ホンダF1 特集:F2 期待の日本人ドライバー 角田裕毅
今シーズンのF1は、オーストリアとハンガリーで3連戦という過密スケジュールでのスタートした。さらに、同時にF2とF3も開催されており、各シリーズを合計すると開幕からの16日間でF1が2レース、F2・F3が6レース行われた。
昨年、F3で表彰台獲得や優勝を果たした日本人ドライバー、角田裕毅は、今季CarlinのルーキーとしてF2にステップアップ。Red Bullカラーのマシンを操り、第1戦・第2戦のフリー走行ではでトップタイムを記録し、オーストリアの2戦目ではポールポジションを獲得、レース1では2位となった。
ヨーロッパでの活動を昨年始めたばかりの角田裕毅にとって、海外でのキャリアは順調な滑り出しとなった。弱冠二十歳にしてF2のドライバーに抜てきされたわけだが、その才能を見抜いてくれたホンダの育成プログラムに非常に感謝をしていると語る。
「2017年にF4へデビューしました。鈴鹿サーキットで、ホンダのスカラシップのテストを受けた年は、最後までうまくいったものの、ジャンプスタートやコースアウトなどのミスがありました」
「最初の年はミスも多く、テストにも落ちてしまいましたが、鈴鹿のテストで見てくれていた中嶋悟さんが、僕の才能を見抜いてくれ、翌年に、ホンダの育成ドライバーとしてF4に参戦することを推薦してくれました。中嶋さんには、本当に感謝しています」
角田裕毅は、ホンダフォーミュラ・ドリーム・プロジェクト(HFDP)の一員としての初年度を日本のFIA-F4選手権で総合3位という成績で終え、翌2018年にはタイトルを獲得。そこから、すべてが一気に動き出した。
「正直、昨年F3でレースができるとは思っていませんでした。ユーロフォーミュラ・オープンというカテゴリーでレースをするだけだと思っていました。最も驚いたのは、2019年にRed Bullジュニアに選ばれたことです」
「その前年に、ハンガロリンクのモーターパークでテストをしました。そこには、多くのRed Bullジュニアがいて、当時F3でトップ選手だったダニエル・ティクトゥムのような優秀なドライバーがたくさんいましたが、僕は毎回トップタイムを出していました。たいへんなテストでしたが、いい走りができ、翌年のF3のレースには自信を持って臨めました」
その自信が結果に表れたのか、角田裕毅は4戦連続でのポイント獲得を果たした後、スパ・フランコルシャンでのスプリントレースでは2位となり、F3では初となる表彰台に登壇。続くモンツァではレース1で3位、スプリントレースのレース2では6番グリッドから追い上げ、初優勝を果たした。
「特にコースに対応していくことが難しかったです。ほとんどのサーキットが初めてでしたし、F3でのレースも初めてでした。フリー走行が1回あった後、すぐに予選に入ってしまうので、本当にたいへんでした。F2へのステップアップやスーパーライセンスポイント獲得のためには、いい結果を出さなくてはいけないですし、簡単ではありませんでした」
「でも、初参戦のモンツァでは優勝できましたし、スパでは2位になれたので、いいシーズンでした。その年の初めは、予選のペースについてだけではなく、タイヤやそのマネジメントの面も少し時間をかけて学びました。完ぺきではありませんでしたが、F2へのステップアップができたので、F3は僕のキャリアの中で大きなターニングポイントになりました」
そう語る角田裕毅にとって、最も重要な瞬間なったのが、レッドブルF1のアドバイザーであるヘルムート・マルコ博士と行われた、ロシアでのミーティングだった。マルコ博士はロシア大会の前の2戦、スパでの2位、モンツァでの優勝という結果から、彼に注目していたようだ。
「もし、あのときにモンツァで勝っていなければ、もしかしたら今もF3にいたかもしれません。レッドブルとホンダが僕をF2にステップアップさせようと決めたレースは分かりませんが、モンツァでの2つのレースが彼らの心を動かして、僕をF2にステップアップさせてくれたことは間違いないと思います。モンツァでのレースウイークのあと、初めてマルコ博士からお祝いのメッセージをもらったので、本当にうれしかったです。普段も、レースの後に教えてくれたり、改善点について相談に乗ってくれたりしていましたが、モンツァで優勝してほめてもらえたときは、本当にうれしかったです」
「ロシアでレースをしているときに、F1パドックにあるRed Bullのホスピタリティに行ったら、『2020年はF2でレースをする』と言われました。F3に参戦するとばかり思っていたので、本当に驚きました。モンツァでは優勝、スパでは表彰台を獲得しましたが、それ以外のほとんどのレースでは十分な結果が出せたとは、僕自身感じていませんでした。だから、2020年もF3で参戦すると思っていたんです。僕と僕の走りを信じてくれたレッドブルとホンダには、本当に感謝しています」
これまでのキャリアで角田裕毅は、自身の可能性を見抜いてくれる人々に囲まれてきました。F2にステップアップすると、最初の2戦を通して速さを発揮。オーストリアの第2戦では、無線のトラブルが発生するまで、ポールトゥウインを期待させる走りをみせ、マルコ博士の判断は正しかったと証明した。
「7周目まではエンジニアと会話できていて、問題ないと確認していたので、無線は機能していると思っていました。でも、15~16周目くらいからリアタイヤが苦しくなってきたのに、エンジニアからの無線がなく、おかしいと思いました。その次のラップで、ピットウォールの方を見たら、メカニックが手を振っているのが見えました。よく見えなかったので、念のためもう1周しました。そしたら、僕がピットに気が付くように、エンジニアやメカニックが全力でたくさん手を振ってくれていました」
「無線のトラブルのせいで苦しみ、悔しい思いをしましたが、レースではこういうことも起きるといういい経験になりました。常にピットボードは見るべきで、毎ラップ積極的に確認することを学びました」
「ピットインしてからは、いいペースでした。すぐに2番手まで上がれましたが、先頭のロバート・シュワルツマン(PREMA Racing)との差はかなりあり、彼に追いつくために全力を尽くしました。タイヤマネジメントのことをあまり考えずにプッシュしてしまったので、終盤はリアタイヤとの戦いになってしまい、シュワルツマンに追いつくことができませんでした」
「いま思えば、もっとタイヤマネジメントをしていれば、レースの終盤にはシュワルツマンを簡単にパスできていたかもしれません。マルコ博士から電話があり、今後はそうするべきだと言われました。それでも、F2で初めて表彰台に上がれたことは、チームにも貢献できてうれしかったです」
ハンガロリンクは厳しい週末となったが、角田裕毅はルーキーながらもF2の頂点を狙える速さを見せている。そして、次はテストでも使われたシルバーストンでの2戦に臨む。角田裕毅の今季のシーズンでの目標は明確だ。高い目標であったとしても、角田裕毅はそれを達成するだけのパフォーマンスができると自信を持っている。
「スーパーライセンスを取得するためには、まずチャンピオンシップで4位以内に入ることが必要だと思っています。すでにいいぺースがつかめていますし、チームも僕と一緒にがんばってくれています。チームでのタイトル獲得のためにも、そして自分自身がF1にステップアップするためにも、チャンピオンを目指したいと思っています。まずは、トップ4を獲得することが目標ですが、チームのためにもチャンピオンを獲得したいです」
カテゴリー: F1 / ホンダF1 / レッドブル・レーシング / FIA F2 / 角田裕毅
昨年、F3で表彰台獲得や優勝を果たした日本人ドライバー、角田裕毅は、今季CarlinのルーキーとしてF2にステップアップ。Red Bullカラーのマシンを操り、第1戦・第2戦のフリー走行ではでトップタイムを記録し、オーストリアの2戦目ではポールポジションを獲得、レース1では2位となった。
ヨーロッパでの活動を昨年始めたばかりの角田裕毅にとって、海外でのキャリアは順調な滑り出しとなった。弱冠二十歳にしてF2のドライバーに抜てきされたわけだが、その才能を見抜いてくれたホンダの育成プログラムに非常に感謝をしていると語る。
「2017年にF4へデビューしました。鈴鹿サーキットで、ホンダのスカラシップのテストを受けた年は、最後までうまくいったものの、ジャンプスタートやコースアウトなどのミスがありました」
「最初の年はミスも多く、テストにも落ちてしまいましたが、鈴鹿のテストで見てくれていた中嶋悟さんが、僕の才能を見抜いてくれ、翌年に、ホンダの育成ドライバーとしてF4に参戦することを推薦してくれました。中嶋さんには、本当に感謝しています」
角田裕毅は、ホンダフォーミュラ・ドリーム・プロジェクト(HFDP)の一員としての初年度を日本のFIA-F4選手権で総合3位という成績で終え、翌2018年にはタイトルを獲得。そこから、すべてが一気に動き出した。
「正直、昨年F3でレースができるとは思っていませんでした。ユーロフォーミュラ・オープンというカテゴリーでレースをするだけだと思っていました。最も驚いたのは、2019年にRed Bullジュニアに選ばれたことです」
「その前年に、ハンガロリンクのモーターパークでテストをしました。そこには、多くのRed Bullジュニアがいて、当時F3でトップ選手だったダニエル・ティクトゥムのような優秀なドライバーがたくさんいましたが、僕は毎回トップタイムを出していました。たいへんなテストでしたが、いい走りができ、翌年のF3のレースには自信を持って臨めました」
その自信が結果に表れたのか、角田裕毅は4戦連続でのポイント獲得を果たした後、スパ・フランコルシャンでのスプリントレースでは2位となり、F3では初となる表彰台に登壇。続くモンツァではレース1で3位、スプリントレースのレース2では6番グリッドから追い上げ、初優勝を果たした。
「特にコースに対応していくことが難しかったです。ほとんどのサーキットが初めてでしたし、F3でのレースも初めてでした。フリー走行が1回あった後、すぐに予選に入ってしまうので、本当にたいへんでした。F2へのステップアップやスーパーライセンスポイント獲得のためには、いい結果を出さなくてはいけないですし、簡単ではありませんでした」
「でも、初参戦のモンツァでは優勝できましたし、スパでは2位になれたので、いいシーズンでした。その年の初めは、予選のペースについてだけではなく、タイヤやそのマネジメントの面も少し時間をかけて学びました。完ぺきではありませんでしたが、F2へのステップアップができたので、F3は僕のキャリアの中で大きなターニングポイントになりました」
そう語る角田裕毅にとって、最も重要な瞬間なったのが、レッドブルF1のアドバイザーであるヘルムート・マルコ博士と行われた、ロシアでのミーティングだった。マルコ博士はロシア大会の前の2戦、スパでの2位、モンツァでの優勝という結果から、彼に注目していたようだ。
「もし、あのときにモンツァで勝っていなければ、もしかしたら今もF3にいたかもしれません。レッドブルとホンダが僕をF2にステップアップさせようと決めたレースは分かりませんが、モンツァでの2つのレースが彼らの心を動かして、僕をF2にステップアップさせてくれたことは間違いないと思います。モンツァでのレースウイークのあと、初めてマルコ博士からお祝いのメッセージをもらったので、本当にうれしかったです。普段も、レースの後に教えてくれたり、改善点について相談に乗ってくれたりしていましたが、モンツァで優勝してほめてもらえたときは、本当にうれしかったです」
「ロシアでレースをしているときに、F1パドックにあるRed Bullのホスピタリティに行ったら、『2020年はF2でレースをする』と言われました。F3に参戦するとばかり思っていたので、本当に驚きました。モンツァでは優勝、スパでは表彰台を獲得しましたが、それ以外のほとんどのレースでは十分な結果が出せたとは、僕自身感じていませんでした。だから、2020年もF3で参戦すると思っていたんです。僕と僕の走りを信じてくれたレッドブルとホンダには、本当に感謝しています」
これまでのキャリアで角田裕毅は、自身の可能性を見抜いてくれる人々に囲まれてきました。F2にステップアップすると、最初の2戦を通して速さを発揮。オーストリアの第2戦では、無線のトラブルが発生するまで、ポールトゥウインを期待させる走りをみせ、マルコ博士の判断は正しかったと証明した。
「7周目まではエンジニアと会話できていて、問題ないと確認していたので、無線は機能していると思っていました。でも、15~16周目くらいからリアタイヤが苦しくなってきたのに、エンジニアからの無線がなく、おかしいと思いました。その次のラップで、ピットウォールの方を見たら、メカニックが手を振っているのが見えました。よく見えなかったので、念のためもう1周しました。そしたら、僕がピットに気が付くように、エンジニアやメカニックが全力でたくさん手を振ってくれていました」
「無線のトラブルのせいで苦しみ、悔しい思いをしましたが、レースではこういうことも起きるといういい経験になりました。常にピットボードは見るべきで、毎ラップ積極的に確認することを学びました」
「ピットインしてからは、いいペースでした。すぐに2番手まで上がれましたが、先頭のロバート・シュワルツマン(PREMA Racing)との差はかなりあり、彼に追いつくために全力を尽くしました。タイヤマネジメントのことをあまり考えずにプッシュしてしまったので、終盤はリアタイヤとの戦いになってしまい、シュワルツマンに追いつくことができませんでした」
「いま思えば、もっとタイヤマネジメントをしていれば、レースの終盤にはシュワルツマンを簡単にパスできていたかもしれません。マルコ博士から電話があり、今後はそうするべきだと言われました。それでも、F2で初めて表彰台に上がれたことは、チームにも貢献できてうれしかったです」
ハンガロリンクは厳しい週末となったが、角田裕毅はルーキーながらもF2の頂点を狙える速さを見せている。そして、次はテストでも使われたシルバーストンでの2戦に臨む。角田裕毅の今季のシーズンでの目標は明確だ。高い目標であったとしても、角田裕毅はそれを達成するだけのパフォーマンスができると自信を持っている。
「スーパーライセンスを取得するためには、まずチャンピオンシップで4位以内に入ることが必要だと思っています。すでにいいぺースがつかめていますし、チームも僕と一緒にがんばってくれています。チームでのタイトル獲得のためにも、そして自分自身がF1にステップアップするためにも、チャンピオンを目指したいと思っています。まずは、トップ4を獲得することが目標ですが、チームのためにもチャンピオンを獲得したいです」
カテゴリー: F1 / ホンダF1 / レッドブル・レーシング / FIA F2 / 角田裕毅