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夏休み前、前半戦最後の戦いとなるハンガリーGPで、トロロッソ・ホンダは、ここ数戦の低迷を乗り越え、大きな躍進とも言える成果を出した。今シーズン初めて2台揃ってトップ10入りした予選を経て、レースではピエール・ガスリーがハイペースで上位を走行し、危なげなく6位でフィニッシュを果たすことができた。

今回、いいレースができた一つの大きな理由は、予選で好ポジションを獲得できたことにある。

予選開始前に降り出した雷雨は、強くなったり急に上がったり、また、コースの一部では土砂降りでも他方では止んでいるなど、タイヤ選択やアタックラップのタイミングが難しく、トップチームでもわずかなズレで大きくポジションを落とす状況となった。しかし、トロロッソ・ホンダは難しい状況の変化に対応して乗りきり、バーレーンGP以来の予選6番手ポジションを得たのである。

HRD MKのパワーユニットエンジニアである湊谷圭祐「ウエットコンディションで、しかもあのような刻々と状況が変わる中で、チームの戦略に応じてエネルギーマネージメントの調整をリニアに行いました。具体的には、雨、路面の状況に応じて連続アタックを可能にするエネルギーマネージメントです」は語る。


「通常、予選では1周でバッテリーを使いきるようなアシストが目標ですが、ウエットではアクセル開度が高くないので、使いきることはできません。今回のように1周の間にコンディションが変わるときには、タイムを出す上で2周連続のアタックを求められる場合があります。それを可能にするためのエネルギーマネージメントを行いました。チームやドライバーとの密なコミュニケーションの下に行われ、結果としてそれがうまくいきました」。

また、ウエットコンディションで、パワーユニットのドライバビリティーのよさをドライバーは高く評価しており、それも予選での好結果につながっている。

「ドライバビリティーとは、簡単に言えば、アクセル操作に応じたパワーユニットのパワーの出方をコントロールすることで、アクセルを踏んだ量に合わせて、パワーユニットから適正なパワーがマシンに伝わることが理想です。ドライバーにとってのパワーユニットの扱いやすさと言ってもいいかもしれません。これはドライバーの好みやドライビングスタイルによっても変わってきますが、アクセルを踏んだ際に急にトルクが立ち上がるようなピーキーな特性であったり、立ち上がりのトルクが不足するようでは、ドライビングに悪影響が出てしまいます。このドライバビリティーは、これまでの積み重ねやSakuraでの開発によって、今年大きく改善した部分だと思います」と湊谷は語る。特に今回の予選のようなハードなウエットコンディションでは、このドライバビリティーのよさがドライバーにとって大きなアドバンテージとなったに違いない。

パワーユニットエンジニアは、毎レース現場に帯同し、チームやドライバーとコミュニケーションを取りながら、パワーユニットの制御を行っている。エネルギーマネージメントは、コースによって回生と消費を最適な状態にコントロールしなければならない。また、レース中では、走行の状況によって刻々と変化するガソリン消費量を見据え、走行モードの調整やドライバーへの指示なども行う。

「エネルギーマネージメントは、コースによって全く違うので毎戦調整を行いますが、ドライバビリティーはこれまでの積み重ねに加え、今年の仕様になる際に改善を行っていますので、レースごとに頻繁に設定を変えるほどではないですし、それについてドライバーから不満は出ていません」とガスリー担当の湊谷は語る。ガスリーは開幕前のテストから、パワーユニットのドライバビリティーに好感触を示しており、ホンダのこれまでのデータ蓄積や試行錯誤などの積み重ねが実を結んだものと言えるだろう。

「パワーユニットとして、新たなアイテムを入れるアップデートも開発していますが、使い方としてまだまだ工夫できることは多いと感じています」とホンダF1テクニカルディレクターの田辺豊治は語る。その使い方を改善していく上で重要な役割を担っているのがパワーユニットデータエンジニアなのである。

夏休み前の戦いを良い形で締めくくることができたトロロッソ・ホンダだが、この結果に喜びながらも田辺豊治の表情は決して緩まない。

「ダブル入賞を逃したことは残念でしたが、難しい予選も含めチーム全員がいい仕事をしたと思います。この結果が、これからも同じように続くほど簡単なものではないと思っていますが、サマーブレイク前の節目のレースをいい形で終え、この勢いを維持しながら後半戦に向かいます」と田辺豊治。

ハンガリーGP直後にはテストがあり、夏休み中もデータ解析やさらなる開発などが行われ、シーズン後半戦に備える作業が続く。

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