ホンダF1 特集 | 2チーム体制を支える裏方
ホンダF1の物流の責任者であるグレアム・スミスが、2チーム体制を支える裏方の仕事について語った。
昨年までの4年間は、1チームへのPU(パワーユニット)供給だったため、ホンダとしては復帰以降初めての2チーム体制となる。これにより、これまで以上に輸送する機器やPUの基数が増え、物流の責任者であるグレアム・スミスの仕事も多くなった。
開幕からの“フライアウェイ”ラウンド4戦を終え、今週末のスペインGPから、ヨーロッパラウンドへと突入した。開催地バルセロナのカタルニア・サーキットは、プレシーズンテストの舞台としてもおなじみ。ヨーロッパラウンドでは、各チームのファクトリーから陸路での移動が可能となるため、パドックにはモーターホームやトラックが並び、F1ならではの華やかな光景が広がる。物流の事情によって各グランプリで用意できるものは異なるが、レース運営の面では、世界中のどこにいてもマシンのパーツは同じように準備できていなければならない。4台体制となった今季、ホンダF1はどのように取り組んでいるのだろうか
「どちらのチームからも独立した存在でいるようにしています。2チーム間でニュートラルな立場にいますし、移動も自分のクルマで、必要なときにはスタッフもつけるようにしています。チームと離れた存在になることで自由に動けるようになるからです」とグレアム・スミスは語る。
「2チーム体制になったことで、かなり忙しくなりましたよ(笑) 運ぶ物の量も増えましたし、通関処理やレースに向けた書類、危険物の申請など、書類処理も多くなっています。ほかにもコントロールしなければならないことはたくさんあるのです」
今週末のレースへ向けても、グレアム・スミスはミルトンキーンズにあるホンダの拠点からPUや関連機材を積んだ多くのトラックをバルセロナへ送り出した。その際にも、事前の計画時にはなかったアイテムを追加するなどしたが、このようなことへの対応も彼の役割だ。
「ここまではとてもスムーズにきています。2回のウインターテストと4戦を終えて、全く問題は起きていません。まるで1チーム体制かのように、スムーズです。すべては段取りのおかげです。事前に多くの段取りをしておく必要がありますが、PUのコンポーネントやエンジンその他について、ここまで大きな問題が起きていないことも助かっています」
「2チームになったことで、パーツは倍になります。そのため、機材、工具、パーツを2倍用意しました。2チームで少し共有できるものはありますが、それでもトータルの物量はほぼ2倍になっています」
「昨年の8月から9月には什器の注文を開始しました。予算を決めて動かねばならないのですし、フライト用のケースやパレット、ほかにも専門性の高いものについては用意に時間がかかるので早めに発注しておかなければならないのです」
10基のエンジンとERSを梱包し、さらに6つのフライトケースで工具箱や給湯機器、燃料解析用のリグなどを運ぶ。そして、日本から到着するスペアパーツをプラスティック製フライトケース4つに詰め、2つのコンテナに分けて飛行機へ積み込む。コンテナ一つの重量は約4000㎏。レースを運営するのに大量の物資が必要となる。
量が増えたのは物資だけではない。スタッフの人数も2倍近くになっている。
「両チームともにスタッフの構成は同じなので、それぞれ10人ほどのスタッフがおり、そこに、2人のトラックドライバーと私自身が加わります」
「昨年の中盤には新規のスタッフが加入していたので、彼らがサーキットへ来て実際の運用を視察していました。また、ヨーロッパで行われた2回のインシーズンテストもあったので、そこで実際に移動のオペレーションをして、現場でどのように動いているのかを見てもらうこともできました」
PUやその関連機器の運搬と同様に、ホンダスタッフの移動手配もグレアム・スミスの仕事となる。スタッフごとに勤務シフトのパターンは異なりますが、食事やミーティングの際には全員がホスピタリティーへ集まってくる。
「チームの規模が大きくなったので、ホテルからの到着時間も各自異なります。今年は人数が増えたことで、各グランプリで2、3のホテルに分かれているので、それに対応するために手配する車の数も増えました。ただ、少人数のグループに分かれて乗車しますし、それぞれ何時に出発してどれくらいで到着するかを把握しているので、全員同時ということはなく、そこまでたいへんではありません」
「今回からモーターホームを設営して、そこで食事を提供しますが、これは少したいへんです(笑) 今年はやり方を変えて、各自の注文方式からビュッフェ形式にしましたが、みんな同時に食事をとるわけではないので、悪くない方法だと思います」
「それでも、ミーティングがあるときなどは満員状態になってしまうので、事前に人数を確認しています」
今季のカレンダーは、2週連続のフライアウェイレースがなく、連戦自体も6月後半のフランスGPとオーストリアGPまでないので、物流の面からは少し穏やかになった。このおかげで、レース間にPUとスペアを日本のHRD Sakuraへ送り返してメンテナンスすることが容易になり、ミルトンキーンズのファクトリーはスペインでの週末に集中することができる。
仕事量は増えたが、両チームともに今年は競争力があり、関係もうまくいっているので、ホンダチームの雰囲気はとても明るいとグレアム・スミスは感じている。
「すべてが正しい方向に進んでいて、とてもいいことです。みんながポジティブだし、昨年とそれ以前で雰囲気は変わりましたね。レッドブルとは本当に働きやすいんです」
「彼らはすごく協力的で、我々物流スタッフにも親切です。同じミルトンキーンズを拠点にしていますが、レースウイーク中、彼らがヨーロッパのレースへ向かうバンに、ホンダのスタッフも気軽に乗せてくれます。こうした面からも関係の良好さが見えますよね」
サーキット外でレッドブルとの関係が順調に進む一方で、コース上では好成績が出始めている。グレアム・スミスは、開幕戦で2チーム体制の物流を取り仕切るのはたいへんだったものの、表彰台と言う結果により今季のホンダとチームへの期待が高まったと語る。
「オーストラリアのレースはほぼ夕方の開催なので、撤収作業はたいへんでした。朝の3時から4時くらいに終わったんじゃなかったかな。2チーム体制で初めての本格的なフライアウェイだったので、新たな環境での自信もつきました」
「メルボルンでは表彰台という結果でしたが、あまり喜ばず、シャンパンも開けませんでした。勝ったときのために取っておきますよ」
カテゴリー: F1 / ホンダF1
昨年までの4年間は、1チームへのPU(パワーユニット)供給だったため、ホンダとしては復帰以降初めての2チーム体制となる。これにより、これまで以上に輸送する機器やPUの基数が増え、物流の責任者であるグレアム・スミスの仕事も多くなった。
開幕からの“フライアウェイ”ラウンド4戦を終え、今週末のスペインGPから、ヨーロッパラウンドへと突入した。開催地バルセロナのカタルニア・サーキットは、プレシーズンテストの舞台としてもおなじみ。ヨーロッパラウンドでは、各チームのファクトリーから陸路での移動が可能となるため、パドックにはモーターホームやトラックが並び、F1ならではの華やかな光景が広がる。物流の事情によって各グランプリで用意できるものは異なるが、レース運営の面では、世界中のどこにいてもマシンのパーツは同じように準備できていなければならない。4台体制となった今季、ホンダF1はどのように取り組んでいるのだろうか
「どちらのチームからも独立した存在でいるようにしています。2チーム間でニュートラルな立場にいますし、移動も自分のクルマで、必要なときにはスタッフもつけるようにしています。チームと離れた存在になることで自由に動けるようになるからです」とグレアム・スミスは語る。
「2チーム体制になったことで、かなり忙しくなりましたよ(笑) 運ぶ物の量も増えましたし、通関処理やレースに向けた書類、危険物の申請など、書類処理も多くなっています。ほかにもコントロールしなければならないことはたくさんあるのです」
今週末のレースへ向けても、グレアム・スミスはミルトンキーンズにあるホンダの拠点からPUや関連機材を積んだ多くのトラックをバルセロナへ送り出した。その際にも、事前の計画時にはなかったアイテムを追加するなどしたが、このようなことへの対応も彼の役割だ。
「ここまではとてもスムーズにきています。2回のウインターテストと4戦を終えて、全く問題は起きていません。まるで1チーム体制かのように、スムーズです。すべては段取りのおかげです。事前に多くの段取りをしておく必要がありますが、PUのコンポーネントやエンジンその他について、ここまで大きな問題が起きていないことも助かっています」
「2チームになったことで、パーツは倍になります。そのため、機材、工具、パーツを2倍用意しました。2チームで少し共有できるものはありますが、それでもトータルの物量はほぼ2倍になっています」
「昨年の8月から9月には什器の注文を開始しました。予算を決めて動かねばならないのですし、フライト用のケースやパレット、ほかにも専門性の高いものについては用意に時間がかかるので早めに発注しておかなければならないのです」
10基のエンジンとERSを梱包し、さらに6つのフライトケースで工具箱や給湯機器、燃料解析用のリグなどを運ぶ。そして、日本から到着するスペアパーツをプラスティック製フライトケース4つに詰め、2つのコンテナに分けて飛行機へ積み込む。コンテナ一つの重量は約4000㎏。レースを運営するのに大量の物資が必要となる。
量が増えたのは物資だけではない。スタッフの人数も2倍近くになっている。
「両チームともにスタッフの構成は同じなので、それぞれ10人ほどのスタッフがおり、そこに、2人のトラックドライバーと私自身が加わります」
「昨年の中盤には新規のスタッフが加入していたので、彼らがサーキットへ来て実際の運用を視察していました。また、ヨーロッパで行われた2回のインシーズンテストもあったので、そこで実際に移動のオペレーションをして、現場でどのように動いているのかを見てもらうこともできました」
PUやその関連機器の運搬と同様に、ホンダスタッフの移動手配もグレアム・スミスの仕事となる。スタッフごとに勤務シフトのパターンは異なりますが、食事やミーティングの際には全員がホスピタリティーへ集まってくる。
「チームの規模が大きくなったので、ホテルからの到着時間も各自異なります。今年は人数が増えたことで、各グランプリで2、3のホテルに分かれているので、それに対応するために手配する車の数も増えました。ただ、少人数のグループに分かれて乗車しますし、それぞれ何時に出発してどれくらいで到着するかを把握しているので、全員同時ということはなく、そこまでたいへんではありません」
「今回からモーターホームを設営して、そこで食事を提供しますが、これは少したいへんです(笑) 今年はやり方を変えて、各自の注文方式からビュッフェ形式にしましたが、みんな同時に食事をとるわけではないので、悪くない方法だと思います」
「それでも、ミーティングがあるときなどは満員状態になってしまうので、事前に人数を確認しています」
今季のカレンダーは、2週連続のフライアウェイレースがなく、連戦自体も6月後半のフランスGPとオーストリアGPまでないので、物流の面からは少し穏やかになった。このおかげで、レース間にPUとスペアを日本のHRD Sakuraへ送り返してメンテナンスすることが容易になり、ミルトンキーンズのファクトリーはスペインでの週末に集中することができる。
仕事量は増えたが、両チームともに今年は競争力があり、関係もうまくいっているので、ホンダチームの雰囲気はとても明るいとグレアム・スミスは感じている。
「すべてが正しい方向に進んでいて、とてもいいことです。みんながポジティブだし、昨年とそれ以前で雰囲気は変わりましたね。レッドブルとは本当に働きやすいんです」
「彼らはすごく協力的で、我々物流スタッフにも親切です。同じミルトンキーンズを拠点にしていますが、レースウイーク中、彼らがヨーロッパのレースへ向かうバンに、ホンダのスタッフも気軽に乗せてくれます。こうした面からも関係の良好さが見えますよね」
サーキット外でレッドブルとの関係が順調に進む一方で、コース上では好成績が出始めている。グレアム・スミスは、開幕戦で2チーム体制の物流を取り仕切るのはたいへんだったものの、表彰台と言う結果により今季のホンダとチームへの期待が高まったと語る。
「オーストラリアのレースはほぼ夕方の開催なので、撤収作業はたいへんでした。朝の3時から4時くらいに終わったんじゃなかったかな。2チーム体制で初めての本格的なフライアウェイだったので、新たな環境での自信もつきました」
「メルボルンでは表彰台という結果でしたが、あまり喜ばず、シャンパンも開けませんでした。勝ったときのために取っておきますよ」
カテゴリー: F1 / ホンダF1