FIAが「コストキャップ割引」を説明 F1参戦メーカー撤退を防ぐ救済策の全容

今季から導入された新パワーユニット規則では、内燃機関と電動の比率が50対50となり、メーカー勢力図は大きく変化している。GMはキャデラック参戦の原動力となり、フォードはレッドブルと提携、ホンダは5年ぶりにF1へ復帰した。
こうした大変革では、メーカーごとに性能差が生じる可能性が高い。そこでFIAは、競争力の差を時間とともに是正するため、昨年後半にADUO(Additional Development and Upgrade Opportunities/追加開発・アップグレード機会)プログラムを導入した。
この制度では、1シーズン24戦という史上最多タイのカレンダーを前提に、6戦・12戦・18戦終了時点でFIAが状況を評価し、必要に応じて複数の救済措置を適用できる仕組みとなっている。
ADUOの仕組みと狙い
RacingNews365の独占取材に対し、トンバジスはADUOの具体的な適用方法を次のように説明した。
「我々はパワーユニットの性能を、非常に堅牢な方法で評価している。6戦ごとの3つのバッチ、計18戦を平均する形だ」
「このプログラムはADUOと呼ばれている。その評価に基づき、内燃機関の出力で2%、4%、あるいは6%以上遅れているメーカーには、段階的により多くの恩恵が与えられる」
「その恩恵とは、ダイノ(ベンチ)稼働時間の増加、ホモロゲーション機会の拡大、そしてコストキャップの段階的な引き上げだ」
さらに、コストキャップ制度下における必然性についても強調した。
「コストキャップという現実の中では、これは必要な仕組みだ。なぜなら、もし出遅れた状態でスタートした場合、そのままでは“内側の苦境”に永遠に縛られることになるからだ」
信頼性問題に対する“コストキャップ割引”
トンバジスは、深刻な信頼性問題を抱えたメーカーに対して、追加の救済策も用意されていることを明かした。
「我々は、深刻な信頼性問題が発生した場合に、いわば“コストキャップ割引”を与える計画も持っている。これらのパワーユニットは非常に高価なツールだからだ」
「想像してほしい。エンジンが次々と壊れていけば、シーズン半ばにもならないうちにコストキャップを使い切ってしまう。そうなれば、もう資金は残らず、深刻な問題に直面する」
「その結果、残された選択肢が“撤退”しかなくなってしまう可能性もある」
FIAとしては、そうした事態を絶対に避けたい考えだという。
「我々は、パワーユニットメーカーが『もう競争力を持つ希望がない』と感じてF1を去らざるを得なくなる状況を、決して望んでいない。それは、彼らが参戦する意義そのものを完全に否定することになる」

BoPではないと強調
一方でトンバジスは、これらの措置がBoP(バランス・オブ・パフォーマンス)とは異なるものであると強く主張した。
「私が述べたすべてを踏まえた上で、『バランス・オブ・パフォーマンス』という言葉や、それに類する表現には、非常に強く反対したい」
「最終的に忘れてはならないのは、サーキットを走るマシンは、すべて同じ技術レギュレーションの下で戦っているということだ」
「誰かに人工的に性能を与えるような仕組みは存在しない。全員が同じ規則に従っている。ただ、出遅れた場合に、キャッチアップの機会が与えられているだけだ」
そして、新規参入メーカーの困難さにも言及した。
「F1では、シャシーでもエンジンでも、膨大なノウハウ、蓄積された経験と知識、インフラが存在する。それが、新規参入者が短期間で競争力を持つことを極めて難しくしている」
「本当にゼロからのスタートになる。だからこそ、チームとパワーユニットの両方において、新規参入者を支援することが、当初からの目的の一つだった」
カテゴリー: F1 / FIA(国際自動車連盟)
