなければならないという大変な作業になりますが、FOWCに非常に協力して頂き、提出しました」
「しかし、どこかのタイミングで判断しなければなりません。F1チーム関係者への入国ビザの発給が見通しが立たず、FOWCとの協議の上、今回の決定に至りました」
鈴鹿サーキットは、F1日本GPの実現にむけて、ホンダなどの関係も仰いで政府へと働きかけていた。
「所管はスポーツ庁となり、スポーツ庁とやりとりを行いました。最終的には入国に関する防疫措置緩和、その他の制限緩和に関して協議して頂いたと理解している。政府に対しての嘆願という観点では、JAF、日本自動車工業会、本田技研工業株式会社などの各関係にも協力していただきました」
「今回、我々も学習しましたが、ビザを発給するのは外務省、防疫は厚生労働省、入国は法務省と窓口が違います。そうした関係各所に防疫体制を確立したということが認められなければ、入国ビザは発給されません」
日本政府などビザを発給できないかとか説明があったという質問に対して、田中薫社長は「具体的な理由は分かりません」とコメント。
「分かっていることは、中止を決めた時点で、見通しへの回答が得られなかったということです。防疫関連の計画やリストなど必要な書類は提出しましたが、これを出せば必ずビザが発給されるという話ではなく、必ず出しませんという状況でもありませんでした。期限の段階でその状況でした」
ファンからは、オリンピックや野球は開催できているのに、なぜモータースポーツはできないかと考えるとの声も挙がっている。
「それぞれの競技ごとに特性や条件が違うと思います。弊社のTwitterにそういった声を頂いたりもしますが、我々としてはそれにお答えするのは難しいです。人数や競技形式、観客の環境など一概には言えません」と田中薫社長は語った。
書類関係や防疫計画などについて「ほぼ100%に近く、業務としてやるべき事はやりました」と田中薫社長は語る。
「防疫計画にしても、移動ルートの引き方、例えば空港からホテルまでのバブルを形成して、どこにもよらずに直行してもらう。宿泊施設もフロアの一棟借り、ホテルからサーキットへの移動にも計画を立てていました。そうした防疫措置の準備はやりきったと感じていました。やれるべき事はやりきりましたが、回答がよく見えず、入国許可の見通しが立ちませんでした」
ホンダラストイヤーにかける思いなどは政府に「理解はしていただいていたと思いますと田中薫社長は語る。
「しかし、1500人の外国人が入国するというF1は、国際的な行事であるオリンピックを除けば、最も大きなイベントだと思います。その意味では、かなり慎重にならざるを得なかったんだと思います」
「文化としての成熟度という意味で、ヨーロッパとは違いがあります。そこは業界全体で努力を続けていかなければならないと思っています。ただ、公益性という意味であれば、日本の基幹産業である自動車産業と技術の発展・振興につながると考えており、それはJAFも含めてこれまでも訴えてきている。F1に関しては、公益性は理解されたと考えています」
最後に2022年の日本GPに向けては田中薫社長は「来年から2024年まで日本GPを開催する契約をすでに結んでいます」とコメント。
「特に2022年に関しては鈴鹿サーキットが60周年ということで、お客さまにさらに楽しんでいただき、お礼も兼ねて特別なGPにしたいです。すでに準備を進めていますし、来年に向かってしっかりやっていきたいと思っています」
カテゴリー: F1 / F1日本GP
今年は、ホンダのラストイヤー、そして、7年ぶりの日本人F1ドライバーとして参戦する角田裕毅の凱旋レースということもあり、鈴鹿サーキットは時間をかけて準備を進めてきた。
しかし、開催まで2か月を切った8月18日(水)に2021年も2年連続で開催を中止することを発表。
SUPER GTが開催されている鈴鹿サーキットで記者会見を行った田中薫社長は「ホンダラストラン、角田裕毅選手の凱旋レースということもあり、期待を持って準備を進めてきました」と語った。
「しかし、最終的に約1500名のF1関係者の入国の見通しが立たず、苦渋の決断として、断念せざるを得ませんでした。特に今年は特別な年でしたが、2年連続でF1が開催できないことになり、大変残念です」と語った。
最大のネックとなったのは、F1関係者の入国ビザの発給と防疫対策だった。
「現在、日本は基本的に外国人の入国を認めておらず、スポーツイベント全般を開催する場合、特に外国人が入国する競技に関しては入国ビザを発行していただく必要があります。それが一番のネックでした」
「また、防疫対策として、オリンピックでおご存じのバブル方式が採用されていますが、実現のために徹底的な準備をしてきました」
F1日本GPの開催にむけて、FOWC(Formula One World Championship Limited)は多大な協力をしてくれたと田中薫社長は語る。
「スポーツイベントに関しての所管官庁はスポーツ庁になり、F1に関しても窓口になって頂きました。FOWCと一緒に様々な書類を提出しました。FOWC側もステファノ・ドメニカリCEOを含め、なんとか開催したいということで、非常に協力をしていただきました」
「実際、1500名の関係者の氏名や国籍など、入国に関する情報をリスト化しました。国籍それぞれの日本大使館に行ってビザを出してもらわなければならないという大変な作業になりますが、FOWCに非常に協力して頂き、提出しました」
「しかし、どこかのタイミングで判断しなければなりません。F1チーム関係者への入国ビザの発給が見通しが立たず、FOWCとの協議の上、今回の決定に至りました」
鈴鹿サーキットは、F1日本GPの実現にむけて、ホンダなどの関係も仰いで政府へと働きかけていた。
「所管はスポーツ庁となり、スポーツ庁とやりとりを行いました。最終的には入国に関する防疫措置緩和、その他の制限緩和に関して協議して頂いたと理解している。政府に対しての嘆願という観点では、JAF、日本自動車工業会、本田技研工業株式会社などの各関係にも協力していただきました」
「今回、我々も学習しましたが、ビザを発給するのは外務省、防疫は厚生労働省、入国は法務省と窓口が違います。そうした関係各所に防疫体制を確立したということが認められなければ、入国ビザは発給されません」
日本政府などビザを発給できないかとか説明があったという質問に対して、田中薫社長は「具体的な理由は分かりません」とコメント。
「分かっていることは、中止を決めた時点で、見通しへの回答が得られなかったということです。防疫関連の計画やリストなど必要な書類は提出しましたが、これを出せば必ずビザが発給されるという話ではなく、必ず出しませんという状況でもありませんでした。期限の段階でその状況でした」
ファンからは、オリンピックや野球は開催できているのに、なぜモータースポーツはできないかと考えるとの声も挙がっている。
「それぞれの競技ごとに特性や条件が違うと思います。弊社のTwitterにそういった声を頂いたりもしますが、我々としてはそれにお答えするのは難しいです。人数や競技形式、観客の環境など一概には言えません」と田中薫社長は語った。
書類関係や防疫計画などについて「ほぼ100%に近く、業務としてやるべき事はやりました」と田中薫社長は語る。
「防疫計画にしても、移動ルートの引き方、例えば空港からホテルまでのバブルを形成して、どこにもよらずに直行してもらう。宿泊施設もフロアの一棟借り、ホテルからサーキットへの移動にも計画を立てていました。そうした防疫措置の準備はやりきったと感じていました。やれるべき事はやりきりましたが、回答がよく見えず、入国許可の見通しが立ちませんでした」
ホンダラストイヤーにかける思いなどは政府に「理解はしていただいていたと思いますと田中薫社長は語る。
「しかし、1500人の外国人が入国するというF1は、国際的な行事であるオリンピックを除けば、最も大きなイベントだと思います。その意味では、かなり慎重にならざるを得なかったんだと思います」
「文化としての成熟度という意味で、ヨーロッパとは違いがあります。そこは業界全体で努力を続けていかなければならないと思っています。ただ、公益性という意味であれば、日本の基幹産業である自動車産業と技術の発展・振興につながると考えており、それはJAFも含めてこれまでも訴えてきている。F1に関しては、公益性は理解されたと考えています」
最後に2022年の日本GPに向けては田中薫社長は「来年から2024年まで日本GPを開催する契約をすでに結んでいます」とコメント。
「特に2022年に関しては鈴鹿サーキットが60周年ということで、お客さまにさらに楽しんでいただき、お礼も兼ねて特別なGPにしたいです。すでに準備を進めていますし、来年に向かってしっかりやっていきたいと思っています」
カテゴリー: F1 / F1日本GP