小松礼雄 ハース
ハースのレース兼テスト・チーフエンジニアを務める小松礼雄が、これまでのレースについて語った。

今年から新たにF1に参戦したハースは、開幕戦オーストリラリアGPでロマン・グロージャンンが5位入賞を果たし、新規チームとしては14年ぶりにポイントを獲得。ここまでの4戦中3戦でポイントを獲得する躍進を果たしている。

昨年末、ロマン・グロージャンを追うようにロータスからハースに移籍した小松礼雄は、チームのグランプリにおける“戦略と決断”を委ねられている。

「今年4戦を終えただけですが、それらの全てがレース前に予想していた通りの結果になりました。なので、その意味ではまったくのサプライズではありませんでした」と小松礼雄はコメント。

「とは言え、メルボルンでは金曜日はウェットで意味のある走行ができなかったので、純粋に2015年に目にしていたことに基づいてソフトタイヤでスタートするという決断をしなければなりませんでした。その決断は我々が知った事実に基づいてはいませんでしたが、我々には非常にわずかなデータしかないという事実に基づきました。したがって、重要なことは、レースでの戦略をオープンなままにしておいて、レースがスタートした後に実際のタイヤの挙動に反応することでした」

「ソフトタイヤでの戦略は我々にそのような自由を与えてくれましたし、1ストップ戦略のドアをオープンなままにしてくれました。また、あのレースではセーフティカー中にステイアウトするという決断はあまり重要ではありませんでした。もちろん、我々はセーフティカー中にステイアウトしたので、赤旗から大きな利益を得ました。もちろん、赤旗が我々にとってうまく働いたのは幸運でしたが、それでも運が向いたときにそれを生かす必要があります」

決断において、小松礼雄は器材を最大限に活用していると語る。

「必須ではありませんが、特定のものを見られる追加の機能をいくつかリクエストしました。セットアップの過程において、基本的にあまりソフトウェアを変更することはできないので、基本的に自分たちの持っているものを最大限に生かさなければなりません。実際、ハースF1チームは完全に新しいチームなので、多くのものが同じです。走る前に歩く必要があります」

小松礼雄は、バーレーンでの決断が最も誇らしいと思っているが、実際にはレース中の決断ではなく、プラクティスが成功の鍵を握ったと明かす。

「バーレーンはベストだったと言えます。レース中の戦略決定だけでなく、あらゆる準備と計画によって結果を成し遂げることができましたからね。金曜日に良いデータを得るために確実にクルマを走らせることができました。それによって金曜日の夜に正しい決断ができました。もし、間違った決断をしていれば、正しいレースタイヤを得られなかったでしょう」

「日曜日に最高の結果を達成するためには全てをまとめる必要があります。例えば、レースのためにスーパーソフトを1セット取っておくためにQ2では1度しか走りませんでした。ロマンは予選9番手という素晴らしい仕事をしましたし、それは起こり得る最高の結果でした。それによって、日曜日に計画していた戦略から利益を得られるポジションにいることができました」

「レースでは、彼は我々のプランを見事に実行しました。アグレッシブな3ストップ戦略によって、彼はレースの最後までたどり着くために燃料をセーブしつつ、何台もオーバーテイクしなければなりませんでした。彼はそれを完璧にこなし、最小限のタイムロスで決定的なオーバーテイクをしました。本当にチーム努力の結果でしたので、レース後はとても嬉しかったです。文字通り、全員が結果を生むために各々の役割を果たしました」

小松礼雄は、ルノー時代にテクニカルディレクターのパット・シモンズと働いていたが、それが彼のキャリアを形成したと語る。

「最高のトレーニングは本当に優れた人から学ぶことです。最初のトレーニングはパット・シモンズとでした。それ以外では、優れたエンジニアリングのバックグラウンド、全体的なレースの理解、常識とプレッシャーのもとでの論理的な思考能力がキーファクターです」

小松礼雄がしばしば使用する“準備”という言葉は、彼の仕事で最も重要な要素だという。

「準備ですね。良い準備によってプレッシャー下でクリアな心で穏やかな決定をすることができます。メインのプランがうまくいかない場合に自信を持って予備の“プランB”にスイッチすることができます」

小松礼雄は、ハースは“常にプライマリープランとセカンダリープラン(時にはサードプラン)”があると明かす。
「レース展開によって、選択をベースプランから代替プランに変更しなければならないかもしれません。また、常にリスクと報酬を算定しているので、レース中に変化する特定の状況でそれを適切に行わなければなりません」

「我々はレースのために昨年の戦略データを見ます。また、今年のタイヤが去年のタイヤと比較してどう機能しているかも見ます。タイヤは基本的には同じなので、昨年のデータは非常に有益です。大部分の制約は同じままです。この情報に基づいて、我々は様々なシナリオでレースをシミュレーションします。イベントに向かう前にいくつかの可能性やどのタイヤコンパウンドが必要になりそうかについて良いアイデアが得られます」

「準備が鍵になります。レース中、多くのことが起こり、非常に素早く変化する可能性があります。うまく準備ができていれば、は論理的な方法で素早く決定することができます。反対に準備ができていなければ、不必要なプレッシャーと間違った決断をする可能性が増えます」

「優れたエンジニアリングと数学的な背景を持つことです。全体的なレース週末の運営について理解することも非常に重要です。これまで働いた最高の戦略家は、様々な背景をもっていました。ですが、彼ら全員に共通していることは、レースとレース戦略全体の非常に良い理解をもっているということです。非常に単純に言えば、戦略はとにかく数字ですが、共通感覚でそれらの数字を見れることが必要です」

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カテゴリー: F1 / ハースF1チーム