ホンダF1 特集 | エネルギーマネジメントの進化
トロロッソ・ホンダは、マシンとの相性がよくないと想定されていた高速サーキットであるスパ・フランコルシャンとモンツァで優れたパフォーマンスを発揮。そこにはホンダF1によるエネルギーマネジメントの進化がある。
トロロッソ・ホンダは、雨による難しいコンディションとなったF1ベルギーGPの予選で6列目につけ、F1イタリアGPではピエール・ガスリーがQ3に進出を果たした。
Auto Motor und Sport が、GPSデータを元に分析した各メーカーのF1エンジンのパフォーマンスによると、ホンダのF1エンジンは715馬力。フェラーリは790馬力、メルセデスは780馬力、ルノーも730馬力とホンダよりも高いパワーが算出されている。
ホンダF1の副テクニカルディレクターを務める本橋正充はエネルギーマネジメントを進化の鍵として挙げている。
「我々は特に前半戦のアゼルバイジャンでのレースを通して多くのことを学びました」と本橋正充は語る。
「ロングストレートではオーバーテイクされてしまいましたが、その原因の一つは、回生で得たパワーをサーキットのどの場所で効率的に使用するかという、エネルギーマネジメントの戦略にありました。そのため、その後のエネルギーマネジメントを改善していくにあたり、そのレースの中で得られた教訓は非常に大きなものでした」
「アゼルバイジャンのロングストレートはカレンダー最長で、距離だけで言えばスパを上回りますが、スパはスパでエンジンの全開率がラップを通して非常に高いので、エネルギーマネジメントも含めたパワーユニット性能がレースのキーとなります」
「エネルギーマネジメントは各トラックで最速のタイムを出すために最適化していきますが、同時にレース中の状況も考えなければなりません。レースの中でオーバーテイクが多いロングストレートではエネルギーマネジメントがキーとなりますが、それらのバランスを最適化することは非常に難しいんです」
「ロングストレートでのエンジン全開走行は、燃焼室だけでなく、ドライブトレーン(エンジンで生み出した動力をタイヤに伝達する一連の機構)の温度上昇にもつながります。例えば、気温が高い環境でマシンを使用する場合です。フルスロットルで走って急ブレーキをかけ、またフルスロットルでの走行を繰り返していると、冷却する時間がほとんどありません。その結果、エンジン内の温度上昇が徐々に進んでいってしまいます」
「ですから、もちろんダイナモでそうした状況を想定してのテストも行っています。テストの際には、バクーのロングストレートで収集したデータを基にしていますね。ダイナモでは、全てのサーキットを想定したシミュレーションを行うことができます。例えば、シリンダー圧によるダメージをチェックしたい場合は、ストレートで走行しているのと同じ環境をダイナモで作り出します。そうしたテスト中は、パワーユニットは高速サーキットを走行しているときと同じような音を出しています」
「エネルギー回生システム(ERS)の一部であるラジエーターやヒートエクスチェンジャーは冷却に使用するのはもちろんですが、それだけでなくパワーマネジメントにも関わるコンポーネントです。ときには意図的にエネルギーの蓄積や放出の量を減少させたりしますが、それは内燃機関とERSの関係性に似ているとも言えます」
「我々はすでに、何度も過酷なサーキットで戦ってきましたからね! ハンガリーでのエキサイティングなレース、バーレーンでの驚き、そしてエネルギーマネジメントに苦慮し、最も過酷な戦いを強いられたアゼルバイジャンなど、さまざまなレースを経験してきました。その中でエネルギーマネジメント、燃料やノッキング現象について多くのことを学ぶことができたんです」
ホンダF1のテクニカルディレクターを務める田辺豊治もパワーユニットを適切に使えていることが成果に繋がっていると語る。
「パワーユニットのパフォーマンスとして、限界値というのはある程度ダイナモ上では出ているのですが、やはりその場その場、気候、温度、湿度などさまざまな条件を考えて、適正な使い方を決めます」と田辺豊治はコメント。
「ドライバー、車体、パワーユニットと、それぞれの持てる力を出し切った結果だと思います。中団勢はとても僅差、激戦区のなかで、そして一つ狂っただけで順位が大きく落ちる状況で、今の我々の実力としてすべて出し切れたから、あそこまでいけたのだと思います。満足できるポジションとは言いませんが、今の持てるものでは、最高のポジションだったと思います」
Auto Motor und Sport によると、ホンダF1は今年の10月のF1アメリカGPで“スペック3”エンジンを導入することを目指して開発を進めているとし、新スペックエンジンはおよそ750馬力までアップすると伝えている。
カテゴリー: F1 / ホンダF1
トロロッソ・ホンダは、雨による難しいコンディションとなったF1ベルギーGPの予選で6列目につけ、F1イタリアGPではピエール・ガスリーがQ3に進出を果たした。
Auto Motor und Sport が、GPSデータを元に分析した各メーカーのF1エンジンのパフォーマンスによると、ホンダのF1エンジンは715馬力。フェラーリは790馬力、メルセデスは780馬力、ルノーも730馬力とホンダよりも高いパワーが算出されている。
ホンダF1の副テクニカルディレクターを務める本橋正充はエネルギーマネジメントを進化の鍵として挙げている。
「我々は特に前半戦のアゼルバイジャンでのレースを通して多くのことを学びました」と本橋正充は語る。
「ロングストレートではオーバーテイクされてしまいましたが、その原因の一つは、回生で得たパワーをサーキットのどの場所で効率的に使用するかという、エネルギーマネジメントの戦略にありました。そのため、その後のエネルギーマネジメントを改善していくにあたり、そのレースの中で得られた教訓は非常に大きなものでした」
「アゼルバイジャンのロングストレートはカレンダー最長で、距離だけで言えばスパを上回りますが、スパはスパでエンジンの全開率がラップを通して非常に高いので、エネルギーマネジメントも含めたパワーユニット性能がレースのキーとなります」
「エネルギーマネジメントは各トラックで最速のタイムを出すために最適化していきますが、同時にレース中の状況も考えなければなりません。レースの中でオーバーテイクが多いロングストレートではエネルギーマネジメントがキーとなりますが、それらのバランスを最適化することは非常に難しいんです」
「ロングストレートでのエンジン全開走行は、燃焼室だけでなく、ドライブトレーン(エンジンで生み出した動力をタイヤに伝達する一連の機構)の温度上昇にもつながります。例えば、気温が高い環境でマシンを使用する場合です。フルスロットルで走って急ブレーキをかけ、またフルスロットルでの走行を繰り返していると、冷却する時間がほとんどありません。その結果、エンジン内の温度上昇が徐々に進んでいってしまいます」
「ですから、もちろんダイナモでそうした状況を想定してのテストも行っています。テストの際には、バクーのロングストレートで収集したデータを基にしていますね。ダイナモでは、全てのサーキットを想定したシミュレーションを行うことができます。例えば、シリンダー圧によるダメージをチェックしたい場合は、ストレートで走行しているのと同じ環境をダイナモで作り出します。そうしたテスト中は、パワーユニットは高速サーキットを走行しているときと同じような音を出しています」
「エネルギー回生システム(ERS)の一部であるラジエーターやヒートエクスチェンジャーは冷却に使用するのはもちろんですが、それだけでなくパワーマネジメントにも関わるコンポーネントです。ときには意図的にエネルギーの蓄積や放出の量を減少させたりしますが、それは内燃機関とERSの関係性に似ているとも言えます」
「我々はすでに、何度も過酷なサーキットで戦ってきましたからね! ハンガリーでのエキサイティングなレース、バーレーンでの驚き、そしてエネルギーマネジメントに苦慮し、最も過酷な戦いを強いられたアゼルバイジャンなど、さまざまなレースを経験してきました。その中でエネルギーマネジメント、燃料やノッキング現象について多くのことを学ぶことができたんです」
ホンダF1のテクニカルディレクターを務める田辺豊治もパワーユニットを適切に使えていることが成果に繋がっていると語る。
「パワーユニットのパフォーマンスとして、限界値というのはある程度ダイナモ上では出ているのですが、やはりその場その場、気候、温度、湿度などさまざまな条件を考えて、適正な使い方を決めます」と田辺豊治はコメント。
「ドライバー、車体、パワーユニットと、それぞれの持てる力を出し切った結果だと思います。中団勢はとても僅差、激戦区のなかで、そして一つ狂っただけで順位が大きく落ちる状況で、今の我々の実力としてすべて出し切れたから、あそこまでいけたのだと思います。満足できるポジションとは言いませんが、今の持てるものでは、最高のポジションだったと思います」
Auto Motor und Sport によると、ホンダF1は今年の10月のF1アメリカGPで“スペック3”エンジンを導入することを目指して開発を進めているとし、新スペックエンジンはおよそ750馬力までアップすると伝えている。
カテゴリー: F1 / ホンダF1