ホンダF1 特集 | 日本人F1ドライバー誕生という夢
ホンダF1のマネージングディレクターを務める山本雅史が、日本人F1ドライバー誕生という夢について語った。
今年、ホンダが支援する山本尚貴は、鈴鹿サーキットで開催されたF1日本GPの金曜フリー走行1回目にトロロッソ・ホンダのF1マシンで走行。日本GPで日本人ドライバーが鈴鹿でF1マシンを走らせたのは、2014年の小林可夢偉(ケータハム)以来となった。
「山本尚貴選手が金曜のFP1にトロロッソから出走したことについて話をさせて下さい」と山本雅史は Honda Racing F1 の公式サイトでコメント。
「ホンダとしてF1の舞台に日本人ドライバーを乗せることは悲願であり、そのために一歩前に進むことができたという事実はもちろんですが、応援してくれている皆さまと一緒に、私自身も『日本人がF1に乗る姿』を見られたことがとても嬉しかったんです。尚貴選手に『夢を見せてくれて、ありがとう』と伝えたいですね」
「昨年までのモータースポーツ部長の仕事を通して、彼がどれだけの想いを持って、ここまで努力を重ねてきたかを見ています。それだけに、トロロッソのスーツを身にまとい、あこがれのセナをオマージュしたヘルメットをかぶった彼がマシンに乗り込む姿を見たときには、胸が熱くなりました」
「セッションでは、プラクティス担当のドライバーとして、きっちり仕事をしてくれましたね。メディアセンターにいた多くの海外メディアはその走りに驚いていたと聞いていますが、わずか90分間の中で『日本人でも戦える』ということを見せてくれたのではないでしょうか」
「もちろん、この場所を目指して奮闘を続ける日本人ドライバーは山本選手だけではありません。現状でF1ドライバーに必要なスーパーライセンスを保持するのは彼だけですが、それに次ぐ若い才能が数多く育ちつつあります。今回の山本選手の走りは、そんな彼らに向けても大きな刺激になったと考えていますし、『夢の舞台』ではなく、『次なる目標』として捉え、前進を続けてほしいと思っています。もちろん、ホンダとしても引き続き、それをサポートとし、実現するための努力を続けます」
レッドブルとホンダは、2020年の山本尚貴に関して話し合いを進めているようだ。ホンダF1のマネージングディレクターを務める山本雅史は、レッドブルから好条件のオファーを提示されていると語る。
山本雅史は「レッドブル、そしてヘルムート・マルコと彼について話し合いをしていることを認めます」と語る。
「我々はかなり良い申しオファーをもらっていますが、これはホンダもしくはチームだけの決定はなく、もちろん尚貴自身とも話さなければなりません。彼は異なるシリーズにも参戦しています。それは現在も進行中です」
山本尚貴には、ホンダにとってF1と日本人ドライバーを繋ぐ役割もある。ホンダは、2008年の佐藤琢磨を最後に10年以上、ホンダドライバーがF1でレースをしていない。
近年ホンダがF2に送り込んだジュニアドライバーたちは、F1にステップアップするために必要な結果を達成していない。しかし、ホンダはドライバープログラムのベストメンバーのためにレッドブルとの機会を確立する価値があると考えている。
「もちろん、ホンダが将来の日本の若手ドライバーのために基盤を作ることは非常に良いことです」と山本雅史は語った。
「現在の若手ドライバーや他の日本人ドライバーに良い影響を与えるでしょう。もちろん、運転スキルやスピードが必要ですが、それだけではありません」
「ジェンソン・バトンを見れば、彼は速いだけでなく、彼の性格、ファンやメディアへの反応の仕方、そして、人々との関係、チームの関係もあります。これらの側面が本当に重要です」
ホンダF1の広報を務める鈴木悠介は、日本国内でF1の認知度を上げる難しさを自覚しており、ホンダがF1に参戦していること自体まで十分に認知されていないと感じている。
「F1というこのスポーツ、いまや日本では地上波で見ることができず、有料メディアに登録している方以外にとっては、なかなか縁遠い存在かもしれません。そしてホンダがF1に参戦していること自体、残念ながらまだそこまで認知してもらえていないようにも感じています。(認知度については僕たちの努力がまだまだ十分でないのかもしれません。)」と鈴木悠介はコメント。
「また、たとえ中継やサーキットでレースを見られる環境でも、多くの情報やデータを参照し、適切な知識や解説を伴いながらでないと、何が起こっているかを把握することが難しいスポーツでもあります。サッカーのように、たまたまTVをつけたらやっていて、わかりやすいルールなのでだれでも楽しめるといったタイプのエンターテインメントでないことは、現代の四輪モータースポーツにとって課題であり難しさだと思っています。一言で言って理解するのが『ムツカシイ!』。(一方でマシンやドライバーのカッコよさはどんな方でもわかりやすい部分なのではと思います。)」
「ドライバー、車体、パワーユニット(PU=エンジン)、タイヤ、チーム戦略、サーキット特性など、パフォーマンスを決定するために多くの要素が介在していることがその要因です。特に通常のスポーツと大きく異なるのはドライバーという『アスリート』に加え、マシンという『道具』の良し悪しで結果が大きく異なる部分ではないでしょうか」
「同じくレースである競馬も似た側面がありますが、馬は道具ではなく動物です(それはそれでまた面白い)。サッカーのルールはシンプルなものの、選手特性や戦術などの組み合わせが無限大で非常に奥深い、など、スポーツごとにそれぞれの特徴があります。そしてモータースポーツの特徴の一つとして、視聴環境の難しさも含めた敷居の高さがあることは事実かなとも思っています。現代のF1は『なぜこのような結果になったのか』をシンプルに説明することが難しく、その魅力を伝えるのが仕事の広報担当にとっては非常に悩ましい部分であります。もっと言えば、僕はF1チームの広報ではなくPU=エンジン、つまり部品サプライヤーの広報担当なのでさらにややこしいです」
「反面、その複雑さゆえにおもしろいという側面があることも、このスポーツの魅力です」
「僕自身、10代のころにTVを見ながら漠然と感じていたおもしろさとは、このスポーツが『機械の精巧さと人の情熱との共存』、つまり『冷たさと熱さのぶつかり合い』で成立していることだったように思います。当時は単純にドライバーとマシンが一体となった戦いぶりを見てそう感じましたが、実際にチームの内部に入ってみると、それはドライバーとマシン間のみでなく、エンジニア/メカニックとPUとの間でも同様であるということを目の当たりにする形となりました」
「彼らが相手にしているのは機械であり、人間や動物ではありません。どれだけ情熱を持って接しても、きちんと作られていなければPUは壊れます。徹夜で策を凝らしてデータを入力しても、少しの目論見違いがあればストレートでパワーが切れてしまうこともあります。一方で、ひょんなことから一瞬だけ見えた偶然の発見を、失敗を繰り返しながら再現、その要因を特定し、時間をかけて確実な機構として作り上げることで、飛躍的なパフォーマンス向上を遂げることもあります」
「改善のためのロジックを立て、日々失敗と学びを繰り返しながら前進する開発メンバー、レース状況を元に瞬時で判断を下し最適なエンジンモードをドライバーに提供するPUエンジニア、限られた時間とプレッシャーの中、一つの作業ミスも許されない状況下でPUを組み上げるメカニック…。そんな姿を見て、『ここにも戦いはある。そして僕はこんな姿を皆さんに伝えたいんだ』と感じました」
「F1は主役のドライバー以外の姿が見えにくいスポーツでもあるので、その裏側で、どんな人たちがどのような想いを持って働いているかという部分を見てもらいたい。そしてそこから、なぜホンダという会社がこのスポーツに参戦しているのかが、なんとなく見えてきたらいいなという想いもありました」
カテゴリー: F1 / ホンダF1
今年、ホンダが支援する山本尚貴は、鈴鹿サーキットで開催されたF1日本GPの金曜フリー走行1回目にトロロッソ・ホンダのF1マシンで走行。日本GPで日本人ドライバーが鈴鹿でF1マシンを走らせたのは、2014年の小林可夢偉(ケータハム)以来となった。
「山本尚貴選手が金曜のFP1にトロロッソから出走したことについて話をさせて下さい」と山本雅史は Honda Racing F1 の公式サイトでコメント。
「ホンダとしてF1の舞台に日本人ドライバーを乗せることは悲願であり、そのために一歩前に進むことができたという事実はもちろんですが、応援してくれている皆さまと一緒に、私自身も『日本人がF1に乗る姿』を見られたことがとても嬉しかったんです。尚貴選手に『夢を見せてくれて、ありがとう』と伝えたいですね」
「昨年までのモータースポーツ部長の仕事を通して、彼がどれだけの想いを持って、ここまで努力を重ねてきたかを見ています。それだけに、トロロッソのスーツを身にまとい、あこがれのセナをオマージュしたヘルメットをかぶった彼がマシンに乗り込む姿を見たときには、胸が熱くなりました」
「セッションでは、プラクティス担当のドライバーとして、きっちり仕事をしてくれましたね。メディアセンターにいた多くの海外メディアはその走りに驚いていたと聞いていますが、わずか90分間の中で『日本人でも戦える』ということを見せてくれたのではないでしょうか」
「もちろん、この場所を目指して奮闘を続ける日本人ドライバーは山本選手だけではありません。現状でF1ドライバーに必要なスーパーライセンスを保持するのは彼だけですが、それに次ぐ若い才能が数多く育ちつつあります。今回の山本選手の走りは、そんな彼らに向けても大きな刺激になったと考えていますし、『夢の舞台』ではなく、『次なる目標』として捉え、前進を続けてほしいと思っています。もちろん、ホンダとしても引き続き、それをサポートとし、実現するための努力を続けます」
レッドブルとホンダは、2020年の山本尚貴に関して話し合いを進めているようだ。ホンダF1のマネージングディレクターを務める山本雅史は、レッドブルから好条件のオファーを提示されていると語る。
山本雅史は「レッドブル、そしてヘルムート・マルコと彼について話し合いをしていることを認めます」と語る。
「我々はかなり良い申しオファーをもらっていますが、これはホンダもしくはチームだけの決定はなく、もちろん尚貴自身とも話さなければなりません。彼は異なるシリーズにも参戦しています。それは現在も進行中です」
山本尚貴には、ホンダにとってF1と日本人ドライバーを繋ぐ役割もある。ホンダは、2008年の佐藤琢磨を最後に10年以上、ホンダドライバーがF1でレースをしていない。
近年ホンダがF2に送り込んだジュニアドライバーたちは、F1にステップアップするために必要な結果を達成していない。しかし、ホンダはドライバープログラムのベストメンバーのためにレッドブルとの機会を確立する価値があると考えている。
「もちろん、ホンダが将来の日本の若手ドライバーのために基盤を作ることは非常に良いことです」と山本雅史は語った。
「現在の若手ドライバーや他の日本人ドライバーに良い影響を与えるでしょう。もちろん、運転スキルやスピードが必要ですが、それだけではありません」
「ジェンソン・バトンを見れば、彼は速いだけでなく、彼の性格、ファンやメディアへの反応の仕方、そして、人々との関係、チームの関係もあります。これらの側面が本当に重要です」
ホンダF1の広報を務める鈴木悠介は、日本国内でF1の認知度を上げる難しさを自覚しており、ホンダがF1に参戦していること自体まで十分に認知されていないと感じている。
「F1というこのスポーツ、いまや日本では地上波で見ることができず、有料メディアに登録している方以外にとっては、なかなか縁遠い存在かもしれません。そしてホンダがF1に参戦していること自体、残念ながらまだそこまで認知してもらえていないようにも感じています。(認知度については僕たちの努力がまだまだ十分でないのかもしれません。)」と鈴木悠介はコメント。
「また、たとえ中継やサーキットでレースを見られる環境でも、多くの情報やデータを参照し、適切な知識や解説を伴いながらでないと、何が起こっているかを把握することが難しいスポーツでもあります。サッカーのように、たまたまTVをつけたらやっていて、わかりやすいルールなのでだれでも楽しめるといったタイプのエンターテインメントでないことは、現代の四輪モータースポーツにとって課題であり難しさだと思っています。一言で言って理解するのが『ムツカシイ!』。(一方でマシンやドライバーのカッコよさはどんな方でもわかりやすい部分なのではと思います。)」
「ドライバー、車体、パワーユニット(PU=エンジン)、タイヤ、チーム戦略、サーキット特性など、パフォーマンスを決定するために多くの要素が介在していることがその要因です。特に通常のスポーツと大きく異なるのはドライバーという『アスリート』に加え、マシンという『道具』の良し悪しで結果が大きく異なる部分ではないでしょうか」
「同じくレースである競馬も似た側面がありますが、馬は道具ではなく動物です(それはそれでまた面白い)。サッカーのルールはシンプルなものの、選手特性や戦術などの組み合わせが無限大で非常に奥深い、など、スポーツごとにそれぞれの特徴があります。そしてモータースポーツの特徴の一つとして、視聴環境の難しさも含めた敷居の高さがあることは事実かなとも思っています。現代のF1は『なぜこのような結果になったのか』をシンプルに説明することが難しく、その魅力を伝えるのが仕事の広報担当にとっては非常に悩ましい部分であります。もっと言えば、僕はF1チームの広報ではなくPU=エンジン、つまり部品サプライヤーの広報担当なのでさらにややこしいです」
「反面、その複雑さゆえにおもしろいという側面があることも、このスポーツの魅力です」
「僕自身、10代のころにTVを見ながら漠然と感じていたおもしろさとは、このスポーツが『機械の精巧さと人の情熱との共存』、つまり『冷たさと熱さのぶつかり合い』で成立していることだったように思います。当時は単純にドライバーとマシンが一体となった戦いぶりを見てそう感じましたが、実際にチームの内部に入ってみると、それはドライバーとマシン間のみでなく、エンジニア/メカニックとPUとの間でも同様であるということを目の当たりにする形となりました」
「彼らが相手にしているのは機械であり、人間や動物ではありません。どれだけ情熱を持って接しても、きちんと作られていなければPUは壊れます。徹夜で策を凝らしてデータを入力しても、少しの目論見違いがあればストレートでパワーが切れてしまうこともあります。一方で、ひょんなことから一瞬だけ見えた偶然の発見を、失敗を繰り返しながら再現、その要因を特定し、時間をかけて確実な機構として作り上げることで、飛躍的なパフォーマンス向上を遂げることもあります」
「改善のためのロジックを立て、日々失敗と学びを繰り返しながら前進する開発メンバー、レース状況を元に瞬時で判断を下し最適なエンジンモードをドライバーに提供するPUエンジニア、限られた時間とプレッシャーの中、一つの作業ミスも許されない状況下でPUを組み上げるメカニック…。そんな姿を見て、『ここにも戦いはある。そして僕はこんな姿を皆さんに伝えたいんだ』と感じました」
「F1は主役のドライバー以外の姿が見えにくいスポーツでもあるので、その裏側で、どんな人たちがどのような想いを持って働いているかという部分を見てもらいたい。そしてそこから、なぜホンダという会社がこのスポーツに参戦しているのかが、なんとなく見えてきたらいいなという想いもありました」
カテゴリー: F1 / ホンダF1