ホンダF1:2020年 F1サヒールGP 決勝レポート
F1サヒールGPの決勝は、ホンダF1パワーユニット勢にとってはフラストレーションの溜まる展開となり、アストンマーティン・レッドブル・レーシング、スクーデリア・アルファタウリ・ホンダともに、ポイント獲得をかけた厳しい戦いを強いられた。

外周コースでの初開催となった今大会だが、周回数はF1史上最多の87周。ラップタイムは1分を切り、息もつかせぬ展開となったが、両チームにとっては運に振り回される結果となった。

3番グリッドからスタートしたマックス・フェルスタッペンは、ミディアムタイヤを履いたメルセデス勢に対して、ソフトタイヤでいいスタートを切れるアドバンテージがあった。フェルスタッペンは好スタートを決めたものの、ターン1で行き場をなくして3番手にとどまる。ターン4へ向かうまでにセルジオ・ペレス(レーシングポイント)とバルテリ・ボッタス(メルセデス)に追いつかれ、接触を避けるために早めにブレーキング。しかし、イン側にいたシャルル・ルクレールはペースを緩めずにペレスにヒットし、回避行動をとったフェルスタッペンはアウト側にコースアウトすると、そのままウォールにヒットしてリタイアとなってしまう。

6番グリッドのダニール・クビアトと、9番グリッドのピエール・ガスリーも、ともにソフトタイヤでスタート。オープニングラップのインシデントには巻き込まれず、それぞれ5番手と7番手に順位を上げる。ミディアムタイヤを選択したアレクサンダー・アルボンは、12番手をキープした。

セーフティカーが解除されると、コース上はDRSトレイン状態となり、オーバーテイクは難しい状況に。クビアトは27周目にピットインしてミディアムタイヤに履き替えると、前方にいたダニエル・リカルド(ルノー)に対するアンダーカットを成功させ、ポジションを逆転する。一方、その1周後にピットインしたガスリーは、逆に差を広げられる形となった。

アルボンはミディアムタイヤでのロングスティントを走行した後、ハードタイヤに交換して1ストップ作戦に挑む。しかし、ジャック・エイトケン(ウイリアムズ)のクラッシュによって再びセーフティカーが出動し、このタイミングでレッドブル・レーシングは、レース終盤のバトルに向けてソフトタイヤへの交換を決断する。

レース再開後、1ストップ作戦を採ったドライバーたちがポジションを上げ、またもやDRSトレインが形成される。これにより、アルボンはリカルドの後方6番手でチェッカーフラッグを受けた。

クビアトは、53周目に2度目のピットストップを行い、ハードタイヤに交換。この直後にバーチャルセーフティカーが導入されたことでポジション回復ができず、7位でフィニッシュ。51周目にピットインしたガスリーも同様で、11位まで順位を落としてレースを終えた。

次戦は1週間後のアブダビGP。いよいよ今シーズンの最終戦となる。

田辺豊治(ホンダF1 テクニカルディレクター)
「波乱含みとなった今日のサヒールGP決勝は、アストンマーティン・レッドブル・レーシングのフェルスタッペン選手が、オープニングラップでクラッシュに巻き込まれてリタイアとなるなど、全体として悔しいレースになりました。レッドブル・レーシングのアルボン選手は12番グリッドから6位まで順位を上げましたが、本人も満足いくレースではなかったと思います。また、スクーデリア・アルファタウリ・ホンダのクビアト選手は、金曜から速さを見せていただけにセーフティカーの影響などもあっての7位フィニッシュは、残念な結果だと感じています。ガスリー選手にとっても難しいレースとなり、なかなかペースが上がらず入賞を逃して11位でレースを終えました。来週はいよいよシーズン最終戦です。気持ちを切り替え、いい結果とともにシーズンを締めくくれるよう、最後まで全力で臨みます。また、今回のレースで初優勝を果たしたセルジオ・ペレス選手とダブルポディウムを獲得したレーシング・ポイントのみなさんに、祝福の言葉を贈りたいと思います」

アレクサンダー・アルボン(レッドブル・ホンダ)
「今日のレースは波乱の展開になりました。何が起こっていたのかよく分かりませんが、12番グリッドから6位まで上がれたことは悪くないと思っています。ただ、もう少し上に行きたかったという気持ちもあります。僕のマシンはストレートでのスピードが足りず、DRSのトレインにいるときには他のマシンに対して今の位置を守るのが精いっぱいでした。ストレートでのオーバーテイクが難しいので、思い切って1コーナーに飛び込んでいくしか手がありませんでした。ダウンフォースの設定が、オーバーテイクのできない第2セクターで速いものになっており、そのようなセッティングでこのレースを戦うのは難しかったです。ここからは気持ちを切り替えて、数日後にやってくるアブダビGPにフォーカスしていきます」

ダニール・クビアト(アルファタウリ・ホンダ)
「今週は非常にいい流れで来ていたので、もっといい結果で終わりたかったと思っています。ただ、セーフティカーが出たときは『これはあんまりいいタイミングじゃないな』と思ったので、その上での7位は悪くない順位です。今日はチームの戦略もすべてうまくいきましたし、昨日の予選も完璧でした。今日のレースもほとんど完璧に走れたと思うので、自分のパフォーマンスには満足しています。よく戦えた週末ですし、今年の中で一番いいレースウイークでした。ペースはよかったですし、中団のトップまではあと少しのポジションで、僕とカルロス(サインツ)、リカルドが0.2秒差ほどで並んでいたときもあり、とても楽しかったです。今回のような形でポイントをとれたことをうれしく思っています」

ピエール・ガスリー(アルファタウリ・ホンダ)
「今日はとてもタフなレースでした。ペースが足りず、自分が考えていたようなレースができませんでした。リアに苦しみ、かなりのアンダーステアが出ていました。さらに、バーチャルセーフティカーのタイミングも、僕らにとっては不運でした。大波乱のレースになり、表彰台の顔ぶれを見ると、僕らにも大きなチャンスがあったと思いますし、そこに加われなかったことが残念です。データをよく確認し、なぜ金曜に比べて今日はこんなに苦しくなったのかを理解する必要があります。そして、うまくいった部分も振り返り、アブダビで好結果を出してシーズンを締めくくれるように挑んでいきます」

マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)
「今日はいいスタートを切れたのですが、周りを他のマシンに囲まれてしまいました。トラブルを避けようとしましたが、周りのドライバーがとてもアグレッシブで、まるで最終ラップかのようにリスクを冒して攻めていました。特に、シャルル(ルクレール)は4コーナーでイン側に迫って来て、路面が汚れているのにブレーキングをかなり遅らせました。彼が他のマシンを抜きたかったのは分かりますが、楽観的過ぎたと思います。シャルルのことは尊敬していますし、彼は素晴らしいドライバーですが、少しやり過ぎたと思います。チェコ(セルジオ・ペレス)は、イン側で何が起きているのか分からなかったはずで、シャルルが彼にヒットして後ろ向きにスピンしてしまいました。僕はマシンにダメージを受けないよう、アウト側に回避しようとしましたが、グラベルまで出てしまい、バリアにヒットしてしまいました。今回は戦えるマシンでしたし、好結果を出すチャンスだったので、こんなに早くリタイアするのはフラストレーションが溜まります」

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カテゴリー: F1 / ホンダF1 / レッドブル・レーシング / F1バーレーンGP / スクーデリア・アルファタウリ