ADUOとは何か?ホンダF1を救う可能性があるFIAの救済制度
2026年F1レギュレーションでは、パワーユニットの基本設計がホモロゲーションによって封印される一方、性能差が固定化されるリスクも高まっている。そうした中でFIAが導入したのが、出遅れたメーカーに追加開発の余地を与える「ADUO」という救済制度だ。

これは、メルセデス、フェラーリ、レッドブル・パワートレインズ、ホンダ、アウディの5メーカーのうち、基準性能から大きく遅れたメーカーに対し、通常より多くのアップグレード機会やテストベンチ使用枠などを認める仕組みである。

2026年からの厳しい開発制限下で、勢力差を是正する“安全網”として機能することが期待されている。

ADUOは「Additional Development and Upgrade Opportunities」
ADUOは「Additional Development and Upgrade Opportunities」の略で、日本語にすれば「追加開発・改良機会」といった意味になる。

2026年から導入される新世代パワーユニットは、1.6リッターV6という基本構成こそ維持されるものの、従来のパワーユニットとは中身が大きく異なる。MGU-Hは廃止され、内燃機関と電力の比重はこれまで以上に拮抗したものとなる。

この新ルール下では、2026年3月1日に各メーカーが設計をFIAへ提出し、ホモロゲーションを受けたうえで基本仕様が封印される。性能向上のための自由な開発は大きく制限されるため、もし初期設計で出遅れれば、その不利を長期間引きずるおそれがある。

そこでFIAは、著しく後れを取ったメーカーに対し、通常より多くの改良機会を与える仕組みとしてADUOを用意した。

どんなメーカーがADUOの対象になるのか
ADUOの対象となるかどうかは、各メーカーのレース結果や順位ではなく、FIAが継続的に測定するエンジン性能によって判断される。

具体的には、各メーカーのパワーユニットに搭載された内燃機関について「ICE Performance Index」が算出される。これはメーカー自身とカスタマーチームから提出されるデータや補足情報をもとに作られる指標で、この数値によって各社の性能差が比較される。

ここで重要なのは、オン・トラックでの成績は判断材料にならないという点だ。つまり、仮にあるメーカーが実戦で速さを隠したり、戦略上の事情で目立たない結果に終わったとしても、FIAは純粋なICE性能を見て判断するため、優位性を“偽装”することはできない。

ADUOで認められる追加措置
ADUOが認められたメーカーには、いくつかの追加措置が与えられる。

まず、規定されたコンポーネントについて通常より多いホモロゲーションアップグレードが可能になる。さらに、パワーユニット用のテストベンチ使用時間を延長できるほか、コストキャップ報告において一定の下方調整も認められる。

対象となる部品はかなり広く設定されており、ほぼ大半のパワーユニット構成部品が含まれる。一方で、燃料ポンプやインジェクター、ノックセンサー、各種温度・電気・規制関連センサーなど、一部は対象外とされている。

どの程度遅れていると追加アップグレードを得られるのか
基準は、最も優れたICEに対してどれだけ劣っているかで決まる。

ICE Performance Indexが最良のエンジンより2%以上4%未満低いメーカーには、シーズンNに1回、さらに翌年のシーズンN+1に1回、追加のホモロゲーションアップグレード機会が与えられる。

一方で、4%以上低い場合には、シーズンNに2回、シーズンN+1にも2回の追加アップグレード機会が与えられる。

ただし、この権利はシーズン内で累積しない。FIAが最初にADUO対象と認定した時点で付与される仕組みであり、そのシーズン中に使わなかった分は失効する。

いつアップグレードを投入できるのか
各シーズンは4つの等分された評価期間に分けられる。2026年は本来24戦カレンダーを想定しており、6戦ごとに区切って評価する形だ。

各評価期間の終了後、ADUO対象と判断されたメーカーは、その次の期間の最初のレースからアップグレードを投入できる。

たとえば2026年最初の6戦終了時点で追加アップグレード権を得た場合、新仕様を投入できるのは第7戦からとなる。12戦終了後に権利を得たなら、第13戦から使える。

記事時点では、バーレーンGPとサウジアラビアGPの中止により、マイアミGPとカナダGPの間に置かれていた既存のADUO判定タイミングを維持するかどうかが議論されている。

F1レギュレーション 国際自動車連盟 ホンダ

MGU-Kを例にするとどうなるのか
ADUOの実際のイメージをつかむには、MGU-Kの例が分かりやすい。

MGU-Kは定義リスト上の26番目の項目で、通常ルールでは2028年シーズン開幕時と2030年シーズン開幕時にしか変更できない。

しかし、仮にあるメーカーが最初の判定時点でADUOによる追加アップグレード権を得ており、そのメーカーがMGU-Kの性能不足を問題視していた場合、2028年まで待たず、次の投入可能タイミングで改良版MGU-Kを導入できる。

つまりADUOは、通常の開発凍結によって生じる“待ち時間”を短縮し、後れを取ったメーカーに巻き返しの余地を与える制度だと言える。

変更時に必要な手続き
メーカーがADUOによる変更、または通常の開発許可に基づく変更を行う場合には、使用する最初のレースウイークエンドの少なくとも14日前までに、更新版のホモロゲーション資料をFIAへ提出しなければならない。

また、信頼性、安全性、コスト削減、供給問題への対応といった限定的な目的であれば、ごく小規模な更新も認められる場合がある。さらに、ブランド変更、サプライヤー変更、部品番号変更など、機能や信頼性にほとんど影響しない修正も許可対象になり得る。

ホンダにとってADUOは何を意味するのか
ADUOは、2026年の新規則で苦戦したメーカーを完全に見捨てないためのFIAの救済策である。

もしホンダが新世代パワーユニットで序盤に遅れを取ったとしても、ICE Performance Indexで一定以上の差が確認されれば、通常より早い段階で改良部品を投入できる可能性がある。しかも対象はエンジン本体だけでなく、多くのパワーユニット関連部品に広がっている。

その意味でADUOは、単なる技術規定の細則ではなく、2026年以降の勢力図を固定化させないための重要な“保険”であり、ホンダを含む後発・苦戦メーカーにとっては大きな生命線になり得る。

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カテゴリー: F1 / FIA(国際自動車連盟) / ホンダF1